研究課題/領域番号 |
21K00958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
及川 穣 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (10409435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 黒曜石 / 黒耀石 / 隠岐諸島 / 中国山地 / 後期旧石器時代前半期 / 美田小向遺跡 / 小林河原遺跡 / 台形様石器 / 後期旧石器時代 / 現代人的行動 / 海上渡航 / 現生人類 |
研究開始時の研究の概要 |
アジア海域に初めて到達した現生人類はどの様に新天地適応を果たし定着に成功したのか、その文化特性は何か。いかなる社会関係を築いて成し遂げたのか。この問いの解明のため、海上渡航と往還を果たした具体的証拠として5~3万年前に島嶼環境であった隠岐黒曜石原産地を位置づける。本研究では、山陰~中国山地を対象とし、島嶼環境の原産地の開発状況と利用した先である消費地での分布状況とを総合的に理解し、人類の資源開発行動モデルを構築する。最後にそれを担った遠征者集団の行動領域と運搬ルート、各地域間を結ぶ人的な結合関係パターンを抽出し、これらを形成した社会的動機と技術的系譜について時系列に沿って歴史的な評価を与える。
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研究実績の概要 |
日本列島やアジア海域に初到達した現生人類は、どの様に新天地への適応を果たし定着に成功したのか、その文化的特性は何か。いかなる社会的関係を築いてそれを成し遂げたのか。この問いに応えるため、海上渡航と往還を果たした具体的な証拠として隠岐黒曜石原産地を位置づける。ある土地への定着の過程は石器石材資源の開発の結果として各遺跡に残された石器群の内容に表れるため、道具の製作・運用構造から具体的に明らかにする。山陰~中国山地を対象とし、島嶼環境の黒曜石原産地の開発状況と利用した先である消費地遺跡での分布状況とを総合的に理解し、人類の資源開発行動モデルを構築する。課題達成のため3つのサブテーマを明らかにする。 令和4年度はまずサブテーマA:「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」について研究成果をまとめた。特に島根県西ノ島町美田小向遺跡出土石器群の分析について中国山地の消費地との比較のための項目を整理した。次に、サブテーマB:「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」について各遺跡出土石器群の法量分析について整理し、サブテーマAの成果と合わせて、原産地から消費地までの石器製作工程の相互補完関係を明らかにし、黒曜石消費の行動パターンを考察した。成果については査読付き論文として投稿した。 また、消費地遺跡のうち、黒曜石原料の搬入地・素材生産遺跡として位置づけた小林河原遺跡について、発掘調査を実施した。石器群の確実な包含層序と分布範囲の把握に加え、年代測定分析とテフラ分析、OSL年代測定分析を実施し、石器群の年代と古環境の復元を目的とした。現在、各種分析結果を待っている状況であるが、石器群に伴う炭化材の樹種同定結果からは温帯性の気候を示すことが捉えられた。寒冷な気候であった最終氷期最寒冷期よりも比較的温暖な気候であったことが予測された。本成果は令和3年度のその他遺跡での分析結果を裏付けることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブテーマA:「黒曜石原産地の開発、獲得状況の解明」a)原産地情報の基盤構築、b)獲得状況の分析、およびサブテーマB:「消費地遺跡での黒曜石利用状況の解明」①製作技術分析。②理化学的各種分析、③遺跡類型化についてそれぞれ完了し、研究成果を得ることができ、当初予定の通りにサブテーマを進めることができた。 また、サブテーマC:黒曜石の獲得者の特定と行動モデル構築のための情報をまとめることができ、次年度(最終年度)の準備を整えることができた。 これらの成果について、当初の予定通り、学会発表と査読付き論文として公表できたた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和5年度は、C:黒曜石の獲得者の特定と行動モデル構築(原産地からの運搬場所としての特徴を抽出・類型化)として、特に小林河原遺跡の発掘調査成果についてまとめる。 黒曜石原料の搬入地・素材生産遺跡として位置づけた小林河原遺跡について、昨年度実施した発掘調査成果と今年度実施する発掘調査の成果を統合し、まとめる。石器群の確実な包含層序と分布範囲の把握に加え、年代測定分析とテフラ分析、植物珪酸体分析、OSL年代測定分析の成果をまとめ、石器群の年代と古環境の復元を目指す。 また、サブテーマAとBの成果を総合化し、査読付き論文として投稿する予定である。また、海外の学会発表や査読誌にも挑戦し、国際的な情報発信にも努めたい。
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