研究課題/領域番号 |
21K00807
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
胡 潔 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30313399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 父子継承 / 嫡子 / 諸子 / 一家 / 家の日記 / 家を継ぐ / 家族史 / 父子別居 / 養子 / 比較文化史 / 双系社会 / 父子不同居 / 父系継承 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、比較文化史の観点から日本古代、中世の「家」の性格と特徴を明らかにするものである。日本古代は双系社会で、父子不同居の慣行が存在し、居住形態上では母方偏重の特徴を持っていたことが近年の研究で明らかになった。一方、父系継承による永続的経営体としての「家」が中世を通じて成立していたことも指摘されている。本研究は、居住形態上の父子不同居と父子継承の「家」の相関関係に着目し、双系社会における父系継承の「家」の形成過程とメカニズムについて、他のアジア社会と比較しながら解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本古代、中世の「家」の形成過程及びその構造、特徴を解明することにある。今年度は、院政期の公卿日記『中右記』、『殿暦』、『台記』、『玉葉』を中心に調査を行った。①父系継承の「家」と官位官職、②継承者としての嫡子、諸子、③父系親による「一家」の連帯意識の三つに分けて、資料収集、整理、検討を行った。 まず、律令官人にとって父祖の官職を継承することは即ち「家」を継承することである。調査を通じて、このような官職官位を媒介とした「家」の継承観念は深く浸透していたことを確認できた。当時の「家を継ぐ」意識を調べると、官職官位の昇進や父祖の日記の相伝に関することが主であったことが分かる。当時作成された諸家の日記は、官人として持つべき知識―朝廷の儀式、政務に関する知識の記録で、律令官僚制と密接不可分な関係にあると考えられる。 また、この時期の記録に、「家嫡」「嫡子」「嫡男」「嫡童」に関する記述が多く見られ、「家」の継承における嫡子の優位が顕著になってきたことが分かる。ただ嫡子認定については不明な点が多く、嫡子以外の諸子にも父祖と同じ地位に到達する可能性があるため、嫡子の一子継承には至っていないと考えられる。同じことは家の日記の伝承についてもいえる。代々集積された家の日記が嫡子に譲られても、諸子は利用できるように配慮されているのである。 当時の史料にみえる「一家」という語の指す範囲は一様ではなく、父系の近親と母系の近親の両方に用いられる。しかし、律令官人として活動する公的な場面に用いられた「一家」は、ほとんど父子兄弟及びその息子たちを指していることが調査で分かった。「一家公卿」「一家之卿相」「一家の上達部」などの表現から官僚の世界における父系親の「一家」の連帯意識が顕著にみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①本研究の一年目となる令和3年度はコロナの感染拡大の影響で、資料収集や学会参加に支障が出たため研究が研究計画より遅れた。二年目の令和4年度もコロナ感染の影響があるため、資料の収集・整理・分析が中心であった。 ②二年目の今年度は一年目の作業の続きを進めてきたが、史料の収集・読解に想定より時間がかかったため、進捗が遅れて、研究成果の公表ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
鎌倉期の史料の資料収集・調査を行う予定である。調査内容を比較文化史的観点から分析し、日本古代・中世の「家」の構造と特質の解明を目指す。
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