研究課題/領域番号 |
21K00822
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤野 月子 鈴鹿工業高等専門学校, 教養教育科, 准教授 (30581540)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 外交 / 婚姻 / 東部ユーラシア / 西夏・タングート / 元・モンゴル / 遼・契丹 / 青唐・チベット / 金・女真 / 西夏 / 青唐 / 五胡十六国 / 唐 / 金 |
研究開始時の研究の概要 |
西夏を中心として婚姻に基づいた外交政策について研究することは、当時の東部ユーラシアを巡る国際秩序の新たな解明にも繋がる。 更に、北周・隋・唐等は王家が通婚し、政権・国家形態・システム等もほぼ変わらないとして北魏から始まるこれら諸朝を「拓跋国家」として捉えることも提唱されている。この見解は元に至るまでの非漢族王朝を視野に入れた巨視的な見解であるが、その当否は様々な事例を通じて検証していくべきであり、自身の研究もこうした検証を可能とする。 また、自身の研究は、ジェンダー論の観点を導入しつつ婚姻という主題を取り上げる。 近年の遼・金・西夏・元を巡る諸研究とも相俟って中華王朝の実質にも迫る問題を提唱する。
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研究実績の概要 |
まず、当初の計画では、非漢民族(タングート族)によって建国された西夏及び金でも婚姻に基づいた外交政策の実施が見られる問題があるため、西夏及び金は当時の東部ユーラシアにおいて北宋・遼と共に三つ巴で対峙する国家であり、その実態解明には時代の根本的問題、国家・民族の質に関わる問題が存在すると想定される、という問題意識のもと、西夏及び金における婚姻に基づいた外交政策の実施について考察することを主たる目標としていた。 ただ、これまで自身は主に漢文史料をもとにいわゆる漢民族及びその影響を大きく受けた王朝における婚姻に基づいた外交政策について見てきたが、やはり、西夏及び金の事例を取り上げる際、これまで主に利用してきた漢文史料のみではなかなかその実態を捉え難く、可能な限り利用出来るその他の史料を広く収集する必要性を大いに認識することになり、今後は主にその史料収集及び検討に時間を割くことの大切さを痛感したため、この数年はその期間にあて、これを確実に行い、それを踏まえて研究成果、すなわち、論文作成や学会発表を行うことに切り替えることにした。自身でも当初の予想や計画に反し、なかなかその研究成果を目に見える形であらわすことが出来ず、もどかしい思いをしているが、着実な研究成果をあげるためには必須の作業・期間であると確信している。 既に、前年度における、西夏が婚姻外交の対象とした勢力のうち、主に青唐についての考察はほぼ固まっているため、当該年度では主として西夏からモンゴルに対して行われた婚姻に基づいた外交政策を巡ってその背景や狙いについて史料収集を行った。西夏の末期にモンゴルのチンギスハンに対してその攻撃を避けるために娘を差し出しているが、この事例は、先に明らかにした、西夏と遼、及び、西夏と青唐、で見られた事例とは大きく性格が異なっており、今後、検討する金からモンゴルに対して行われた事例と非常に似ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
いわゆる論文作成や学会発表といった目に見える形で研究成果を報告する段階になかなか至っていない。現状は可能な限りこれまで自身が利用してこなかった史料も含めて収集及び検討しようとしている段階である。これは一言で言えば、計画当初の目論見が甘かったと言わざるを得ないが、そこは焦ることなく、確実な史料収集とその検討をまずは行うことが必要であり、当該研究期間をこの大切な時期にあてるべく取り組んでいる。これによって、予想よりも時間は要するが、目標である西夏及び金における婚姻に基づいた外交政策を考察し、これまで自身が明らかにしてきたこと、すなわち、婚姻に基づいた外交政策は、漢民族王朝では華夷観の影響を受けているために、避けるべきものとして取り扱われたのに対し、非漢民族王朝では、時代を越えて一貫して、華夷観の影響を受けていないために、ときには勢力の強い側から勢力の弱い側に対して恵み与えられる恩寵として、ときには勢力の弱い側から勢力の強い側への人質として、表面的な要素は異なるものの、有効的なものとして取り扱われていたことを明らかにすることに繋げていく計画である。 本研究を始める以前にはほとんど揃えていなかったタブレット等の、収集した史料を保存活用する設備は整っているので、その点は問題ないと認識している。 また、自身は本年度も引き続き担任業務を行い、寮務主事補の業務を行い、そして、テニス部の主顧問をつとめてもいる。このテニス部の活動がここ数年大変盛んであり、毎月何かしらの高体連関連・高専大会関連・鈴鹿テニス協会関連・練習にかかわる試合引率及び大会そのものの運営などに携わっており、また高専としてはテニスの強豪校となっているため、その業務が極めて忙しい。高専の教員である以上、こうした校務は避けられず、実質、勤務の9割以上はこれらに時間を割く必要があり、研究にあてる時間がとても少ない現状である。
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今後の研究の推進方策 |
先述した通り、当該研究期間は西夏及び金における婚姻に基づいた外交政策についての史料収集及び検討に時間をあてる予定である。それを踏まえ、自身がこれまで行ってきた、漢民族王朝における婚姻外交、及び、遼をはじめとする非漢民族王朝における婚姻外交、そして、更に具体的には西夏における北宋・遼・青唐に対する婚姻外交との精密な比較を行い、当該研究期間は終了するかもしれないが、その成果として論文作成と学会発表を予定している。 既に、西夏と青唐、西夏とモンゴルにおける婚姻外交の大まかな目的・背景・理由などの見通しは立ってきているので、引き続き、可能な限り、漢文以外の史料(石刻や漢語以外の言語史料など)も利用しつつ、金からモンゴルに対して行われた公主降嫁について、史料収集及びその検討について行う予定である。 確かに、自身がこれまでの成果を形として学会発表は行えていないが、既にこれまで築いてきた研究者間のネットワークを活用し、情報交換や意見交換などは行っており、特に自身の研究テーマや研究対象の時代に近い研究者と繋がってもいるので、今後もこれらを大いに利用して史料収集・検討を行っていく予定である。 特にその中で、新たに前漢時代及び唐代における婚姻に基づいた外交政策について、最近、他の研究者から研究成果が上がってきており、自身の研究にも新たな視点や視野を与えられることもある。これは当該研究テーマと考察する時代は異なるものの、これまで自身が述べてきた漢民族王朝と非漢民族王朝における婚姻外交との差異をより明確にするものでもあり、加えて引き続き検討し、西夏と金における婚姻に基づいた外交政策の特徴を浮かび上がらせる一つの視座としたいと考えている。 また、近年のコロナ関連でなかなか学会への参加や他の研究機関へ直接赴いて史料を収集することが出来ていないが、何とか今後はそれも復活させていきたいと考えている。
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