研究課題/領域番号 |
21K00687
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
上村 妙子 専修大学, 文学部, 教授 (30205926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ライティング / ジャンル・アプローチ / 異文化コミュニケーション / eメール / 日本語 / コミュニケーション能力 |
研究開始時の研究の概要 |
日本人英語学習者を対象に、3種類の異なるジャンルを対象として、ジャンル・アプローチに基づくライティングの指導法を考案し、その効果を検証する。対象とするジャンルは、書き手にとって難易度の低い描写文、難易度の高いリサーチ・ペーパー、及びより実用性の高い電子メールの3種類である。指導においては、それぞれのジャンルを特徴づける構造(move)と言語表現(language features)に焦点を当てる。事前・事後に書かれた作文を量的、質的に比較分析し、指導の効果を検証する。その上で指導効果が認められた部分とそうでない部分を明らかにし、今後のライティング指導法の開発に対する提言を行いたい。
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研究実績の概要 |
2021年度からの継続研究として、社会言語能力との結びつきの強いeメールに焦点を当て、ジャンル・アプローチに基づくライティング指導を日本人大学生に対して行いその効果を検証する試みを行った。eメールの内容、構造、言語表現の3つの観点に関する指導方法を考案し、学生の書いた指導前と指導後のeメールを比較分析した。その結果3つの観点すべてにおいて指導の効果が認められたものの、内容、構造に比べ、言語表現に関しては顕著な伸びは見られなかった。言語表現については、より時間をかけて練習を重ねる必要があることが判明した。この研究結果は論文としてまとめ、関東甲信越英語教育の学会誌であるKATE Journal No. 36に掲載された。 また、英語のライティング指導を行う前提として、日本語と英語の語彙、文構造、及び文章構造を比較し、学習者に両言語の相違点についての気づきを促し意識化させることも重要である。こうした気づきや意識化は、言語的・文化的コンテクストを重視するジャンル・アプローチの効果を高める要因となると思われる。2021年度から日英語・日本英語圏文化の違いをまとめた原稿を執筆してきたが、2022年度には原稿を本としてまとめ、『異文化コミュニケーション―自文化と異文化の理解をめざして―』(専修大学出版局)として刊行することができた。 さらに、2022年度にはジャンル・アプローチに日本語での指導を部分的に導入する方法を考案する試みに取りかかった。英語を外国語として学ぶ日本の教育環境において、大多数の学習者と教師が共有する母語としての日本語を活用することは、学習効率を高める可能性を秘めているのではないかと考えられる。この指導方法については、Senshu Journal of Foreign Langauge Education No.51に投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、新型コロナの影響により、当初予定していた海外で開催された国際学会に参加し研究発表を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ジャンル・アプローチに2つの要素を取り入れた指導方法を考案し、その効果を検証する予定である。 1つ目は、日本語を活用する試みである。英語を外国語として学ぶEFL環境にある日本において、多くの学習者と教師が共有する日本語を活用することは、学習効果を高めることにつながると考えられる。ジャンル・アプローチに基づくライティング指導においては、対象となるジャンルに沿った目的、文章構造、及び言語表現を指導することが求められている。そこで、2022年度には対象ジャンルの目的と文章構造の焦点を当て、日本語を活用することによる明示的な指導方法を考案した。2023年度には、その指導方法の効果を検証する研究を行う予定である。 2つ目は、ジャンル・アプローチが重視しているライティングのコンテクストへの気づきを促す試みである。その際、ジャンル・アプローチがしばしば批判される要因となっている「規範性」を克服するために、プロセス・ライティングの要素を取り入れることとする。具体的には、ライティングの課題の中に、明確な目的と読者を設定し、その設定に適切に応じた作文を書くことができるようになることを目指す指導方法を考案する。学生には、課題のコンテクストとして設定された目的と読者を意識させ、その上でどのような内容を盛り込むべきかを考え、その考えをアウトラインとしてまとめ、作文を書き、その後読み直し、修正を加えるというプロセス・ライティングの一連の流れを経て最終的に作文を完成するよう導く。指導前と指導後の作文を比較分析し、ジャンル・アプローチとプロセス・ライティングを統合させた指導方法の効果を検証する予定である。 このように、2023年度には、従来のジャンル・アプローチに別の指導要素を組み込むことで、ジャンル・アプローチのライティング指導方法としての新たな可能性を探っていきたいと思っている。
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