研究課題/領域番号 |
21K00767
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
|
研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
酒井 志延 千葉商科大学, 大学本部, 名誉教授 (30289780)
|
研究分担者 |
大勝 裕史 千葉商科大学, 基盤教育機構, 講師 (00822959)
土屋 佳雅里 東京成徳大学, 子ども学部, 助教 (50835353)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 機械翻訳 / リメディアル教育 / リアクションペーパー / 小学校英語教育 / 概念の言語化 / 複言語教育 / 英語を合鍵にする教育 |
研究開始時の研究の概要 |
オンライン機械翻訳は,多くの人に使われているが,教育における可能性については解明されていない。本研究はMTを外国語学習機器としての研究を行い,次の2点を目的とする。1.リメディアル教育:学習者に,自分に欠けている文法や知識を自らの気づきによって修正し,習得させる方法と,その過程を通して学習者の犯しがちな文法の間違いの類型化を実施する。2.複言語教育:その必要性が叫ばれながらも,時間的や人的資源不足により,実施が躊躇されてきた。MTの発達により,多様な外国語にアプローチできる機能を利用し,本研究では英語と同時に他の外国語を自律的に学習させることで,学習者の学習に対する意識を高める研究を行う。
|
研究実績の概要 |
代表者の酒井が研究するクラスでは,前年度から高校卒業時に英検2級または準2級を所持していないリメディアル学生を対象にし,1学期13週の授業で,2週ごとに150words程度の英文エッセイを課して,どのような間違いをするのかを発見しようと試みた。授業では機械翻訳(MT)の使用を勧め,そのMTの適切な使い方がクラスに浸透してくると,ほとんど文法と語法では訂正の必要のないエッセイが提出されるようになった。そこで得た知見は以下のものである:今までの英語教育観では,「ある程度英語を習得してから,英語の運用力をつける」というものであったが,MTを使えば,「英語を習得しながら,英語の運用力をつける」という教育観にシフトできる。英語の運用には,学習者の英語力はさほど高くなくても支障はないことである。その運用力をつけるためだが,英作文はMTで可能なので,相手を説得するディベートを目標として研究を実施した。説得力を持つために,3つのことが必要と判明した。1つは,MTで英作文をした場合,聴衆によっては英文が高度になりすぎるので,相手を考えて英文を易しく書き換える必要があること,2つ目は,英語の発声や,その発声に伴う動作やアイコンタクトの習得が必要だということ,3つ目は,MTに打ち込む日本語に説得力を持たせる指導が必要であることである。今年度のもう一つの研究成果は,すでに,小学校段階で英語を苦手とする児童が増えているという報告を受け,将来にリメディアル学生を産み出さないために,小学校段階では,どのような教育をすべきかを小学校で英語教育に携わる先生と研究し,単行本を刊行することが出来たことである。「英語の運用には,学習者の英語力はさほど高くなくても支障はない」という研究結果から,その単行本の中に,小学校の先生が,MTを使う英語教育を,MTの習熟度に分けて段階別にし,その具体的な指導方法を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年の4月に,4大学の1年生328名に対して,機械翻訳(MT)の使用に対して,アンケート調査を実施した。その結果,回答者の9割以上がMTを使用した経験を持っている。利用機種は,結果から判断するとスマホでの利用が多い。また,利用場面を合わせて判断すると,被験者の多くの使い方は,英文読解の授業で,教科書等の英文の和訳を見る使い方であると判断できる。学校や学部間に大きな差はなかった。つまり,高校生の使い方は,差がないと言える。また,前年の調査と大きな違いはなかった。そして,学年末の授業評価アンケートでも,代表者の授業は,回答者の9割が,「満足した」または「どちらかと言うと満足した」と回答としていた。今年度の分担者の研究も順調だった。MTを日常的に使うと,授業が変る。教員もそのことに気づく。大勝は,同じレベルのクラスを二つ受け持っているが,一方のクラスでのみMTを利用した多言語学習とライティングを取り入れている。両クラスの授業後のコメントを比較すると、MT利用クラスのコメントには,英文の構造や文法に着目するものが相対的に多いことに気づいた。これは,MTの使用が学習者の英語学習に対する意識を変化させている例だと言える。このような意識の変化が生じたのは、MTの使用が英語と日本語,または英語とドイツ語やフランス語というような言語間の比較という観点を学習者にもたらしたからではないかと推定されるが,この点に関しても今後の研究で明らかにしていきたい。土屋は,保育学を学ぶ1年生の選択必修英語クラス(通年)において,毎回の授業でMTを使った英語学習を進めた。年度末に実施したアンケートの設問「授業内容で学習して最もよかったもの」では,「1.洋楽,2.クイズアプリ(Kahoot!),3.MT」の結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では,研究代表者の酒井は,前年度とは変わり,英語力が低い英検3級かそれ以下というさらに習熟度の低いレベルの学習者を対象に研究することにした。それらの英検3級かそれ以下の学習者に対して学生を4月ら現在まで実施した授業のリアクションペーパーの記述から判明したとことがある:このレベルの学習者は,英語は語順の言語であるという意識が薄い。不規則動詞を覚えることができていない。状態動詞と動作動詞の区別ができていない。暗記が苦手などである。また,1人の学生の「高校まで、発音を意識したりスラスラ読むといったことを全く意識していなかった」と記述したリアクションペーパーの内容からわかるように,多くの学生が英語の発音が著しくできていないし,それが重要であるという認識も持っていなかった。この意識や能力の違いが,準2級レベルと3級レベルを分けていることが分かる。その違いを前提にして,前年までの研究成果が効果的に働くか,修正が必要なのかを検討する。また,AIを使った機械翻訳やChatGPTの進化が著しいので,研究当初予想していなかった事態も登場してきた。それに対処するために,4月に4大学の異なる学部(ビジネス,児童教育,中等教育,歯学)の414人を超える新入生から,機械翻訳やChatGPTについての意識調査を実施した。すると,32.2%の学生がChatGPTを知っていた。使用した経験を持つのは,15.6%であった。ただ,学部間において,使用体験率は大きく違った。本研究では,学生がこれらの機器を適正に用いて英語を学習する方法も研究する。そして,いまだに,英語を指導する多くの教員にとって機械翻訳やChatGPTを使う教育は関心事ではあるが,踏み込めない状態である。その教員が自信を持って指導できるように,指導例や研究結果を報告していこうと考えている。
|