研究課題/領域番号 |
21K00942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
水野 祥子 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40372601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | イギリス帝国 / 開発 / 環境 / 植民地科学 / アフリカ / 土壌 / ネットワーク / 国際援助 / IUCN / 科学者 / 自然保護 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、イギリス帝国の植民地科学者が提唱した「エコロジカルな開発」、すなわち、現地の生態環境や社会を調査し、それに適合するように立案した開発が、いかにして脱植民地期の国際開発援助に影響を与えたかを明らかにするものである。まず、植民地科学者が、国連の専門機関やアメリカの開発援助機関の科学者、新興独立国の科学者を含めた新しいネットワークを形成する過程を検証する。次に、こうしたネットワークにおいて、植民地科学者の知がいかに循環し、再構築されたかを分析し、新たにつくりだされた開発思想が国際開発の方向性を変える要因の一つになったのではないかという仮説を立証する。
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研究実績の概要 |
1950年代にイギリス、フランス、ベルギーなどアフリカ植民地保有国の間で構築されたアフリカ農業開発のための領土横断的な科学者ネットワークを検証した。なかでも、アフリカ土壌局(Bureau Interafricain des Sols et de l'Economie Rurale: BIS)とアフリカ土壌部門(Service Pédologique Interafricain: SPI)、土壌保全と土地利用に関するアフリカ地域委員会(African Regional Committees for Soil Conservation and Land Utilization)に注目し、土壌調査と土壌保全を農業開発の前提条件とする植民地科学者のコンセンサスを明らかにした。これについてイギリス植民地省は概ね肯定的に評価したが、アフリカの各植民地政府は主にコスト面から批判的であったことが確認された。 さらに、こうした植民地科学者による開発のアプローチとアフリカの新興独立国や国際開発機関の科学者のスタンスとの相違点を明確にするために、1963年に開催された「低開発地域のための科学技術の応用に関する国連会議(United Nations Conference on the Application of Science and Technology for the Benefit of Less Developed Areas)」を分析した。その結果、アフリカの生態環境および農村社会に対する認識や農業開発の方向性について両者の間でかなりの違いが見られ、新興独立国や国際開発機関の代表者は農業の機械化や化学肥料の使用を推進する傾向がより強いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19のまん延により、2021年と2022年に予定していた海外調査を断念した。2023年から大英図書館やイギリス国立公文書館、UNESCO文書館等で一次史料の閲覧を始めたが、さらなる一次史料の収集と分析のための時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
アフリカ植民地が独立した後も国際開発援助に重要な役割を果たしたイギリスの植民地科学者に関する一次史料の調査を行い、現地の生態環境や土地利用に対する見方や、農業開発と資源保全のアプローチなどの特徴を明らかにする。自然史博物館図書館所蔵のレスリー・ブラウン関連文書、キューガーデンズ図書館のC・G・トラップネル関連文書、イングランド農村生活博物館所蔵のP・H・ナイとD・J・グリーンランド関連文書、オクスフォード大学図書館所蔵のロジャー・スウィナートン関連文書などを閲覧する予定である。また、アメリカ国立公文書館で保全基金(Conservation Foundation)によるアフリカの資源保全活動について調査し、植民地科学者との関係性を検証する。
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