研究課題/領域番号 |
21K00855
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 共愛学園前橋国際大学 |
研究代表者 |
野口 華世 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 教授 (40634647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 待賢門院 / 待賢門院領 / 遠江国質侶荘 / 越前国河和田荘 / 上野国淵名荘 / 中世荘園成立史 / 中世荘園 / 女院領 / 女院 / 立荘 |
研究開始時の研究の概要 |
中世荘園は中世的土地領有のあり方だが、従来の説のように草深い田舎の武士が寄進を重ねて成立させたのではなく、縦横的な人的関係を通じて荘園候補地を募り、条件が整えば院や女院などによる上からの立荘認定によって中世荘園は成立することが明らかになってきた。この中世荘園の成立において、鳥羽院の妻后待賢門院藤原璋子は、白河院政期の12世紀前半に院号宣下され女院になるとすぐに待賢門院領を形成する。この動きは、全国的な中世荘園の成立事例に比しても非常に早い段階のものである。このことに注目すると、その後の荘園成立ラッシュには、待賢門院の果たした役割が大きいという仮説が導き出せる。本研究はこれを実証するものである。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究として、前年度に引き続き、「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」の作成と、これらの一覧をふまえて「待賢門院史料集」の作成に着手した。また待賢門院院司と待賢門院領形成に関わった人々の抽出に取りかかった。 地域社会における現地調査の実施については、本年度予定していた遠江国質侶荘と、前年度の追加調査として越前国河和田荘の調査を実施できた。ただし越前国河和田荘の現地調査の初日に集中豪雨で電車が止まり、予定していた4人のメンバー中2人は結果的に福井に来られず、1人も1日半到着が遅れた。研究代表者はすでに現地入りしており、2人で日程を大幅に縮小しての調査となってしまった。 また本年度も新型コロナウィルス感染症の影響を受け、人数を集めての現地調査の実施が難しかった。遠江国質侶荘の現地調査は実施できたものの、最少人数での実施で予備調査的なものに留まっている。ただし当地では1000分の1の地図や書籍類を購入することができた。これは今後の調査にとって有益なものである。一方、周防国玉祖荘の現地調査は計画したものの、新型コロナウィルス感染症のため中止せざるをえなかった。その他、女院領のケーススタディとして下野国足利荘の踏査を実施した。 それでも、本年度の現地調査による大きな成果は、遠江国質侶荘の近隣荘園として王家領である宝荘厳院領初倉荘の存在がわかったことである。前年度の調査においても上野国淵名荘は隣荘である新田荘との関わりが深いことを見出したが、質侶荘においても同様のことが言える見通しがついた。今後はその他の待賢門院領で、どれほど同じようなケースがあるのかを検討する必要があるが、大事な知見だと考えている。そして、この知見は、1つの荘園だけを見ていても、逆にある女院領だけを全国的に抽出しても見出せないものであり、本研究ならではの成果といえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」の作成と、これらの一覧をふまえての「待賢門院史料集」の作成、そこからの待賢門院院司と待賢門院領形成に関わった人々の抽出については、おおむね順調と言える。しかし、地域社会における現地調査の実施に関しては、当年度も新型コロナウィルス感染症の影響を大きく受け、人を集めての調査実施が難しかったことに加え、計画した調査の1つは中止することとなってしまった。また、実施した調査の1つは、集中豪雨の影響を受け、大幅に人数と日程を縮小しての調査となってしまった。以上のように現地調査において感染症と天災の影響を受けたためである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度に引き続き「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」をふまえて「待賢門院史料集」を完成させ、その内容を検討する。「待賢門院領一覧」から、立荘に関わった人々と待賢門院に人的に奉仕した人々と重なるメンバーの抽出とその検証を実施し「待賢門院院司・立荘関係者データ」としてまとめる。 地域社会での現地調査に関しては、前年度できなかった周防国玉祖社の調査をまずは実施する。また前年度までに残した現地調査も合わせて実施する。 以上の本年度の研究を推進するにあたり、先の研究実績の概要でも述べたように、新たな知見を得たため、荘園形成に携わった人々については、さらに広範囲で検討する必要が生じ、また現地調査においても近隣荘園との関係という点に注目して調査する必要がでてきた。そのため、今後の現地調査における注力点や、立荘に関わった人々の抽出においては、効率を考え実施方法を再検討したうえで行なう必要がある。また最終年度であるため、遅れている分はさらに研究者の協力を得て推進する。
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