研究課題/領域番号 |
21K00592
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
柳 朋宏 中部大学, 人文学部, 教授 (70340205)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 与格名詞 / 音韻的制約 / 形態統語的制約 / 数量詞の遊離性 / 遊離数量詞 / 与格名詞句 / 韻文コーパス / 頭韻 / 主語・目的語の非対称性 / 否定呼応 / 言語変異 / 主語性 / 目的語性 / 非人称構文 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、英語史における与格名詞句の主語性・目的語性について実証的・理論的に論じることである。主格主語と対格目的語の形態統語的非対称性は、古英語・中英語の時代から観察されている。たとえば、数量詞遊離は通時的に主格主語からは可能だが、対格目的語からは通常容認されない。このような非対称的形態統語的特性を統語的・計量的に明らかにし、さまざまな構文に生起する与格名詞句の主語性・目的語性について生成文法の枠組みを用いて分析を行う。
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研究実績の概要 |
今年度は、これまで歴史コーパスから収集したデータを精査し、改めて、古英語の二重他動詞が選択する与格(代)名詞が、能動文と受動文のそれぞれで示す分布の違いについて論じた。古英語における二重目的語構文の能動文では、「与格目的語-対格目的語」語順と「対格目的語-与格目的語」語順のどちらの語順も同じ頻度で可能であることが知られている。一方、二重他動詞の受動文では、「主格主語-与格目的語」語順は「与格目的語-主格主語」語順よりも頻度が高い。こうした与格目的語の分布の違いは、古英語が動詞第二位言語であることが関係していると論じた。また、与格目的語を選択する他動詞の能動文・受動文や与格経験者項を伴う構文における与格表現の分布との比較、与格表現の通時的変遷の分析をとおして、各タイプの動詞が選択する与格要素の格認可の違いについても論じた。 また、代名詞と数量詞の語順について、統語的に認可され、音韻的制約によって語順が決定すると提案した。古英語では、統語規則が優先されるが、音韻規則が適用され語順が決定することもある。中英語になると、数量詞の範疇が主要部に変化したことにより、数量詞と代名詞が同等の範疇となった。その結果、音韻規則が優勢となる。ただし、主語代名詞を数量詞の前に移動させる音韻的動機づけがないため、「数量詞-代名詞」語順の割合が増加することになる。一方、目的語代名詞では音韻的動機づけにより、現代英語と同じ「代名詞-数量詞」語順が派生されると論じた。最後に、現代英語では、強勢規則が語順決定に大きく関与するようになる。そのため、主語・目的語ともに、強勢が置かれる数量詞が音韻的に弱い代名詞に後続する語順のみが容認されるようになると論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に引き続き、数量詞の非対称的な遊離可能性について、生成文法に基づいた理論的研究を行なっており、形態統語論的な説明を試みている。さらに、主語代名詞と数量詞との相対語順と、目的語代名詞と数量詞との相対語順との違いについては、音韻的特性からの分析を行なった。英語の歴史において、形態統語的特性よりも音韻的特性が優先された時期があり、頭子音が得られる語順が好まれることを示した。ただし、全ての事例を統一的に説明できるまでには至っていない。また、与格代名詞と数量詞との語順について調査し、与格代名詞の振る舞いが主格代名詞と対格代名詞のどちらに類似しているかを分析する予定だったが、まだ十分な分析は行えていない。 一方、古英語・中英語における与格経験者構文や非人称構文を含む、複数の構文で用いられる与格名詞句がどのような統語的振る舞いを示し、主格主語と対格目的語のどちらの特性を強く示しているかについて、例文を収集し分析を試みている。しかしながら、用例数が限られていることに加え、主格主語と対格目的語のどちらの特性も示し得る(示し得ない)ため、現時点では説得力のある結論にはまだ至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果の一部について、共著による研究書と海外出版社からの論文集への投稿論文を完成させており、現在査読結果待ちである。また、次年度開催予定の研究会で発表し、さらに、研究会での発表内容を発展させ、学会誌に投稿することを予定している。 今年度までに十分な成果が得られていない、主格主語と対格目的語の非対称性に関する理論的分析については、これまで収集したデータを精査し、さらに議論を深め、次年度に開催される国際学会での発表を計画している。 また、アイスランド語やノルウェー語などの方言や一部の話者では、能動文の与格目的語が受動化された際、主格主語への変化が容認される。このような現象も視野に入れて、与格名詞句の形態統語的特性について生成文法の枠組みを用いて分析する予定である。
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