研究課題/領域番号 |
21K00884
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
中西 義昌 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (50633020)
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研究分担者 |
山田 貴司 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80882480)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 大友氏 / 分布データベース / 土木インフラ / 戦国大名 / 戦国期守護 / 文献史学 / 考古学 / 城郭史 / 分布論 / 大名領国 / 戦国史 / 城郭 / 出土遺物 / 分布 / 学際研究 |
研究開始時の研究の概要 |
16世紀に九州北部地方に一大勢力を築いた豊後大友氏を取り上げ、文献史学・考古学・城郭史を総合化して戦国期に形成された大名領国の実態(本拠と周縁部、分国との関係・機能)を明らかにする。方法としては、領国全体、或いは分国単位で大友氏権力の行為を示す史・資料を抽出、地図情報の上で可視化する分布データベースを作成、都市や軍事拠点、河川・交通路などの地理的要因に規定されつつ進められた領国支配の展開と変遷過程を解明する。
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研究実績の概要 |
令和5年度までに通算3回の巡見・検討会を実施し、大友氏の主要な支配地域であった豊後国、筑前国の博多湾岸地域、そして筑後国高良山地域を歩いた。そして、科研の目標(地域を越えて俯瞰的に捉えること)に沿って、文献・考古・城館の各研究視点から活発な議論と意見交換を行い、大友氏勢力圏を俯瞰的にみることから関連する史・資料を整理・分析する視点を深めることができた。 それらの検討結果は、11月の第10回九州城郭研究大会(主催:北部九州中近世城郭研究会)において、発表・討論という形で還元することができた。研究代表者・分担研究者・研究協力者からは以下の5本の報告を得た。中西義昌「縄張り研究から大友氏の勢力圏を俯瞰する」/浦井直幸氏「高崎城と加判衆の城郭~豊後・豊前南部を中心に~」/山崎龍雄氏「大友氏の領国支配―筑前国博多の状況―」/山田貴司氏「筑後における大友氏の分国支配」/松尾大輝氏「文献史料から見た大友氏の筑前国志摩・香椎支配」である。この他、ゲストスピーカーの五十川雄也氏(大分市教育委員会)「豊後府内と大友氏遺跡」の報告をいただいた。この6名で、九州城郭研究大会シンポジウム「城館・考古・文献から大友氏の勢力圏を俯瞰する」の討議を行い、戦国期大友氏の勢力圏を城館・考古・文献のそれぞれの研究視点から俯瞰的に捉える作業を進めた。当日の発表は資料集として刊行された。資料集には本科研で作成中の大友氏の城館データベースも併せて掲載した。 この他、研究代表者は5月に日本景観生態学会第33回淡路大会JALE2023にて口頭発表を行った。論文では9月に「大友氏の博多支配と城郭・土木事業」(『福岡地方史研究』61号)を発表した。研究分担者は9月に七隈史学第25回大会で報告を行った。論文では8月に「中世後期における阿蘇大宮司家の動向とその拠点」(『熊本史学』103号)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年度は、前年度の第2回巡検・検討会で決定したスケジュールに基づき、巡検・検討会と研究集会を開催した。具体的な進捗状況は以下の通りである。 第3回の巡検・検討会「戦国期大友氏と高良山」を6月3日に福岡県久留米市で実施した。大友氏の筑後国支配の拠点となった筑後府中、高良山について、高良大社宝物館と大友氏と関係の深い戦国後期の山城(吉見嶽城、住厭城、毘沙門嶽城)の巡検を行った。高良大社宝物館では久留米市教育委員会から調査報告書が刊行された『高良大社文書』から大友氏関連の史料を検討した。そして、戦国後期の山城など高良山関連史跡の巡検を行った。 以上、過去3年にわたり、旧筑前国・豊後国・筑後国と大友氏勢力圏の代表的な拠点を巡検することで、科研趣旨の共有を計り、城館・考古・文献のそれぞれの研究視点から俯瞰的に捉えた検討を行うことができた。これらの成果から、第10回九州城郭研究大会(主催:北部九州中近世城郭研究会、11月18日・19日実施)では、研究代表者・研究分担者・研究協力者、計5名が研究発表を行った。全体では8名による研究発表があり、シンポジウム「城館・考古・文献から大友氏領国を俯瞰する」では研究代表者が司会進行となり全体討論を行った。 このように、3年目にして調査・研究は軌道に乗ったものの、夏季を除く調査シーズンに現地調査の手続きが進められなかったことや下半期に所属館の企画展・特別展、リニューアル事業などに時間を取られたために、データベースの作成などの遅れを取り戻すことができなかった。この結果、最終年度には研究報告書の取りまとめはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は最終年度であったが最後まで約1年程度の遅れを回復できなかった。このため、延長申請を行い令和6年度に研究報告書の作成を行うこととなった。 令和6年度は、第10回九州城郭研究大会の成果を加えて編集し、最終的な研究報告書を作成する作業を執り行う。報告書では、戦国後期の大友氏勢力圏について、城館(立花山城と周囲の城塞群、御飯ノ山城と香椎、柑子嶽城と志摩郡の城館、高崎城と豊後府内、豊後における大友氏の拠点城郭)、そして、中世都市(博多、香椎、豊後府内)の調査・検討を行い、掲載するデータベースの充実と報告書執筆を行う。 前年度からの取り組みでは、城館・考古班は、大友氏の城館・関連遺跡について、16世紀を中心に博多湾(立花山城・香椎、柑子嶽城・今津、博多)、豊後府内・別府湾(高崎城・大友氏遺跡、鹿越城)、及び中津平野や筑後平野の城館などの分析を進めている。また、文献班では15世紀から大友氏関連の文献史料の整理から戦国期守護論に基づく分国支配の観点から支配体制の分析を進めている。各班の調査研究の進捗状況は秋に行う4回目の巡検・検討会(大分県臼杵市・佐伯市を予定)にて確認し、研究報告書作成の最終調整を行う。これにより、刊行に向けて円滑な作業進行を図る予定である。
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