研究課題/領域番号 |
21K00782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
多田 恵実 弘前大学, 教育推進機構, 准教授 (60381290)
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研究分担者 |
Solomon Joshua 弘前大学, 教育推進機構, 講師 (60816007)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 英語教育 / 伝承物語 / 口承文学 / 内容言語統合型学習 / 文化的に親和性のある教材 / 言語間翻訳 / 言語内翻訳 / 地方文化 / 口承文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、津軽地方に残る昔語りの物語を、語り部の口承活動から採集し、英訳のうえ解説を加え、語学習得用の教科書を作る。文化的に親しみ易い内容で学ぶことで語学の修得がより容易になるかどうか、昔話を言語教育に効率に活用できるように実証的な実験を遂行していく。その結果を日本人ならび海外からの学習者の英語学習および津軽地方の地域志向学習推進の一環として活用していく。土地の文化を掘り起こし、記録し、学問的な意味づけを付して、「方言」や「地方」といった既存概念を孕む文脈から解放することにより、世界にも向けて発信する。研究成果を書籍と音声メディアの形で、国内外に発表し教科書として広く利用することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)津軽地方に昔語りとして伝えられる語り物の土着の物語を、その語り部達の語りから直接収集し、整理し、英訳し、注釈を加えたうえで教科書を作り、地域色豊かな大学である本学、弘前大学から、世界に向けて津軽文化を発信することにある。2)成果物である教科書を学生の英語教育、留学生の地域の歴史・文化教育推進の一環として、津軽地域の民間の口承物語を継承するとともに、語学学習で活用していきたい。 英文に翻訳することにより、方言としての言語的コンテクストは中庸化され、より客観的な学術的価値を見出していくことができる。大学や高等学校の学生や留学生、ひいては地域社会の英語学習者の利用に供することにより、この土地に根付いた内容により親しみやすい教材で学べ、地域文化の継承にもつなげることを目標とする。 しかしながら、この民話をEFL(外国語としての英語教育)教材として使用することの意味と、その効果的な使用方法を検証する必要性があった。そのため、EFLにおいて近年注目を集めている、「文化的に親和性のある教材(culturally familiar materials)」が果たす英語教育においての効率性をはかるための質的実証実験を実施した。 「文化的に親和性のある教材」とは、言語学習者の地域文化や文脈に由来する教材のことで、これを使うことにより、学習者の既存の知識を活性化させ、理解力を高め、感情移入を促すという仮説が広く知られています。さらに教育効果を図るための論理的枠組みの中で、文化的に親和性のある教材に加えて言語内翻訳(intralingual translation)論を適用し、それを踏まえたテクスト、文学的英語(marked English)、単純英語(simple English)による読解実験を行いながら、その効果を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度においては多田とソロモンにより、以下が実施されている。 1)教養教育英語を履修中の大学1年生を対象に、津軽昔コの英訳と他文化の昔話の英訳をそれぞれの言語内翻訳を利用し、「文化的に親和性のある教材」の効果をインタビューと筆記試験を行い比較・分析し、質的に測定する英文読解実験が行われた。感染症対策と利便性を鑑みてインタビューは主にオンラインで行った。 2)研究発表・論文発表として、多田が大学英語教育学会(JACET)第61回国際大会で「方言を使った口承物語を英語教育に応用する‐デジタルプラットフォームを用いた実践」を、また第71回東北北海道地区大学等高等共通教育研究会にて、「『津軽昔コ』と共に-地方文化が英語学習を助ける-」を、「日本の方言(地方語)の口承物語を使った英文読解実験」として弘前大学国語国文学会第63回大会にて多田・ソロモン共同発表として、The 21st Annual Hawaii International Conference on Educationにて“Reviving Stories in the Old Vernacular as Language Learning Tools”を、カンボジア第19回CamTESOLにて“Folktales in the classroom: Evaluating learner responses to culturally familiar materials and intra-lingual translation”を行い、同学会紀要のLanguage Education in Asia March, 2023に同発表原稿を投稿し、現在査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、「文化的親和性のある教材」の効果について検証を続けるとともに、今回は新たな側面、言語内翻訳の教育的用途について探るべく、リスニング・テストとアンケートを通じて被験者の反応を質的および量的に測定し分析する。 実験参加者は、令和5年度の一年次生とし、入学の際に受けた英語力診断テスト(VELC Test)のスコアにより、3つの実験群に分け、週1回程度で合計4つのセッションで実験を行う。各セッションにおいて、実験群はネイティブスピーカーである研究者によって朗読・録音された三つのオーディオ教材を聞いて内容理解の問題に答える。各実験群が聞く三つのオーディオ教材は異なる難易度のパターン(高→高→高、高→中→高、下→中→高)になっている。教材の内容は文化的親和性があると考えられる津軽の昔話である。 津軽地域に伝わる昔話(津軽昔コ)の中から、テーマの異なるものを選び、文章を平均化(長さ、語彙の難易度、文の構造の複雑さ)されるように編集して録音する。この音声を用いてリスニング・テストを行う。参加者は、リスニングを三回し、理解度筆記試験を受ける、という三段階構造で行われる。この三段階のセッションが4週間繰り返され、最後に振り返りアンケートを行う。 実験の対象者を令和5年度一年生とする。実験群は互いに言語能力相当の参加者によって形成される。各グループが異なる難易度のパターンを聞くが、同じ筆記試験を受ける。各セッションは45分程度(三つの録音を聞くことと短い筆記試験を完成すること)とする。それで4つのセッションで4つの異なる話を行うことが出来る(各セッション、各グループで難易度のパターンを変える)。最後にアンケートで振り返りを行う。 上記リスニング実験の結果を分析したうえで、英訳された文化的に親和性のある教材としての教科書を、歴史・文化的な注釈をつけたうえで編纂し、出版する。
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