研究課題/領域番号 |
21K00915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
伍 躍 大阪経済法科大学, 国際学部, 教授 (60351681)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 前近代中国 / 行政訴訟 / 官僚制度 / 法制史 / 社会史 / 青苗会 / 京控 / 皇帝への直訴 / 流品 / シン(手へん+晋)紳録 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の研究目的を達成させるため、『大清会典』をはじめとする政書類・奏摺・実録・訴訟档案、とくに原告側が作成した訴訟資料集などの資料を利用し、国家統治具現としての行政に関係する訴訟の一般的特徴を究明する。これにより、現代中国にも通じる前近代中国における専制統治の実像への認識を深化しうると考える。 期間内においての具体的な研究項目は、①行政法法源の構成、②国家制度の解釈をめぐる訴訟への国家の対応、③被告官僚らへの処罰、④誣告があった場合の対応、との4つである。
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研究実績の概要 |
概ね順調である。 今年度の研究重点は、行政処分を不服として救済を求め、その訴えの内容を「事実」と認められた場合、被告となった官僚への処分と『大清律例』や『欽定吏部処分則例』などの法令との関係について明らかにすることにある。 ①史料収集:今年度では、国立公文書館が所蔵する『官歴漫記』、『巡方規吏十要』、『欽定浙江賦役全書』などを収集したほか、国立国会図書館や(中国)上海図書館が所蔵する清代乾隆・嘉慶・道光・同治・光緒期の『欽定吏部銓選則例』を閲覧した。こうした作業を通して、官僚の処分にかかわる法規定、とりわけ『大清律例』と『欽定吏部処分則例』との関連性を把握することができた。 ②研究進展:1)前近代中国における「行政訴訟」という概念を定義することができた。それは、近代法的意味のものではなく、その近代法の概念を一種の操作概念として借用し、近代法のそれより広範的な概念として、公権力の行使にかかわる一連の争訟を意味するものである。2)前近代中国における「行政訴訟」の性格を明らかにすることができた。まずは支配者の側面である。事件の受理や審理を通して、支配者は被支配者との関係を調整したり、支配者側内部の綱紀粛正をしたりするなど 、なるべく「平和的」方法で自らの支配の安定をはかったのである。次には被支配者の側面である。被支配者は皇帝への直訴を含め事件の告訴などを通して、支配者に対し公事における自らの権利利益を主張し、それを侵害したと思われる官僚・書吏・衙役などを告発し、大規模な反乱を起こさず、国家制度の枠組み内で自らの権利利益の保障を求めたのである。要するに、行政訴訟のこの二つの側面の働きにより、官民関係を含む前近代中国の支配秩序は受身的に調整されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、当初の研究計画に沿って、行政処分を不服として救済を求め、その訴えの内容を「事実」と認められた場合、被告となった官僚への処分と『大清律例』や『欽定吏部処分則例』などの法令との関係について研究を行い、4本の論考を執筆した。 具体的には、①前近代中国における行政訴訟の基本構造を明らかにする「前近代中国における行政訴訟」、②官僚を処分する際の法規定・手順、および処分の取消を求める官僚個人の訴えを研究する「清代における官僚処分の不服審査」のⅠとⅡ(参奏と「誤掲属員」、京控)、③および税金の徴収に関係する書吏の「不正」に関する訴訟を研究する「銭糧事案に関する行政訴訟の一側面」、という4本の論考を起草した。 これらの論考と関連して、台湾故宮博物院が所蔵する清代の档案資料を利用して、巡幸中の皇帝に対し直訴をする際の法規定を確認して、具体例として乾隆四十五年の江南巡幸中に発生した29件の直訴案件、とりわけ地方官が「不正」をしたとしての直訴案件について初歩的な分析をした。 ほかに、前近代中国における財産秩序の維持という観点から、収穫前の農作物を盗難からまもる青苗会という民間組織の内部対立をめぐる訴訟を研究した。 以上のように、当初の計画に沿って研究を行い、期待通りの研究を行うことがおおむねできた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、民事訴訟の場合、誣告があってもほとんど処罰されなかったのに対し、国家制度と「父母官」たる官僚への提訴が誣告と認められた場合、一般民衆を含む原告に対する処罰があったのか、なかったのか、もしあればその際の根拠は何であったのか、ということの究明を目指す。昨年度に収集した史料のほか、国内と海外の図書館などをはじめ、研究に必要な史料を引き続き調査収集する。必要な図書も購入する。 なお、2023年度の調査では資料整理などにより調査収集ができなかった文献を引き続き調査収集をする。
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