研究課題/領域番号 |
21K00925
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森 貴子 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10346661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | アングロ・サクソン期イングランド / 紛争解決 / 集会研究 / モラル・エコノミー論 / エアルドールマン / 独立農民 / 中世初期イングランド / 秩序維持 / モラル・エコノミー / 社会統合 / 中世初期イングランドの紛争解決 / 中世初期イングランド統合王国における地域 / アングロ・サクソン期イングランドの社会層 / 統治構造 / 裁判集会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、紛争解決事例の検討を通じて、特定の地域がイングランド統合王国に統合されていく力学を問うものである。 アングロ・サクソン末期の「国家」を高く評価する近年の議論は、王権による裁判を通じた統治を詳かにしてきた。しかしここには問題がある。在地における統治の担い手と王権との具体的な結びつきに関して、特定の地域を対象とした通時的研究が存在しないことである。そこで本研究では、かつての「フイッチェ人の王国」で、後にウスター司教座管区となった領域を、8世紀から11世紀という長期的観点から検討し、そこからイングランド統合王国における地域の位置付けとその統合過程を解明する。
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研究成果の概要 |
本研究は、中世初期イングランドの社会構造を、在地集会で紛争解決に参加する多様なアクターによる統合の過程として説明するところに特色がある。一年目は、王権と地域を結びつける役割を担った、エアルドールマンのアイデンティティに着目した。二年目は在地の秩序維持にとって重要であった「独立経営農民」を取り上げ、彼らを考察の俎上に載せるための研究手法を探った。最終年度はエアルドールマンなどの貴顕と農民とを繋ぐ鍵概念として、「モラル・エコノミー」論の有効性を探った。その結果、貴顕と在地住民に共通する価値観や互恵関係を視野に入れることで、ヒエラルキーの正当化および社会統合の背景を説明できる可能性が浮かび上がった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
アングロ・サクソン社会に関する近年の研究では、10世紀以降の「国家」形成が高く評価され、その中で、王権による集会を通じた統治に関心が寄せられてきた。これに対して本研究では、中世初期社会における秩序維持の特徴を、国家に代表される垂直的な権力と在地共同体による水平的な力が、相互補完的に機能する点にあるとの前提に立ち、地域による秩序維持機能のメカニズムを問うた。つまり集会を単なる上からの統治の手段として見るのではなく、王権と司教、エアルドールマンといった諸権力、そして在地住民に代表される地域が絡み合う場と理解し、従来の研究動向に欠けていた、社会構造の立体的・動体的把握を目指した。
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