研究課題/領域番号 |
21K00833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 則子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20335475)
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研究分担者 |
横田 冬彦 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (70166883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 疫病 / コレラ / 日記史料 / 浮世絵 / ジェンダー / 疱瘡 / 感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は主として次の二点にわたって研究を行う。 ①疫病経験の復元 各地域におけるコレラの疫病経験を日記史料から復元する。医学史料や文学作品から明らかになるのは、集団的経験、集合された心性の歴史である。だが疫病の経験は各人の階層や生活履歴・教養レベルに応じて異なるはずで、本研究はこれについて分析する。 ②地域の疫病経験と情報について 各地域の疫病経験に与えた情報の影響に着目し、検討を加える。地方のコレラ史料の収集を進めていくと、江戸と共通する噂や呪術的対応、治療法情報が広域的に確認できる。地方も巻き込んだ幕末の情報化社会の展開が、病への対応を含む「疫病経験」のありようを変えていったことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
・単著『近世感染症の生活史 医療・情報・ジェンダー』(吉川弘文館、2022年4月)において、慢性感染症・急性感染症について論じた。コレラについても、文政五年と安政五年のコレラ流行時の江戸の状況について、章を立てて論じている。文政五年については上方のコレラ流行情報を、江戸の医者たちがどのように受け止めたのか、蘭方医の情報ネットワークを介した疫病経験について明らかにしている。 ・共著『想像する身体 上巻 身体イメージの変容』(臨川書店、2022年12月)では、第一部2章 「安政六年京都のコレラ流行と御千度」を単独で執筆した。京都の安政六年のコレラは、有名な安政五年のコレラ流行以上に多大な被害をもたらした。だが安政六年のコレラ流行に関する先行研究はほとんどない。そのような研究状況の中、本稿は浮世絵、日記史料を中心として京都の人々が町内ごとの大規模な御千度を展開することで疫病に対応した心性を分析している。この作業を通じて、江戸時代の疫病への対峙方法と明治以降のそれとが大きく異なることを指摘した。それは医学の体系が伝統的中国医学から、西洋医学へと舵を切る中で、従来の「気」を軸とする身体観・疾病観が否定されることで起こった事態であった。 ・2022年3月に行った総合女性史研究会2021年度大会報告「江戸時代の疫病史料にみる女性」(単独)の報告彙報を『総合女性史研究』40号(2023年3月)に執筆した。安政五年の江戸での疫病流行が、女性にとって特に過酷な経験であったことを示し、疫病下のジェンダー問題について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単著『近世感染症の生活史 医療・情報・ジェンダー』(吉川弘文館、2022年4月)と共著『想像する身体 上巻 身体イメージの変容』(臨川書店、2022年12月)によって、これまでの成果を広く一般社会に向けても公開することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度を迎えて、これまで浮世絵、日記史料、随筆などで明らかにしてきた疫病経験の歴史を、コレラ関係の医学書の記述と照合する作業を進めている。
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