研究課題/領域番号 |
21K00818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
高橋 学而 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (90896432)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 東北ユーラシア / 渤海、遼、金 / 女真 / 少数民族 / 仏教寺院 / 仏塔 / 城郭 / 他民族共生 / 契丹 / 沿海州 |
研究開始時の研究の概要 |
9-13世紀頃に北アジアに成立した渤海・遼等の国家では、都市制度の整備に伴い、定住民である漢族と狩猟・遊牧民である北方民族が平和的に共生する社会が成立した。この時期の歴史的特質は、複数の国家が成立しさらにその国家間で国際条約が締結され、平和な時代が断続的ではあったにせよ、一定期間継続した点にもある。 本研究は、これらの歴史的現象について、城郭都市の整備の把握、定住民と狩猟・遊牧民の社会に関し遺跡・遺物等主に物質的な観点から当時の様相を俯瞰・把握する。同時に、諸民族の融和に際し紐帯となった仏教に着目し、当時の多民族共生空間形成の過程とその様相を明らかにし、その多民族共生のモデルケースを提示する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、終息の気配は見え始めたものの前年度に同じく新型コロナ感染症の流行と、現地受け入れ機関による調査の自粛の要請と、目下見通しのつきにくいウクライナ戦争による、外務省の渡航自粛の要請のため、当初計画していたロシア或いは中国での現地調査、資料の収集を行ない得なかった。しかし、国内では、戦前、東北ユーラシアで、遼・金代の研究に大きな足跡を残した島田正郎、江上波夫両氏招来の遺物の調査を行った。遺物は、東京国立博物館・横浜ユーラシア文化館、明治大学博物館等に収蔵されているが、とりわけ明治大学博物館に所蔵の遺物は、現在に至るまで公開発表はもちろん、調査もなされていない遺物である。2022年度はそれら遼中京大定府故城出土の瓦片、金上京会寧府故城出土の琉璃瓦、更に石弾の調査を二回に渉って行った。その調査成果は今後発表する予定である。また、横浜ユーラシア文化館では所蔵・一部展示されている金代銅鏡の調査を行った。その他、徳島県徳島市郊外に所在する鳥居龍蔵記念館を訪れ、遼金代の考古資料についての戦前の情報を収集した。同時に中国文はもとより、ロシア科学アカデミー極東諸民族歴史・民族・言語研究所機関誌をはじめとするロシア側の最新の論文17篇の翻訳を進め、仏教寺院・仏塔・城郭に関する資料の収集に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
終息に向かいつつあるとはいえ、2020年初頭以降の世界的なコロナ禍の蔓延、また2022年2月に始まったウクライナ戦争によって引き起こされた現地渡航の自粛、あるいはフィールドワークの実施しえない状況下では、当初の計画とは若干の遅れが生じている。しかし、現地に赴き資料を収集し最新の知見に接するという、その本来の目的を実質的に果たすため、現地の研究者との情報交換を密に行っている。幸い、研究代表者が中華人民共和国国家教育委員会公費留学生として留学していた当時の友人・知人が現在研究職に複数在職し、その点、多くの便宜を得て最新の情報の収集に努めている。同時に、戦前の膨大な満洲国当時に整理・刊行された文献に残された資料の収集を進めている。また、同時に、当初より進めていた中国文・露文の論文の翻訳に精励している。なかでも、ロシア沿海州に於ける契丹、金代女真の城郭・長城・寺院についての調査報告は、現在我が国ではほとんど紹介されていない。2022年度に訳出した露文17編の論考は、本科研の研究推進に大きな意義を有するものである。フィールドワークを行ない得ないことに由来する現在の進捗上の遅れは、これらの活動を総括する最終年度では十分に取り戻すことができるものである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2023年度は、過去2年間に獲得した知見、中国文・露文報告から訳出した資料を集成し、本科研の総括を進めるが、同時に、台湾に赴き中央研究院、故宮博物院に収蔵される遼金代の銅鏡を中心とする遺物の調査を行う。この台湾での調査成果も加えて、本科研の研究対象地域で発掘・調査された考古資料に依拠し分析を行う予定である。過去2年間は、コロナ禍とウクライナ戦争勃発により、研究上の障害が生じたのは疑えないが、フィールドワークを行ない得なかった期間に、極めて多くの露文の報告に接することができた。本科研の研究報告は、2023年12月には編集に入る予定であるが、同時に、論文紹介という形で、今回訳出したロシア研究者による露文報告を我が国学界に紹介する予定でいる。また、国内では2022年度に行った明治大学博物館の島田正郎氏招来の遺物調査を再度進め、また、徳島県徳島市郊外に所在する鳥居龍蔵記念館での調査を行う。更に、報告に提示する共通理解とその方向性の確認に向けて、過去、年4~5回開催してきた研究協力者との打ち合わせ会議をリモート会議も含め5月、8月、11月に行う予定である。これらを以て研究遂行の十全を期したいと考える。なお、本科研の資料として、遺跡一覧を作成する構想があることから、最新成果の収集のため本年秋まで中国での考古調査報告、ロシア科学アカデミー極東支部刊行の報告を中心としたロシア刊行の資料の購入を行う。これらを踏まえて年度末3月には報告書を上梓するものである。
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