研究課題/領域番号 |
21K00528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
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研究分担者 |
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 日本手話 / 非手指標識 / 行動RS / 非手指標識の動詞への波及 / 線状的隣接性条件 / CL動詞 / RS / NM形態素 / VP様態副詞形態素 / 波及 / リファレンシャル・シフト / 接続表現 / 非手指標識(NMM) / 頭の動き / 外在化 / Form Sequence / 削除現象 / 同時外在化 |
研究開始時の研究の概要 |
手話言語は,音声言語と異なり,複数の出力手段(手指・非手指)により,同時に複数の文要素の外在化が可能である。この手話言語の同時外在化特性が言語理論研究にもたらすものは何か?この大きな問いに答えるために,本研究では,同時外在化現象の1つ,日本手話における削除現象を取り上げ,空項指示と文解釈のメカニズムを明らかにする。また,手話言語特有のCL動詞やRS(サイナー自身が指示対象の側にシフトして行う表現)を使用した場合の空項指示と文解釈の事実とその統語構造を明らかにする。本研究を通し,ろうコミュニティーとの協働活動の場を広げ,ろうの言語研究者と共同のコロキアムを開催し,その成果を公開する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,音声言語を中心に発達してきた自然言語一般の言語理論を,音声言語にはない,手話言語特有の「同時外在化」という新たな視点を加えて,再検討するものである。R5年度は、研究計画に従い、R4年度後期に引き続き、日本手話(愛媛方言)において、同時外在化現象の一つである,RS(レファレンシャルシフトと呼ばれるある種の表現法:1人称(話者)としての表現形式を使って、他者や非現在の話者の様態や情報を伝える表現)のタイプと副詞表現の非手指標識の動詞への波及について観察・分析を行なった。その成果を国内学会で発表した(①日本言語学会第166回大会, ②2023年6月10日、日本言語学会第167回大会、2023年11月11日 )。 R5年度の成果としては、以下の3点があげられる。(i)「行動RS形式の現れる領域に目的語が含まれない」という内堀(2018)での観察に対し、RS形式の表示には、phase headの持つ[+RS]素性の一致が関与しているとする仮説を提案した。(ii) 副詞的要素(以後、副詞)の非手指標識の動詞への波及は、副詞が併合する要素の最大投射まで波及する。そのため、その最大投射内であれば、副詞の左側の要素へも波及可能である。(iii) 上田・内堀(2019, 2021)が日本手話(愛媛方言)における観察を基に提案した「副詞表現の非手指表現の動詞への波及における線状的隣接性条件」は、行動RSを伴う文には適用するが、非行動RSを伴う文には適用しない。上記(i)-(iii) を仮定すると、行動RS形式の外に目的語が現れること、また、行動RSを伴う文に現れる複雑な副詞表現の非手指表現の波及のパターンが適切に予測できることを示した。 また、手話言語の理論言語学講演会「生成文法理論から見た手話言語と音声言語」を講師を招いて開催した(山口大学,1月30日および2月1日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R5年度、研究を進めていく中で、RSのタイプと副詞要素の動詞への波及に関する線状的隣接性条件および波及可能性自体に新たな観察があり、そのまとめに時間がかかり、RSを伴った文を使った削除文にまで調査が至れなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
RS(特に行動RS)を伴った文における削除とその空項の指示について観察と分析を行う。また、最終年度としての研究総括を行うとともに、昨年度、予定していた研究成果の発信に関しても、情報補償を意識しながら、ろうの研究者と協働で言語学コロキアムを行う予定である。R6年度前期は、その準備も行う。
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