研究課題/領域番号 |
21K00922
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 愛知教育大学 (2022) 名古屋大学 (2021) |
研究代表者 |
小坂 俊介 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (10711301)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ローマ帝国 / 古代末期 / ガリア / 教会会議 / 司教 / ヨルダネス / セナトール貴族 / 内戦 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、紀元後4世紀後半から5世紀にかけてのヨーロッパ西方、特にイタリアとガリアにおいて、セナトール貴族と呼ばれる現地の指導者層がローマ帝国の支配体制から離脱していった過程を、内戦とその戦後処理に注目して解明することである。この時代の帝国は帝国外集団との戦争に加え、皇帝同士の内戦をも何度も経験した。本研究は、それらの内戦と戦後処理がセナトール貴族に皇帝権力に対する不満を抱かせ、その結果彼らとその支配地域は皇帝権力の傘下から出ていったという仮説を立てる。この仮説を帝国法令・教会会議決議録等の同時代史料の分析、さらにプロソポグラフィ(人物誌的)調査に基づき検証する。
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研究実績の概要 |
計画の二年目である今年度は、380年代~420年代のガリア南部における皇帝権力の交代と、それに伴う教会組織内部の政治抗争・人事再編過程の解明を試みた。その過程で行なった具体的作業は以下の3点である。1.この時期のガリア南部教会における司教の顔ぶれを『後期帝国キリスト教人物誌』に基づいて確認し、その変遷を追った。2.4世紀ガリアにおける教会会議決議録を読解し、教会内政治抗争の様相を検討した。3.この時期のローマ司教たちの手紙、特にゾシムス(司教位417-418)の手紙を重点的に読解し、ガリア教会に対するその態度を検討した。以上の作業から得られた情報をもとに、内戦前後の皇帝権力の担い手や地理的行政区分の変化が教会構成員を変える歴史的過程を整理し、学会発表を行なった。この発表と議論を経て、論文として成果をまとめるにはトピックと問題設定のさらなる絞り込みが必要と判断し、当時の帝国政治と教会政治とのかかわりを特にどの時点に注目し、どの視点から分析するかを再検討した。その結果、5世紀初頭の皇帝コンスタンティヌス3世による教会内人事への介入を、380年代以降のガリア教会政治の文脈に位置づけることで、この事例に従来とは異なる解釈を与えうると結論できた。 また、前年度に引き続き6世紀の歴史家ヨルダネスの作品『ゲティカ』の翻訳・註釈作成を行なった。今年度はゴート人とローマ帝国との接触、およびいわゆる「3世紀の危機」を語る67節から130節までを訳出した。その過程で、3世紀の歴史家デクシッポスの著作『スキュティカ』およびその新出断片について調査し、文章にまとめ、『ゲティカ』訳註のまえがきとして付した。この成果はすでに学術誌に投稿し、査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は4世紀ガリアで作成された教会会議決議録と歴代ローマ司教の手紙という、本研究計画の分析対象の中心である史料群を読解し、その内容と特徴とを把握することができた。またプロソポグラフィ調査をも進め、380年代から420年代までのガリア南部教会政治を動かした要因とその歴史的背景とを解明した。このように作業を進めることができ、また学会報告を経て、論文執筆の見込みも立っていることから、研究は概ね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは現時点での作業の成果を論文として公表する作業を進める。5世紀初頭の皇帝コンスタンティヌス3世による教会内人事への介入についての論文を執筆し、学術誌に投稿する。その作業を終え次第、アルル司教パトロクルス(在位413-426)と皇帝権力との関係性を再考するための史料分析を行ない、学会発表と論文執筆を行なう。
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