研究課題/領域番号 |
21K00608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森本 豊富 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30230155)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 戦中期における在米日本人・日系人 / 言語維持・言語継承 / 収容所内の言語使用 / アメリカ地域研究 / 第二次世界大戦 / 在米日本人 / 在米日系人 / 言語・文化の維持・継承 / 強制立ち退き / 日本人移民・日系人 / アメリカ合衆国 / 第2次世界大戦 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第2次世界大戦中における在米日本人・日系人の言語・文化の維持・継承について、アメリカの異なる地域での状況を比較検討する。具体的には、①日系人強制収容所に関しては トパーズ(ユタ州)、ツーリーレイク(カリフォルニア州)強制収容所、② 収容されなかった内陸山間部についてはユタ州ソルトレイクシティー、コロラド州デンバー、③戒厳令下にあったハワイに関してはオアフ島ホノルル及びハワイ島ヒロを中心に調査を実施する。以上3地域および地域内の類似点と相違点について比較検討し、在米日本人・日系人の言語・文化の維持・継承がどのような状況にあったのかを明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
報告者は、2018年度から2022年度にかけて、基盤研究(C)「「日系市民」と日本語教育ー戦前・戦中期の米国西海岸を中心に」を別途、実施してきた。当初は2020年度に終了する予定であったが、コロナウィルスの感染が収まらない状況下、現地調査が実施できず、2022年度まで2年間延長した。本研究課題は、この延長された研究課題を継承・発展させることを当初意図していたが、2021年度・22年度については、実施年度が重複することになった。 2022年度は、 8月28日-31日にスタンフォード大学フーバー研究所、9月1日-4日:ワシントン大学シアトル校で文献調査を実施した。本研究課題が対象としている戦時中の日系人がおかれていた言語維持・継承状況を知る上で、たとえばスタンフォード大学が強制収容所内での教育プログラムを"Proposed Curriculum Procedures for Japanese Relocation Centers"として夏期プログラムにおいて策定したオリジナル文書など貴重な資料に触れることができた。 また、本研究課題においては、戦中期の強制収容所の他に内陸山間部およびハワイにおける戦時下の言語・文化の維持・継承についても調査することを計画している。内陸山間部については、未だ手つかずの状況ではあるが、ハワイについてはハワイ島ヒロを中心に以前から聞き取り調査を実施しており、今年度も3月に5日間ほど人間文化研究機構・国立国語研究所の日本関連在外資料調査研究 「ハワイにおける日系社会資料に関する資料調査と社会調査の融合的研究」 プロジェクトの共同研究者として、ハワイ島ヒロにある布哇日系人會舘での資料整理に関わった。その過程で、戦時下のハワイにおける状況についても調査の手がかりを得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」のは、コロナウィルスが収束傾向にあり、2022年8月および2023年3月には調査地への渡航が実現したものの、前年度からの遅れを取り戻し、当初の計画に追いつくまでには至っていないことによる。 戦時中の10箇所の北米日系人強制収容所では、日系人の米化(アメリカ化)の同化政策が基本にあり、学校教育現場での日本語教育は認められなかったことが知られているが、一方で、茶道・華道・日本舞踊・短歌・俳句などの日本の伝統文化・文芸活動や柔道・剣道・野球などのスポーツが奨励されていた。これらの活動を通して、家庭内外で日本語が必然的に使用されていたことが個人の手記などからわかっている。また、例外的に忠誠登録の結果、米国への忠誠を示さなかった収容者たちが1943年7月から唯一の隔離収容所と指定されたツールレイク隔離収容所において、「報国青年団」が組織されたり、日米戦時交換船による日本送還予定家族の二世児童・生徒を対象に8箇所の「国民学校」で日本語教育(国民教育・皇民化教育)がさかんに行われていたことが、James (1987)にも記述されてはいる。しかし、具体的な実施内容、使用されていた教科書などに関しては不明な点が多い。本調査を通して、国民学校で使用されていた教科書等の資料を一部入手することができ、徐々にその内実が明らかになりつつある。今後、引き続き資料の発掘につとめるとともに、インタビューする機会があったサンノゼ在住でツールレイク隔離収容所において国民学校と公立学校教育を受けた経験のある二世に再度聞き取り調査を行う予定である。さらに2022年度に本研究課題の対象地域となっていた内陸山間部のコロラド州やユタ州での現地調査が出来なかった分、2023年度は日本国内で可能な限り内陸部の状況についても文献調査を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年3月に日本語教育史研究会においてサンフランシスコ日本人コミュニティおよび金門学園に関する研究発表を行ったのに続き、6月24日・25日に神田外語大学で開催予定の第33回日本移民学会年次大会初日の自由論題報告において「戦時下、在米日本人・日系人の言語維持・継承」(仮題)との題目で研究発表する予定である。現在、この発表にむけて、主要文献となるJames (1987) Exile Withinをあらためて読み返すとともに、国立国会図書館憲政資料室所蔵の強制収容所関連史料を渉猟し、調査の精緻化につとめている。また、トパーズ収容所での日本語図書館、ツールレイク隔離収容所での国民学校での教育などについて調査を進めている。 現在、基盤研究(C)「「日系市民」と日本語教育ー戦前・戦中期の米国西海岸を中心に」(2018年度-2022年度)の研究成果および本研究課題とを統合するかたちで執筆活動を進めており、これらの研究成果を書籍化するために、2022年8月に都内のある出版社に赴きプレゼンテーションを行った。その結果、科研の出版助成に応募することも視野に入れ、出版する方向で進めることになった。同出版社に対しては、2022年12月に、サンフランシスコでの調査結果と執筆の進み具合について進捗状況報告も行った。出版は2024年度末を予定しており、鋭意、執筆活動を進めている。 当初の予定では2022年度に内陸山間部のコロラド州デンバーやユタ州ソルトレイクシティーでの戦時下における日本語使用状況に関して現地調査を実施する予定であったが、新聞記事などを通しての国内での文献調査に切り替える。ハワイのオアフ島ホノルルおよびハワイ島ヒロにおける現地調査は、予定どおり2023年度に実施する計画を立てている。
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