研究課題/領域番号 |
21K00942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
水野 祥子 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40372601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | イギリス帝国 / 開発 / 環境 / 国際援助 / IUCN / 科学者 / ネットワーク / 自然保護 / 植民地科学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、イギリス帝国の植民地科学者が提唱した「エコロジカルな開発」、すなわち、現地の生態環境や社会を調査し、それに適合するように立案した開発が、いかにして脱植民地期の国際開発援助に影響を与えたかを明らかにするものである。まず、植民地科学者が、国連の専門機関やアメリカの開発援助機関の科学者、新興独立国の科学者を含めた新しいネットワークを形成する過程を検証する。次に、こうしたネットワークにおいて、植民地科学者の知がいかに循環し、再構築されたかを分析し、新たにつくりだされた開発思想が国際開発の方向性を変える要因の一つになったのではないかという仮説を立証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、前年度に引き続き、国際自然保護連合(IUCN)の活動内容およびネットワークを分析した。まず、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)との協力関係に注目し、1949年に両者が共催した「自然保護に関する国際技術会議」および1960年に合同で開始した「アフリカ特別プロジェクト」に関して、両者の人的交流と議論の中身を検証した。 さらに、IUCNが定期的に開催する技術会議の議事録・報告書の分析を通じて、フェアフィールド・オズボーンやウィリアム・ホークトらアメリカの有力な科学者、政策決定者と、エドガー・ワージントンやフレイザー・ダーリングなどイギリス、フランス、ベルギーなどの植民地科学者との間でネットワークを形成するのにIUCNが重要な役割を果たしていたことが明らかになった。開発と環境をめぐるかれらの議論は時に矛盾し、対立することもあった。しかし、1940-50年代に構築されたこれらのネットワークによって国際開発と環境保護との関係が活発に議論されるようになり、1960年代末に環境が国際開発援助のあり方を規定するファクターの一つとなる前提をつくりだしたと考えられる。また、1968年の二つの国際会議―「国際開発のエコロジカルな側面に関する会議」および「生物圏における資源の合理的活用と保全の科学的根拠に関する政府間専門家会議」―の準備にIUCNと保全基金(Conservation Foundation)が関与していたことも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的まん延が終息していなかったため、2022年度夏季休業期間中に予定していた海外資料調査は中止した。事態が好転した2023年3月にはイギリスの大英図書館で資料調査を行い、IUCN Technical Meetingに関する一次資料などを閲覧した。
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今後の研究の推進方策 |
IUCN、UNESCO、FAOの文書館で資料調査を行い、相互の協力関係を明らかにする。同時に、イギリス植民地で生まれた知が1960年代の開発援助にいかなるインパクトを与えたのかを検討する。さらに、アメリカの保全基金のネットワークと国際開発援助のあり方を把握するために、アメリカ国立公文書館所蔵の関連文書の調査にあたる。また、The Fourth World Congress of Environmental Historyで報告するための準備を行う。
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