研究課題/領域番号 |
21K00564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
戸澤 隆広 北見工業大学, 工学部, 教授 (70568443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 定形関係節 / 縮約関係節 / 関係節の派生方法 / ラベル付け理論 / MERGE / 生成文法 / 極小主義 / ラベル付けのアルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
最近の極小主義プログラムでは、構成素のラベル付けは第三要因(自然界の物理法則)に基づいており、ラベル付け理論の精緻化が一つの目標となっている。本研究では、移動要素が語彙項目であるならば、それは移動先でラベルになれる(cf. Donati (2006))という可能性を追求する。具体的には、定形関係節と縮約関係節の派生では先行詞(名詞)が移動し、移動先でラベルになるという可能性を検討する。これにより、ラベル付けの仕組みの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では定形関係節と縮約関係節の統語構造を研究することで構成素のラベル決定の仕組みの解明とMERGE理論の深化を目標とする。 2022年度前半は非制限関係節の内部構造の解明のための基礎研究を行った。具体的には(1)主要文献の精読、(2)統語特性の記述の二点の作業に従事した。(1)について、Jackendoff (1977)を精読することで非制限関係節の基本特性を理解した。また、非制限関係節が先行詞と構成素をなすことの利点と問題点を整理した。また、Emonds (1979)の精読から非制限関係節の派生について理解を深めた。(2)について、非制限関係節は主文から統語的に不可視であることが分かった。 2022年度後半は理論研究を行った。Chomsky (2019)とChomsky, Gallego, and Ott (2019)を精読し、MERGE理論について理解を深めた。MERGE理論では平行併合(Parallel Merge)と横方向移動(Sideward Movement)が認められないが、それは集合併合(Set-Merge)においてであることを確認し、その上で対併合(Pair-Merge)の場合に平行併合が可能であるかについて理論的検討を行った。その結果、平行併合は対併合の場合にのみ有効であると考え、それが文法操作から完全に破棄されることはないとした。 ここまでの研究活動の成果を第15回北海道理論言語学研究会で研究発表した。本発表では非制限関係節は先行詞と平行併合し、主文とは独立に根文を形成すると主張した。これにより制限関係節と非制限関係節の統語的相違点に原理的説明を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は前年度に引き続き基礎研究を行うことに加え、理論研究に従事した。2022年度の目標は(1)非制限関係節の統語特性の記述と(2)理論仮説の構築の2点であった。 (1)に関して、非制限関係節のデータを検討した結果、(i)非制限関係節が制限関係節よりも構造上上位に位置する、(ii)非制限関係節は主節からの統語演算に不可視である、(iii)非制限関係節は主語助動詞倒置を認める、などの統語的事実が明らかになった。また、非制限関係節と制限関係節の統語的相違点(先行詞の統語範疇、先行詞の後のカンマポーズの有無、that関係節の可否など)を整理し、検討した結果、制限関係節は従属節の特性を示すが、非制限関係節は根節の特性を示すことが分かった。その他、非制限関係節の統語特性を記述することにより、今後の非制限関係節の統語分析の基盤を固めた。 (2)に関して、Citko (2005)の平行併合を理解した上で、MERGE理論で平行併合が認められるか検討した。その結果、平行併合は対併合に限り認められる可能性に至った。MERGE理論では、集合併合の平行併合は認められないが、対併合の平行併合の可否については議論されていない。本研究では対併合の特性を記述した上で、対併合の平行併合は認められるという仮説を立てた。この仮説に基づいて非制限関係節の統語特性に原理的説明を与えた。 尚、理論研究においては、横方向移動の妥当性の検討が足りなったので、次年度は横方向移動についても考えたい。 以上、今後の研究課題はあるものの、研究は概ね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3カ年の研究からなり、最終年度の2023年度ではラベル付けの仕組みの解明とMERGE理論の精緻化に向けての総括的な研究を行う。 ラベル付けの仕組みの解明は、定形関係節と縮約関係節の派生方法の解明に関わる。関係節の派生方法の一つに主要部繰り上げ分析があるが、この分析では句要素が移動先でラベルになるが、現行のラベル付け理論では句要素がラベルになることはできない。そこで、「句要素が移動先でラベルになれるのはなぜなのか」を研究課題として掲げ、この問題解決に向けての代案をいくつか立てる。その代案の中で最も妥当なものを検討する。 MERGE理論の精緻化は定形関係節の派生方法の解明につながる。MERGE理論では集合併合の横方向移動が認められないが、対併合の横方向移動の可否については議論されていない。ここから、「対併合の横方向移動が可能か」を研究課題として掲げる。Nunes (2001, 2004)の精読により横方向移動の理解を深めた上で、理論的な検討を行う。仮に対併合の横方向移動が可能であることが明らかになった場合、横方向移動が定形関係節の派生方法にもたらす帰結を探る。 ここまでの研究成果を学会発表、論文発表し、研究者からコメントをいただく。必要に応じて理論仮説を修正するなどし、説明力の高い理論の構築を目指す。
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