研究課題/領域番号 |
21K00821
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
近藤 司 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 特命教授 (40292049)
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研究分担者 |
山田 誠 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (20210479)
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
川合 政人 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (70511278)
中村 和之 函館大学, 商学部, 教授 (80342434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 帯金具 / 形状照合 / BMPデータ / 周波数解析 / 考古学の常識 / デジタル技術 / オホーツク文化の帯金具 / 遺物の復元 / 非接触3次元形状計測 / 座標系の一致 / 画像データ / 大陸製帯金具 / オホーツク文化 / 砂型鋳造 / 非接触三次元形状測定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これまで目視による検討によって、同じ鋳型から鋳造したと考えられてきた北海道出土の青銅製品の遺物について精密な3次元計測し、得られたデータとデジタル技術をもとに、通説の正当性を検証する。 その際、遺物の成分分析の結果も併せて検討、また、遺物のレプリカを作成することで実験考古学的な複製を行い、さらに海外の研究者と遺物の形状についての知識の共有を進める。 以下の3点を問いとする①オホーツク文化の帯金具は、同じ鋳型から鋳込まれたものか②変形した遺物の三次元計測をもとにして、デジタルデータ上の遺物の復元は可能か③遺物のレプリカによる実験考古学の試みと国を越えた考古学情報の共有と研究は可能か。
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研究実績の概要 |
令和5年までの成果として、4枚の帯金具の形状に対して、2枚ずつ6通りの組み合わせの形状比較を行うことにより、それぞれに類似性を数量化した。その全組み合わせを評価した結果、2組の帯金具についてよく一致しているものが判明した。 令和5年度までに進めてきた研究手法は以下の通りである。①開発した手法により二つの帯金具形状の測定データ間の座標系を一致させる。②二つの帯金具形状に対して部分形状領域を指定し、模様の特徴部分である凹極小値を、前後10点を直線に当てはめることで抽出する。③それぞれの部分形状の凹部分を用いて照合処理を行う。④他方の帯金具形状に対する部分形状の位置と照合度合い(照合値)を求める。⑤照合位置の近さと照合度合いの値から二つの形状の一致具合を定量化する。その照合方法は模様の特徴部分と凹特徴点(極小値)と位置づけ、形状を代表する特徴断面での特徴点の一致割合で求めた。⑥特徴的断面の模様を波に置き換えてそのFFT解析から、周期や振幅による形状変化を求めた。 次に、この研究の目的でもある「踏み返し」の可能性について、検討した。「踏み返し」とは鋳造による(通常は木型)模型に実物(青銅品)が使われていることを指す。この研究では一回の鋳造で起きる収縮量に着目し、実験から明らかにした。形状は帯金具形状とさほど変わらず、なおかつ収縮量を算出できる形状を3D/CADで設計し、それを3Dプリンタで作成、それを基に3回までの踏み返しを行った。その結果、青銅を用いた一度の鋳造では1パーセント程度の収縮が起きることが分かった。その一方、従来から行われている砂型を用いた鋳造法では、青銅鋳造品の重量のため模型を取り出すことが難しく、また取り出す際に起きる砂の崩れ、または模様の再現性について大きな問題があることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに実施してきた研究について、オホーツク文化の遺物であり今まで発掘された帯金具5体を非接触形状測定機によりその表面の形状データを点群によりデータ化することができている。それらについて、1)形状の復元作業、2)形状照合処理、3)部分形状の照合、4)収縮量を導入した踏み返しの判別方法、さらに5)周波数解析を用いた踏み返しの判別方法の観点で研究を進めた。 1)発掘された遺物形状を確認するために、形状の復元(レプリカ作成)を試みた。3Dプリンティング技術により模型を作成し、それを木型模型の代わりにした。鋳造により鋳肌を調べ、鋳物砂を8号とした。令和4年度では、現物の帯金具に近い成分の青銅を用いて鋳造を行い鋳造の特徴や「踏み返し」の影響を調べた。 2)形状照合について、測定データはSTLデータ構造であるため、それをXY空間内で0.1mmピッチとなるように格子データへ変換をした。また、遺物のZ方向の厚みは10mm以内であるためそれを256分割で量子化することによりZ方向の分解能が0.04mmとなるように変換し、それらは画像に用いられているBMPファイルで保存した。また、遺物の代表部分形状を用いて座標系の一致を試みた。 3)令和3年度の成果により、BMPデータを用いて遺物形状を重ね合わせることが可能になったことから、部分形状の位置、その変位を定量化することの必要性と定量化ができた。4)令和5年度の成果では、矩形模様を2倍に伸ばした模型を設計し3Dプリンタにより作成し、それを基にした鋳造および踏み返しにより実際に近い鋳造製品を生成、測定し、矩形波形の周波数解析により、「踏み返し」の有無についてその可能性を検証した。これらにより令和5年度までに比べ、より多方面および正確性の高い評価を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究対象は発掘された5つの帯金具が同じ模型から作られたものかについて、従来の定性的な考えに対して、定量化手法の提案と実験によりそれらを確認することである。鋳造の特徴である鋳型の収縮量や踏み返しの影響による形状の変化の定量化を行う。鋳造は溶解から注湯、凝固の過程で必ず収縮現象を起こす。また、角部にダレが発生するなど木型模型に基づくものに比べ鋳型形状の変化がある。この量を求めることにより踏み返し回数の推定を行えると考える。現段階では、実験により青銅性の帯金具形状では一度の鋳造により1パーセント程度の収縮が起きること、周波数解析手法により踏み返しと波形の関係を明らかにした。今後は、発掘された帯金具遺物の組成分析の結果、位置による組成のアンバランスが見つかっている。それについて以下のことを研究する。 1)発掘された帯金具に近い形状を3次元CADで設計し、3Dプリンタにより模型を製作する。2)成形する金属を測定した成分に合わせ、また鋳造時の湯口の幅や湯道、湯の攪拌方法および度合いを固定し、湯の温度を変化させて鋳造をする。3)生型やあぶり型など砂型の状態により鋳造時の湯の流れと対応を確認し、帯金具作成当時の技術で鋳造製品ができる条件を明らかにする。4)それにより作られた鋳造物の組成を本校の解析装置(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)で部分的組成と溶融温度との関係を明らかにする。5)発掘された帯金具には鉛が多いものがあるのでこれに近い金属を精製し2)から4)を行う。6)このような工学的な手法により進められた研究によって明らかになった事実を、考古学者と共有し、北東アジアの出土例との比較を試みる。
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