研究課題/領域番号 |
21K00935
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
南 修平 専修大学, 文学部, 教授 (30714456)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | アメリカ史 / 海事史 / 労働史 / 第2次世界大戦 / 冷戦 / 大西洋史 / 便宜置籍船 / 海員組合 / 海員労組 / アメリカ海事史 / 第二次世界大戦 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は第二次世界大戦後におけるアメリカ・ニュージャージー州沿岸諸都市の変容を海と陸の双方から考察する。大西洋史に代表される海に立脚した研究が主に20世紀以前の時代を対象とするのに対し、本研究は冷戦下で海が諸国家間の激しい覇権争いの場となり、海をめぐる状況がそれ以前の時代とは大きく異なる20世紀後半を扱う。国家の利益が海により強く反映する時代に応じたアプローチとして、公権力の海事政策が強化される過程で急速に進んだ産業や人口の変化が、沿岸諸都市に暮らす人々にいかなる影響を与えたか考察する。そして、それらを通じて国内外のアメリカ史研究で課題とされてきた総合的な歴史の叙述を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は前年度に続き①20世紀アメリカ海事政策、②海員の生活世界、③ニュージャージー州沿岸諸都市に関する史資料調査の3つを主な取り組みとして設定した。今年度の取り組みでの大きな変化はコロナ禍で中断していた史資料調査の再開である。まず秋にニュージャージー州沿岸の主要都市であるジャージー・シティ、ベイオウン及びホーボーケンで史資料収集を行った。地元公共図書館が所蔵するコミュニティ、産業、人口などに関する史資料を集中的に集め、現地アーキヴィストからの献身的協力もあり、ほぼ必要なものを入手できた。続いて年度末にはエリザベスで調査を実施し、必要な史資料のリストアップを終えた。これらにより今年度の主要作業の一つである③では大きな進展があった。 収集した史資料については、各都市の地理や産業上の特徴、各都市間の関係を整理し、11月の研究会で報告した。また、①についてはこれまでに戦前期の考察を終えていたため、2022年度は戦後世界的に拡大した便宜置籍船の推移に焦点を当て、アメリカの冷戦戦略との関連に注意を払いながら考察した。 調査の再開と並んで研究上大きな成果となったのはアメリカ歴史家協会(OAH)を代表して来日したエリック・ルーミス氏との議論である。滞在期間中の氏によるレクチャーや、ホストとして全日程をアテンドする中で様々な議論を交わした。アメリカ労働史・環境史を専門とする氏の見識はアメリカ労働運動の最新情勢も包含しており、本研究のテーマでもある国家権力の伸長と日常生活の中で働く人びとが発現する保守主義の相関関係について多くの示唆を得ることができた。この他に書評2本を発表し、いずれも専門外の作品を扱ったため、本研究の視角を拡げることにつながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査を再開し、現地のアーキヴィストから様々な史資料の提供を受けたことで、ニュージャージー州沿岸の主要港湾都市に関する史資料収集の面では顕著な進展があった。そして、コロナ禍による中断で発生していた調査の遅れは大きく回復することとなった。また、収集した史資料を分析することによって、各都市の歴史、その地での代表的な産業や企業といった諸特徴を把握するとともに、近接しながらもそれぞれの都市が港湾地区で果たしていた役割の違いをクリアにすることができた。 これらの分析結果については、部分的ではあるが、研究会での報告などで形にしてきている。
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今後の研究の推進方策 |
当面の大きな課題はエリザベスでの調査の継続である。ニューヨーク/ニュージャージー港湾地区にとって、エリザベスにおける世界初のコンテナ専用ターミナルの開港は極めて大きなインパクトがあった。そのため、産業史的な面はもとより、人口動態や地元住民の日常生活など社会的な面での変化について詳細に把握するための史資料の入手は不可欠である。これについては今年度末の調査によって史資料の所在を確認できているため、次年度にエリザベス公共図書館での本格的な収集作業を実施する予定である。 これと並行して海員の日常生活についての詳細を明らかにする作業も進めていく。本研究の主要検討事項である20世紀アメリカ海事政策については、戦前から戦後へ考察を進めきた一方で、海員の日常生活に関しては戦後以降の検討が不十分であった。二つの世界大戦を経てアメリカ人海員の物心両面での変化が顕著であったことはこれまでの史料分析から明らかになっているため、今後の課題は新たに収集したコミュニティ及び海員組合の史資料の検討をさらに進め、そのことをより実証的に明らかにしていくことである。
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