研究課題/領域番号 |
21K00606
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
河先 俊子 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (60386927)
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研究分担者 |
青柳 寛 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (40338299)
呉 正培 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (60510568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 日本大衆文化 / 韓国の日本語教育 / 異文化接触 / 日韓関係 / ポップカルチャー / 日本語の教科書 / 教科書分析 / 批判的談話分析 / 国際文化交流 / 大衆文化 |
研究開始時の研究の概要 |
日本大衆文化の開放が韓国の日本語教育に及ぼした影響を①政策・制度②日本語教師の役割認識と教育実践③日本語学習者の動機づけと日本語使用の3つの側面において明らかにする。①に関しては、高等学校の教育課程と教科書を収集し、日本大衆文化がどのように扱われ、どのように認識されているのか分析する。②と③に関しては韓国の高校および大学の日本語教師、日本語学習者を対象としてインタビュー調査と質問紙調査を実施し、日本大衆文化の流入という社会的文脈と日本語に関わる自己との相互作用に注目して分析する。大衆文化研究の専門家を含むチームで研究に取り組み、大衆文化の影響について具体的かつ精緻な議論を展開することをめざす。
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研究実績の概要 |
2022年度に韓国の高校・大学で日本語関連科目を担当する韓国人教師を対象として実施したインタビューを、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し、韓国人日本語教師が日本大衆文化をどのように受容し、どのように授業で使用しているのか示した。そして、大衆文化を、消費を通した意味生成の場とみなし、組み込みと抵抗によって特徴づけられるプロセスに注目して考察した。分析の結果、韓国人日本語教師にとって日本大衆文化は、教育内容を学習者に同意させ、学習を促進させるためのツールとなっている一方で、教師中心の伝統的な教育観、韓国の対立を煽るような政治勢力に抵抗するためのツールにもなっていることを指摘した。また、日本大衆文化は、韓日両社会のヘゲモニックな文化が対立する場にもなっていたが、それに対して韓国人日本語教師は、日本大衆文化を韓国の主流文化との適合性と必要性に鑑みて排除したり調整したりしながら使用し、学習者を文化相対主義的な日本理解に導こうとしていることが分かった。そして、日本大衆文化は、日本語学習の価値を高め、韓国社会に根を下ろしている対日偏見に抵抗しようとする教師をエンパワーメントする有効な道具の一つとして機能していると考察した。 上のインタビューでは20代、30代の若手教師のデータが不足していたため、追加的なインタビューを実施して日本大衆文化が開放される前に学生だった教員と開放後に学生だった教員とを比較し、後者の方が、日本大衆文化によってセルフエンパワメントされたり、行動を方向づけられたりする傾向が強いという示唆を得た。 更に、2024年度実施予定の質問紙調査の予備調査として、韓国の高校・大学で日本語を学ぶ学生13人を対象としてグループ・インタビューを実施し、日本大衆文化の視聴経験やアイデンティティとの関係、ファン・コミュニティーの実態などに関する情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の夏からインタビュー調査と教育機関の訪問調査を開始する予定だったが、パンデミックの影響で訪韓できず、半年ほどスタートが遅れてしまった。その結果、その後の分析と結果の公表も半年程度、遅れている。現在、当初の計画に追いつくべく、鋭意努力中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(2024年度)は以下の3件を実施する予定である。 1.韓国の高校・大学で日本語を学ぶ学習者を対象とした大規模な質問紙調査(2024年9月実施予定)と一次的分析:質問紙では日本大衆文化の視聴実態と日本大衆文化に対する認識、アイデンティティとの関係、日本語学習時の活用法などを尋ねる。これに先立って、研究会を2、3回程度実施し、質問紙を作成する。得られたデータの一次的な分析では、日本大衆文化のファンと非ファンの間で、日本語学習への取り組み方、日本に対する態度、韓日関係に対する認識、日本大衆文化およびそのファンに対する評価などに違いがあるかどうか検討する。また、大衆文化の日本語と教科書や授業の日本語との違いに対する認識も明らかにする。これらの分析を通して、日本大衆文化が韓国人の日本語学習に及ぼしている影響を考察すると同時に、韓国社会にもたらしている影響についても検討したい。さらに、高等学校の日本語科の教育課程が繰り返し主張する日本語教育を通した良好な韓日関係の構築・維持が実現されているかどうか、日本大衆文化はそこに貢献しているのかといった問いへの回答も探りたい。 2.韓国人日本語教師に対するインタビュー・データの分析:日本大衆文化開放後、学生だった比較的若手の教員と、開放前に学生だった教員とを比較して分析し、日本大衆文化開放の影響について考察する。 3.韓国人日本語学習者に対する追加的インタビュー調査の実施とデータの分析:日本大衆文化のアイデンティフィケーションへの影響とファンの共同体の形成を中心として分析する。 2025年は、質問紙調査の分析結果を公表して、研究全体の総まとめを行い、次の研究計画を立てる予定である。
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