研究課題/領域番号 |
21K00574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小林 亮一朗 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (80824143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | QUD / Adjunct Ellipsis / 付加詞省略 / 動詞残余型削除 / 主要部移動 / 空付加詞 / 動詞句前置 / 削除 / 主要部後続型 / 統辞論 / 意味論 / 生成文法 / Verb-echo answers / Null adjuncts / 主要部後行型 |
研究開始時の研究の概要 |
「日本語に動詞の主要部移動は存在するか」という問いを検証する。英語の疑問文では、助動詞が時制辞に主要部移動を起こし、語順が変化する。そのため、移動を観察することは容易に可能である。しかし、膠着語の日本語は動詞と時制辞が隣接しており、仮に動詞が移動しても語順に変化は起こらない。英語など西洋諸語と同様に主要部移動が存在するかどうかについては、議論が必要である。本研究は、動詞主要部の統辞的移動が日本語にも存在するという研究成果に対し、それらがはらむ「統辞論-意味論ミスマッチの問題」を指摘する。これまで観察されて来なかった構文に観察を拡げ、主要部移動を想定しない分析の提案を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度については、計画の通り、「主要部移動による作用域変化の議論妥当性」について検討を行った。Sato and Hayashi (2018)やSato and Maeda (2021)などの先行研究では、動詞主要部移動に伴う否定辞の移動が、否定の作用域を拡大するという想定を取っている。これらの先行研究は、日本語のVerb-Echo Answers (VEAs)において「誰か」や「AかB」といった要素と否定との間の作用域関係が変化するという観察を行い、それらが日本語のVEAsにおける動詞主要部移動の存在の証拠になるという主張している。 これらに対し、本研究では日本語のVEAsにおいて、主要部移動を想定せずに同様の効果を得ることができるという分析を行った。具体的には、先行文の「誰か+ない」が削除文では「誰も+ない」と解釈され、「[AかB]+ない」が「[AもBも]+ない」と解釈されるのは、それらの解釈がQuestion Under Discussion (QUD)の要素に含まれる場合に限られるという観察を行い、先行研究における動詞主要部移動+動詞残余型削除の派生は必ずしも想定する必要がなく、項削除を複数の項に適用する形でVEAsを適切に派生できることを示した。この成果は既に国際学会で発表をしており、今後も引き続き分析の精緻化を進め、査読付き国際学術雑誌論文としての出版を目指したい。 これに加えて前年度に引き続き、「「空付加詞読み」テストの妥当性」についても検討を行った。その結果として、これまでの成果をもとにした議論を、2023年度中に査読付き国際学術雑誌論文として無事に出版をすることができた。さらに、初年度より取り組んでいる、主要部移動に関する等位接続表現を用いた議論についても、無事に別の査読付き国際学術雑誌論文として出版をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度よりこれまで、計画通りおおむね順調に研究を進めることができた。2023年度は、これまでの研究成果を査読付き国際学術雑誌論文として出版する準備にも注力をした。その結果、1年目の課題である「等位接続文における主要部移動分析の再検討」に関してはThe Linguistic Review(単著)に、そして2年目の課題である「「空付加詞読み」テストの妥当性再検討」に関してはSyntax(共著)にそれぞれ1本ずつ論文が採択され、それらを無事に出版することができた。 さらに2023年度も引き続き複数の国際学会および国内学会にて、これまでの成果に関する研究発表を行った。これまでは主に統辞論と意味論・語用論に焦点をあて、現象の観察と分析を行ってきたが、情報構造とそれに関わる韻律的要因についても、今後しっかりと検討する必要があることがわかった。具体的には、削除領域に付加詞を含む解釈(Adjunct-inclusive interpretation)の可否には、韻律的要因が大きく関わっていることを指摘し、the 25th Seoul International Conference on Generative Grammar (SICOGG25)にて、その研究成果を発表(共著)することができた。現在は「空付加詞読み」に関して、上述の韻律的要因を考慮に入れた、より包括的な分析を構築し、査読付き学術雑誌論文として出版するための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2024年度は、「日本語における主要部移動分析に対する代案の提示」に注力をし、研究を進める予定である。引き続き国内外の学会において、統辞論だけではなく意味論・語用論や音韻論などを専門とする様々な研究者からのコメントやフィードバックが得られるよう、積極的に本研究課題に関する成果の発表を行いたい。それらと並行して、最終年度についても査読付き国際学術雑誌への論文投稿やその準備を行う予定である。
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