研究課題/領域番号 |
21K00939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波部 雄一郎 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (60631984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ヘレニズム / ポリス / ギュムナシオン / エフェベイア / ネオイ / マケドニア / アッタロス朝 / ギリシア都市 / ローマ帝国 / 小アジア / ユダヤ / ペルガモン / ヘレニズム時代 / ギリシア / エフェボイ |
研究開始時の研究の概要 |
ヘレニズム・ローマ時代における東地中海の諸都市では、青年市民層がアソシエーションを形成し、都市の体育・軍事訓練機関であるギュムナシオンを中心に一定の影響力を及ぼしていた。本研究ではおもに各地から出土したギリシア語碑文から、青年市民層の活動を考察する。特にヘレニズム諸王国やローマと諸都市との外交交渉に果たした役割に注目し、同時代において外部勢力が諸都市に及ぼした影響を再考する。本研究の成果によって、この時期の東地中海世界の政治史に新たな視座をもたらすことができると期待している。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、マケドニア、小アジアに加え、エジプトを中心とするプトレマイオス朝の支配領域を対象として、ギュムナシオンを媒介とした王権と都市(ポリス)または、領民や地域社会との関係性について研究を行った。 マケドニアについては、昨年度に引き続き諸都市(ポリス)とアンティゴノス朝の関係において、ギュムナシオンが王朝軍隊の軍事訓練機関、さらに人材供給機関としての役割を果たしていたのか考察を行った。関連する史料として、マケドニアの都市アンフィポリス出土のギュムナシオンに関する碑文を分析した。それにより、アンティゴノス朝による諸都市やギュムナシオン支配の意図や、軍事力の供給機関と認識していたことを否定し、王朝のギュムナシオンへの関心は事実であるが、諸都市のギュムナシオンへの保護、支援を通して、都市との関係を強化する意図を持っていたことを明らかにした。次年度も引き続きアンフィポリス出土の他の碑文史料についても研究を継続する。 小アジアについては、アッタロス朝と諸都市について、ギュムナシオンを通した関係性を考察した。アッタロス朝による諸都市のギュムナシオン保護政策については、従来、王朝の軍事力育成を期待した政策と解釈されてきた。しかし、関連するギリシア語碑文を考察した結果、同王朝がギュムナシオンで使用される油の購入資金や運営費用を施与することで、ギュムナシオンの主要な利用者で将来の指導的市民層でもある青年市民層(Neoi)や市民の子弟(Epheboi)との関係を強化し、都市への影響力浸透を目的としていたことを明らかにした。 エジプトについては、ギュムナシオンを中心とした各地のギリシア系入植者の紐帯と、プトレマイオス朝の支配の関係性について調査した。さらに、同地におけるエジプト人のギュムナシオンへの関与を明確にするため、土着エリート層であるエジプト神官団に関する諸史料を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マケドニアと小アジアの諸都市を対象とするヘレニズム時代の事例については、令和5年度でかなり研究が進展した。ローマ支配期(前2~1世紀)のギリシア、小アジアについては、計画よりもやや遅れている。これは、ギュムナシオンや青年市民層に関するこの時期の資料が少ないため、計画の見直しを迫られたためである。そのため、研究成果の公表、総括もできなかったので、当初令和5年度までとしていた研究期間の1年延長申請を行った。 また、令和5年度にギリシア、トルコ、フランスで現地調査とし両調査を実施する予定であったが、諸般の事情で都合がつかず、実施することができなかった。そのため、使用予定の資料が入手できず、研究の進捗状況に影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ヘレニズム時代のマケドニアと小アジアの事例については、研究成果をまとめる段階まで進んでいるため、現在論文を作成しており、学術雑誌や紀要に投稿する予定である。アッタロス朝と小アジア諸都市の青年市民層との関係については、日本西洋古典学会第74回大会にて成果を報告する。 また、前2世紀から前1世紀のマケドニア、小アジアに関する都市青年市民層の動向については、地域全体の事例を把握することが困難であるため、計画を見直し、都市ごとの事例について考察を進める予定である。マケドニアについては近年アンフィポリスから発見された、エフェボイに関する規定を記録した碑文(前1世紀末)の考察を進めている。小アジアについても、特定の都市に焦点を当て、事例研究を進める。それによって、ヘレニズム諸王国(アンティゴノス朝、アッタロス朝)が都市に影響力を及ぼしていた時期と、ローマの覇権が確立された時期の、諸都市における青年市民層の役割の変化や諸都市の動向を明らかにすることができると考えている。 さらに、海外調査および海外研究期間での資料調査も、令和6年度中頃に実施する。当初は三年間でトルコ、ギリシア、フランスで三度の調査を予定していたが、計画を変更し、フランスとイギリスの研究期間での資料調査、トルコでの現地調査を実施する予定である。
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