研究課題/領域番号 |
21K00693
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉田 信介 関西大学, 研究推進部, 非常勤研究員 (50230743)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | PBL / チームワーク力 / 評価指標 / アコモデーション理論 / 国際協働 / グループダイナミックス / メラビアンの法則 / 大規模言語モデル / 国際共修 / 自己評価 / 意思決定 / グループダイナミクス / アクティブラーニング / チームワーク / 英語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
新学習指導要領外国語では,主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニングからの学習改善が求められおり,大学英語教育でもProject Based Learningが取り入れられつつある.そこでキーとなるのがチームワーク力であり,これは20年間実践してきた日台国際交流学習のデータから明らかである.そこで過去20年間と今後3年間のアンケート調査と事前交流録画からの知見により、大学英語教育における英語によるチームワーク力の評価指標を開発する.それを大学生に分かりやすい一人称アンケートに置き換え,日本の英語教育界でのユニバーサルデザインとしてのチームワーク力の評価指標のモデル化を目指す.
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研究実績の概要 |
2021年度実施した「自己評定アンケート」の加除修正バージョンを、オンライン協働イベント後実施した。その結果、今回もグループ活動において、協働、情報共有、言語・非言語によるコミュニケーション、ICTの利活用、要約・言い換え・明確化ができるグループと、活動手順、集団思考、自己評価そのものができなかったグループに分かれる結果となった。 このことから活動全般においては、積極性、インタラクション力、 ICT力、言い換え力に優れたものがリードし、手順、思考、評価ができないものは取り残されていくことが再確認され、自由記述から、英語力の差を克服することが国際交流につながり、グループ間コミュニケーションへの意識の高さが再観察された。 筆者グループは、今回新たに、カンボジアとのグループ活動を行い、日台間では不要であった「言語表現調整法」が必要であった。そこでは、アコモデーション理論(橋内,1999)に基づき、英語力に差があるグループ間において、中級話者(日本)が初級話者(カンボジア)に対して使われる方略である。すなわち、インプット面での調整として、発音、語彙、文法への配慮、相互交渉面での調整では、反復、確認、拡張、短文による応答、さらに言い換え、借用、回避がそれぞれ活用される必要があった。 これらへの対策として、現地カンボジアのパートナー校(シェリアップ市)でのワークショップを開催することで、英語力の格差の改善を行った。内容は、1)英語とクメール語の音声比較とミニマルペアによる弱点補強、および、2)SAMRモデルによるICT活用と教案作成である。その結果、コミュニケーションに支障がない程度に格差が埋められるという成果がみられた。 2023年度においては、これらの知見を踏まえたカンボジアとの国際協働を行うことで、より「大きな枠組みによるチームワーク力の評価指標」の作成を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来、現地(毎年2回、日本と台湾)において、対面での国際協働プレゼンテーションの最終仕上げを行うことで、「チームワーク力の評価指標」への様々な知見を得られていたが、今回も新型コロナウイルスのため、その実現が困難であった。 加えて、今回新たに、カンボジア(英語は選択科目)とパートナーとなり、国際協働グループ活動を行った。これは、従来の台湾と異なり、交流以前に、言語・非言語コミュニケーションの両面における格差を乗り越える必要があった。そのうち言語的格差については、アコモデーション理論を新たに導入することで、ある程度対応することが可能であることが判明した。その成果は、現地でのワークショップによりある程度確認できた。 しかしながら、顔の表情の変化の少ない文化(カンボジア)の相手から同意や不同意を読取ることの困難さが確認され、そこでは、メラビアンの法則による知見より、非言語コミュニケーションから得られる情報(身振り・姿勢・顔の表情・視線・まばたきなどの身体動作、握手や抱擁による接触行動、プロクセミクスによる空間的距離)を改めて確認する必要性が出現した。加えて、不十分な通信インフラによるネット接続の不安定さ、生活音(家畜の鳴き声)による集中力不足、即時フィードバックの遅延など、物理的設備の改善の必要もあることが確認された。 このことは、次回以降、対面交流によりある程度克服できると考えられるが、筆者による現地での事前調査による観察と対策を提案していく必要がある。その結果、改めて、英語教育先進国である台湾のみならず、格差のあるカンボジアとのチームワークを高めることで、「より大きな枠組みによるチームワーク力の評価指標」作成が可能となる。 さらに、昨年度末から教育界でも注目されている、Chat GPTなどの大規模言語モデルの利活用を無視することができない状況になっていることも考慮に入れる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)オンライン交流から得られた知見の対面交流への利活用:オンライングループ活動においては、ICTの利活用、情報共有、要約・言い換え・明確化ができるグループが、協働活動をリードしていた。これらは、日本や台湾のデジタルネイティブ世代では日常的な活動の延長であるが、英語力・ICT力において格差のある相手との交流において再現できるか検証する必要がある。 (2)言語的格差におけるアコモデーション理論の対カンボジア対策の構築:インプット面での調整として、クメール語に配慮した発音(話す速度やより強勢でメリハリのある話し方)、語彙(頻出語を用い、分析的な言い換え)、文法(省略を避け、短文、等位接続詞、現在形、平叙文などを用いる)の指導を行う。相互交渉面での調整では、クメール文化に配慮した反復、確認、拡張、短文による応答の訓練を行なう。 (3)非言語コミュニケーションでのメラビアンの法則の対カンボジア対策の構築:クメール語やクメール文化に配慮した身振り・姿勢・顔の表情・視線・まばたきなどの身体動作、握手や抱擁による接触行動、プロクセミクスによる空間的距離を構築する。また、不十分な通信インフラによるネット接続の不安定さや、生活音(家畜の鳴き声)への対策、即時フィードバックの実行への示唆を行う。 (4)ICT活用におけるChat GPTなどの大規模言語モデルの利活用:言語能力の格差への対策として有効に利活用を行う。そこでは、長文要約、要点抽出、箇条書き形式・表形式による雄弁な表現、プロンプトの工夫による英語対話訓練、対立意見の問いかけによる検索エンジンのエコーチェンバー現象回避、将来の社会人としてのコンピテンシーの習得、翻訳機能の有効な活用方法などがあげられる。 以上より、これらの知見を踏まえたカンボジアとの国際協働を行うことで、より「大きな枠組みによるチームワーク力の評価指標」の作成を行っていく。
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