研究課題/領域番号 |
21K00897
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
溝辺 泰雄 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (80401446)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 第二次世界大戦 / ビルマ戦線 / インパール作戦 / アフリカ人兵士 / 旧日本軍 / 日本アフリカ関係史 / 植民地主義 / インド=ビルマ戦線 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、第二次大戦期のインド=ビルマ戦線において直接交戦せざるを得なくなった日本軍兵士とアフリカ人兵士およびその戦闘に関係した(もしくは巻き込まれた)人々の記録・記憶の分析・検討を通して、戦場における彼らの経験の態様を解明することにある。インパール作戦後にビルマ戦線に投入された東アフリカ部隊(第11東アフリカ師団および第22、28東アフリカ旅団)に関しては先行研究によって一部明らかにされているため、本研究はインパール作戦直前から作戦中盤にかけての時期にビルマ西部で日本兵と交戦した西アフリカ部隊(第81及び82西アフリカ師団)の事例に調査・研究の焦点を当てる。
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研究実績の概要 |
研究二年目にあたる令和4(2022)年度は、COVID-19およびウクライナ戦争、極度の円安状況による海外渡航費の急騰等により、当初予定していたアフリカ諸国での調査ではなく、国内6都市およびイギリス1都市における調査に注力し、次の成果を得た。 まず、国内においては旧日本陸軍第18師団(菊兵団)および同第56師団(龍兵団)に 多くの兵士を送ることとなった北部九州地域の各都市(福岡市、久留米市、佐賀市、長崎市)の公立図書館・資料館において、各館所蔵の郷土資料を中心に元従軍兵士の方々が書き遺された手記や回想録の調査を実施した。その結果、ごく少数ではあったが、ビルマに設置された抑留者キャンプで連合国軍の一員として監督任務に従事していたアフリカ人兵士に関する記録を確認することができた。 また、同じくビルマ戦線に派遣された旧日本陸軍第三十三師団(弓兵団)の従軍兵士の出身地域の一つである北部関東地域の宇都宮市および水戸市の公立図書館・資料館においても未刊行の郷土資料(回想録や手記)の調査を実施した。その結果、インパール作戦後に同師団がタイ方面とへ退却していた際に、遭遇した「第十一東阿師団」についての記述を確認することができた。 報告者はさらにイギリス・ロンドンの英国図書館本館アフリカ・アジア調査室において、第二次世界大戦期におけるアフリカ人兵士に関する文献調査を実施するとともに、ロンドン市内の古書店において、第二次世界大戦期に発行されたアフリカ人兵士に関する冊子、パンフレット類の調査、を実施した。その結果、第二次世界大戦期の北東アフリカ戦線における英軍側の組織およびアフリカ人兵士の関与を詳細に記述するパンフレットを発見し、本研究にとって極めて重要な情報を入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、第二次世界大戦期のインド=ビルマ戦線において、直接交戦をせざるを得ない状況におかれた日本と西アフリカ出身の従軍兵士および日英両軍の将校・兵士・従軍記者による記録・記憶を通して、従来の研究が充分に拾い上げてこなかった、日本とアフリカの「意図せざる戦い」の実態を明らかにすることにある。 研究二年目にあたる令和4年度においては、当初アフリカにおける資料調査やインタビュー調査を実施する予定であったが、上記「研究実績の概要」でも述べたとおり、COVID-19およびウクライナ戦争、極度の円安状況等による海外渡航費の急騰により、アフリカにおける調査を実施することができなかった。 しかし、これまで確認することができなかった旧日本軍に従軍した方々が書き遺されたビルマ戦線に関する未刊行の回想記や手記を、日本各地の図書館・資料館において丹念に調査を行う機会を得ることができ、これまでの本研究の調査において欠落している情報を補うことができたことは大きな収穫であった。 また、イギリスで入手することができた東アフリカ戦線に従軍したアフリカ人兵士に関する未刊行のパンフレットからも、これまで確認できていなかった組織の下部編成や兵士の出身地域に関する情報を得ることができ、当時のアフリカ人部隊の編成および隊員募集プロセスなどに関する情報整理が可能となった。 また、第二次世界大戦期の日本とアフリカの関係に関する解説文を寄稿した書籍が出版されたことも研究成果の一部の社会還元という点で、意義ある成果として位置付けることができる。 以上のことから、今年度に関してはおおむね順調に進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる令和5年度は、これまでに実施してきた日本各地の図書館・資料館における未刊行資料の調査を継続しつつ、旧イギリス領西アフリカのアフリカ人部隊(第81/82西アフリカ師団)の本部が設置されたガーナ共和国において史料調査と退役軍人協会での聞き取り調査を実施する予定である。さらに、ガーナ国立公文書館本館では、植民地行政局文書(CSO)の戦争関連ファイル(CSO23: WAR)を中心に、対日戦関連文書の調査を実施する。同館タマレ分館では、1945年以前の地域行政文書(NRG8)に収録されている、現地新兵採用活動に関する地方弁務官の非公式日誌(NRG8/4)および現地首長会議録(NRG8/5/18: Conference of Chiefs, 1942-47)を中心に、イギリス人行政官の活動と現地社会の対応、植民地当局による対日戦プロパガンダの実態の解明を進める。さらに、タマレに存在するガーナ退役軍人協会において、元従軍兵士の関係者への聞き取り調査も実施する。
上記に加え、イギリスでの史料調査および聞き取り調査(上記③)を実施する。国立公文書館では、植民地省関連文書(CO)におけるビルマ戦線に派遣された第81/82西アフリカ師団が属していた王立西アフリカ辺境軍(RWAFF)に関する史料を収集するとともに、陸軍省関連文書(WO)のビルマ戦線戦時記録における日本関連史料の収集・分析をおこなう(本申請書作成時点で63点の存在を確認している)。帝国戦争博物館では、ウェブサイトでは閲覧不可とされている第81/82西アフリカ師団のビルマ戦線での活動を記録した陸軍省写真資料(IND7047-79)等の収集をおこなう予定である。
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