研究課題/領域番号 |
21K00663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
青谷 法子 東海学園大学, 教育学部, 教授 (00278409)
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研究分担者 |
高橋 晋也 東海学園大学, 心理学部, 教授 (70260586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 心的語彙ネットワーク / 多読処理水準 / タスク / 関与負荷 / 日本人英語学習者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これまでILHおよびTFAを援用した研究では対象とされなかった既習語の語彙知識の深化・拡張に焦点を当て、多読活動によって学習者の語彙ネットワークがどのように変化していくのかを解明しようとするものである。したがって、分析にはILH、TFAといった指標を用いながらも、指標自体がこのような側面に対しても有効であるかについての検証も同時に行っていく。また、日本人英語学習者の特質に合わせ、多読を通した付随的な語彙ネットワーク構築を可能にするような新しいタスクのデザインも行っていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、多読におけるタスク起因の関与負荷(Involvement Load Hypothesis; ILH; Laufer & Hulstijn, 2001)、特にEvaluationが、EFL学習者の知覚する語彙ネットワークの変化に及ぼす影響について実験的調査を行い、検討した。ChatGPTで作成した英文のリーディング教材から15語をピックアップし、学習者が知覚する単語間の関係強度がタスクを通してどのように変化するかを調べた。データは、60名の日本人EFL学習者を3つのグループに分けて収集した。最初のグループ(MCQ)にはリーディング教材と多肢選択問題(multiple-choice questions)が与えられた。2番目のグループ(MCQ&CoND+)には、MCQグループと同じタスクに加え、KH Coderによって生成された単語の共起ネットワーク図(co-occurrence network diagram)が与えられ、その中の5つの空白の単語ノードを解答リストの中から選択して埋めるというタスクを行わせた。3つ目のグループ(MCQ&CoND-)には、MCQグループと同じタスクに加え、MCQ&CoND+グループと同じネットワーク図を使って、解答リストなしの穴埋めタスクが与えられた。すべての参加者は、タスクの1週間前、タスクの直後、タスクの4週間後の3回、対象語間の関係性を判定した(lexical relationship test; LRT)。変化の過程は、データ可視化プラットフォームであるGephiを用いて分析・可視化した。その結果、MCQ&CoND-においてのみ、参加者の語彙ネットワーク深化の指標であるLRTスコアがタスクの実施後に上昇し、その効果は1ヶ月間持続した。MCQ&CoND+とMCQ&CoND-で、穴埋め問題の解答リストの有無というわずかなタスクの変更が、大きな学習効果の違いをもたらしたことは注目すべき結果であった。以上の研究成果は第4回東南アジア教育学会(2024年2月;チェンマイ、タイ)にて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度の推進方策として、①既知語の語彙ネットワーク変化に対してタスク起因の関与負荷という概念自体が機能しないのかどうか、また、②機能するとしてもNeed、Search、Evaluation以外の関与成分が考慮されるべきかどうか、という2つの研究課題に取り組む予定であった。①に関しては、既知語のネットワーク深化を促すために語彙ネットワーク自体をタスクに組み込む実験を行い、タスク起因の関与負荷が有効であるという意義深い成果を得ることができた。この成果を精緻化するためには、さらなるデータの蓄積が必要であると考えている。②の課題に関しては、①の課題の精緻化の過程と連動させながら考察していく必要があり、まだ十分に進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究成果により、既知語の語彙ネットワーク変化に対してもタスク起因の関与負荷という概念自体が機能する可能性が示された。今年度は、さらなるデータサンプルの蓄積を行い、語彙ネットワーク深化を促進する関与負荷を組み合わせた新しいタスクのデザイン構築を目指したい。また、Technique Feature Analysis (TFA; Nation & Webb, 2011)のフレームワークを援用しながら、新たな関与成分についての検討も行っていきたい。さらに、個人内のネットワーク変化の質的特徴についても、分析方法を検討することにより、より精緻な可視化ができるよう研究を進めていきたい。
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