研究課題/領域番号 |
21K00857
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
伊藤 俊一 名城大学, 人間学部, 教授 (50247681)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 荘園史 / 中世史 / 農業史 / 環境史 / 比較史 / グローバルヒストリー / 災害史 / 気候変動 / 日本中世史 / レジリエンス |
研究開始時の研究の概要 |
近年の古気候学の進展により、過去の社会が気候変動にどのように対処したかという問題に実証的に取り組む条件が整った。本研究は、申請者が15~16世紀を対象に行った水干害と再開発についての研究成果をふまえ、諸荘園の帳簿類の収集と分析、現地調査により、13~14世紀の気象災害による農業生産の被害とその質的変容について、気象災害による被害状況と、水田の再・新開発、水田二毛作や畠作の拡大に焦点を当てて明らかにする。そして気候変動という環境からの刺激に社会はどう対応し、その結果、社会はどう変容したかという観点から歴史を考察する「環境応答の歴史学」の構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
中世の史料から復元できる洪水・旱魃などの気象災害の状況と、古気候学の手法で推定された気温と降水量の変動とを対照し、関連する先行研究も合わせて分析する作業を概ね完了した。その結果、12世紀第2四半期の低温多雨と中世荘園制の形成、同世紀半ばの荘園の基盤整備、13世紀の開発進展と飢饉の克服による荘園制の強靱化、14世紀第3四半期から15世紀第1四半期にかけての最適期、15世紀第2四半期から半ばにかけての異常気象・環境破壊の進行・災害復興の不全による危機という、気候変動の観点を取り入れた中世荘園史の大枠を構築できた。また気候変動はそれだけで社会に影響を与えたのではなく、人間活動による環境の改変の状況と、災害復興の仕組みの健全度が相まって影響を与えるとの仮説を得た。以上の内容を九州史学研究会の招待講演で発表し、論文を執筆した。 海外との比較史研究についても着手した。総合地球環境学研究所で行われた欧州の環境史研究者とのワークショップに招待され、上記の内容の一部を報告した。欧州の研究者の発表からも刺激を受け、共通する気候変動に諸地域・諸条件でどのように対処したかという観点から、中世におけるグローバルヒストリーの可能性を認識した。中国史の文献も収集して分析に着手した。 また環境改変の状況が重要であることを認識したため、豊富な情報が得られる近世史や民俗学、地理学の研究成果の摂取に努めた。これに基づいて播磨国矢野荘における環境利用と開発過程についての分析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の最大の目的である「環境応答の歴史学」の大枠を構築することができ、それに基づく比較史研究に着手し、国際的な研究交流の端緒もつかむことができたところは順調に進展している。ただ水田二毛作の実証研究については先行研究の検証に留まり、新たな事実は見出せていない。
|
今後の研究の推進方策 |
気候変動とそれへの社会的対応についての理論を把するとともに、中国と欧州を中心に同時代での対応の状況を収集し、比較史研究を進める。また日本中世について明らかにした内容を国際発信できるように努める。また環境利用の観点から荘園史料を見直し、実証研究の成果につなげられるように務める。
|