研究課題/領域番号 |
21K00843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
河島 真 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (00314451)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 田澤義鋪 / 山下信義 / 大成協会 / 新政社 / 社会教育研究所 / 大川周明 / 安岡正篤 / 内務省 / 選挙粛正 / 大成 / 新政 / 政治教育 / 青年団 / 日本近現代史 / 内務官僚 / 官民一致 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、大政翼賛会へと結実する「官民一体」政策を進めた1930年代内務行政の中心に位置し、かつ先導的イデオローグであった田澤義鋪に着目し、彼の著作、日記、彼が刊行した雑誌、盟友となった内務官僚たちの思想等の分析を通して、田澤と彼を中心とする内務官僚の1920~30年代における思想(論理)と活動(実践)が、同時代の日本政治の中でどのような位置を占め、どのような帰結をもたらしたかを具体的に明らかにし、「官民一体」体制の形成過程の一端を解明することをめざす。
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研究実績の概要 |
田澤義鋪が深く関わった政治教育雑誌『大成』『新政』の記事・執筆者一覧の作成と分析を進めた。 『大成』はもともと静岡県で青年教育を行う山下信義が主宰していた。1913年に刊行が始まったと思われるが、確認できているのは1920年8月発行の第8巻第9号以降である(山下が社会教化の団体として大成協会を結成したのは同年5月)。しかし、編集兼発行人は遅くとも1920年10月発行の第9巻第10号(第9号は所在不明)から京都府伏見町の村田太平に移り、大成協会の事務所も1921年からそちらに移っている。 今回明らかになった事実のうち最も興味深いのは、『大成』が1923年8月発行の第11巻第8号から大成協会と社会教育研究所の共同編集に移行し、安岡正篤、大川周明ら有名な右翼活動家が執筆に参加していることである。これまで右翼活動家と内務官僚との関係は金鶏学院の設立(1926年)始まると考えていたが、それより時代が遡ることになる。社会教育研究所は猶存社系の国家主義団体として知られており(刈田徹「大正期猶存社系国家主義運動に関する一考察」1987年)、同研究所からは主幹の小尾晴敏が編集人として参加した。発行は大成協会のままであったが、住所は東京市に移っている。これ以後の『大成』には、後に右翼団体国維会に参加する吉田茂(内務省)、酒井忠正らが名を連ねるなど、右翼運動が四分五裂する直前の大正後期の右翼運動と内務官僚との緩やかな関係が看取される。 但し『大成』は1914年4月発行の第12巻第5号をもって中断し、1926年1月(第13巻第1号)に復刊する。発行は田澤が設立した新政社に改まり、「青年雑誌」と銘打たれ、田澤と山下の共同編集という体制が採られた。大川や安岡ら右翼運動家が事実上排除されており、田澤の考え方が色濃く反映されるのは、これ以降のことである。 なお、田澤義鋪日記の翻刻・分析は継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度から勤務校の要職(副学長・教務部長)を務めなけれなならなくなり、充分な調査・研究時間を確保することができなかった。 授業そのものの負担も減っておらず、役職就任1年目ということもあり、研究時間が犠牲になってしまったことは残念な限りである。 研究期間を1年延長し、改めて所期の成果を挙げるため取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
9月を目途に政治教育雑誌『大成』『新政』の記事・執筆者一覧を完成させる。この成果は、撮影した画像とともに、本課題研究終了後、田澤義鋪の関係史料を収集・所蔵・利用・後悔している日本青年館に寄贈し、今後の利用・研究に資する予定である。 また、田澤義鋪日記の翻刻と分析の成果は、田澤義鋪の生地である佐賀県鹿島市の鹿島市民図書館学芸員として田澤の研究を精力的に進められている高橋研一氏と共有し、相互の研究の進展に役立てることとする。 また、丸山鶴吉・後藤文夫ら田澤とともに青年教育・政治教育に取り組んだ内務官僚の人的ネットワークと政治構想の検討は、本課題研究における中心テーマであるが、残りの研究期間の間にその成果発表のため論文執筆に取り組むこととする。
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