研究課題/領域番号 |
21K00910
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
荒川 雪 (王雪萍) 東洋大学, 社会学部, 教授 (10439234)
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研究分担者 |
山影 統 海上保安大学校(海上保安国際研究センター), 海上保安国際研究センター, 准教授 (60766690)
井上 正也 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70550945)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 在日中国人団体 / 中国関連諸団体 / 中国国民党 / 日本共産党 / 中国共産党 / 中華人民共和国 / GHQ / 日中関係 / 中華民国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は戦後中国国民党・中華民国政府、中国共産党・中華人民共和国政府の両陣営による在日中国人団体・中国関連諸団体を通じた対日工作の過程と、それらの団体の対中認識と協力内容の変容を明らかにすることで、日中国交正常化の歴史を再考し、今後の日中台関係の変化への示唆を与えることを目的とする。①戦後両陣営が展開したこれら諸団体へ働きかけに関し、一次資料を使って、その方法と過程を明らかにする。②冷戦構造が東アジア地域に定着していく過程で、これら諸団体の中国に対する認識の変容過程と両陣営の対日工作への協力の活動実態を、これら諸団体が発行した機関紙(誌)の報道内容に関する量的・質的分析を通じて明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度では、過去2年間で収集した史資料のデータベース化を行い、さらに史資料の追加調査を行った。収集した資料の分析を通じて、以下の点が明らかにした。 第1に、在日中国人留日学生の統一団体である中国留日同学総会(以下:同学総会)の会員は大陸、台湾、そして華僑と、様々な出身地の留日学生が、いずれもコミュニケーション可能な言語が中国語ではなく、日本語であったことが分かった。一部の台湾出身学生及び華僑学生は、中国語の方言は使えても、共通言語である国語は全く話せず、中国語の読み書きもできなかった。そのため、1953年の在日中国人の集団帰国以降、中国語が分からない華僑学生の中国語レベルを向上させるため、『中国留日学生報』(以下:『学生報』)は、中国語のまま記事を掲載するなどの方策を取った。中国語学習関連記事に関する分析から、同学総会の執行部は当初、中国人として中国語が話せないことは恥ずかしいことと強調し、学習に励ませようとしていたが、1953年以降はさらに踏み込み、祖国への敬愛の念を込めて国語を学習し、帰国して国家建設に参加しようと呼びかけるようになった。第2に、『学生報』の結婚に関する記事や文学作品に関する分析を通じて、中国政府の「婚姻法」の公布・施行と日本社会の変化を背景に、自由恋愛による結婚は1950年代の留日学生、華僑子弟のなかでも一般的になってきたことが明らかになったが、在日華僑の先輩や、同学総会の執行部、『学生報』の編集者は、自由恋愛による結婚は、国際結婚即ち中国人と日本人の結婚を避けるべきであり、すでに数多く行われた国際結婚の傾向が是正されるべき現象であるかのような姿勢が見受けられた。それも将来日本で中国への協力業務参加、あるいは帰国し新中国の建設に参加するために中国人同士の結婚を推奨した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日中関係の悪化により、中国側の関係者へのインタビューは予定通り実施できなかった。そのため、中国側で予定していたインタビュー調査の代わりに、関係者は新聞、雑誌、書籍に公刊した回想録を収集した。回想録の収集及び整理の作業は予想より時間がかかった。日本及び台湾で行うインタビュー調査はほぼ完了したが、テープ起こしの作業は予定より時間がかかったため、まだ作業は終了していない。以上の理由より、本研究の調査はまだ完全に完成していなく、最終成果の分析、まとめの作業も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、昨年中国での実施できなかったインタビュー調査を再度挑戦したい。年度前半にインタビュー調査は実現できる場合、速やかにテープ起こし作業を行う。また、昨年度収集した史資料と回想録をデータベース化して、グループ内で共有する。さらに昨年度実施したオーラルヒストリーのテープ起こしの作業を完成させ、研究成果をまとめる予定である。各地の研究メンバーによる研究成果をまとめ、昨年度に開催できなかったワークショップを本年度に開催し、最終成果の公刊を目指す。
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