研究課題/領域番号 |
21K00960
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
堤 隆 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (70593953)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 浅間火山 / 火山災害遺跡 / 天仁元年の噴火 / 天明三年の噴火 / ヴェスヴィオ火山 / ソンマ遺跡 / アウトリーチ / 浅間山南麓 / 火山災害考古学 / 旧石器時代 / 天仁元年(1108)浅間山噴火 / 天明三年(1783)浅間山噴火 / 浅間山噴火絵図 / 浅間火山南麓 / 火山災害 / 火山灰 / 火砕流 / 原始・古代集落遺跡 / 石器群 / 噴火年代 |
研究開始時の研究の概要 |
「浅間山南麓の火山災害考古学序論」とした本研究では、活火山浅間山が地域の人々や社会に与えた影響について(特に南麓の長野県側において)、以下の4点の解明をもって、研究の概要としたい。 1 浅間火山の噴火年代の推定:先史~古代の噴火の年代測定の推進 2 火山災害遺跡の発見と検証:とくに火砕流被覆地域による災害遺跡の確認 3 災害の概要の把握と過去の社会への影響想定 4 把握された過去の火山災害状況の市民への周知:講座・講演会等
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研究実績の概要 |
「浅間山南麓の火山災害考古学序論」は、浅間山北麓に比べ、解明の進んでいない南麓長野県側の火山災害史を考古学的な手法を中心に火山学や文献史学の成果も取り込んで明らかにするスタート研究である。2020・2021年は新型コロナで満足に活動が実施できず、2022年度より本格的な活動を始動、2023年度は以下のとおり実施した。 1:2023年度は、浅間天明噴火に関する最も精緻な記録といわれる『天明雑変記』上・中・下3巻を所蔵者の藤森美智子氏より特別に借受け、複写および読解作業を行った。同文書では、天明噴火の火山現象・南北麓の罹災状況・災害後の復興の様子が克明に記載されており、災害実態が再認識できた。また、個人蔵史料である『天明雑変記』の事故(火災・風水害等)の危険性を避けるため、やんば天明泥流ミュージアムへの寄託展示などを調整し、現在展示中である。 2:浅間山北麓の嬬恋村で行われた鎌原地区火山災害遺跡の発掘調査に参加し、天明3年の鎌原土石なだれによる被災痕跡の考古学的調査を行った。鎌原土石なだれの堆積物の状況やその被覆下の畑地などのあり方を実見した。 3:第2回目の浅間火山フォーラムを23年6月実施した。ヴェスヴィオ火山の噴火災害で被災したポンペイやソンマ遺跡の研究の泰斗青柳正規氏(東京大学名誉教授・元文化庁長官)に基調講演を戴き、堤も天明3年の浅間火山災害等に関する研究報告を行った。 4:火山災害考古学の先進地イタリアのヴェスヴィオ火山山麓の火山災害遺跡であるソンマ遺跡の発掘調査に参加し、AD79年噴火の火砕流の被災遺構を検出、火山災害遺跡の発掘調査の方法論を探求した。 5:アウトリーチ活動として小学生の火山実験教室を林信太郎秋田大学名誉教授により8月に実施、また堤は、浅間火山災害の普及講演を6月・10月・11月・12月に実施、火山災害考古学研究がどのように市民に益するかの試みとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度においては、研究実績の概要で前述したように『天明雑変記』など文献資料の読解などの作業、およびその記録保存化を行い、一定程度の進行をみた。 また、火山災害考古学先進地イタリアのヴェスヴィオ火山山麓における火山災害遺跡ソンマ遺跡の発掘調査に加わり、AD79年の火砕流被災遺構を検出、火山災害遺跡の発掘調査の方法論も含めて研究を進めることができた。 本研究の主題は、「浅間山南麓の火山災害考古学序論」であり、浅間山南麓である長野県側において従来未発見であった火山災害遺跡を確認し、考古学的手法からその火山災害史を論ずる糸口を探るための序論を展開することが、大きな目的のひとつである。 現在、浅間山南麓の火山災害遺跡発見のための踏査を、、佐久市の北東部や御代田町・軽井沢町などを中心に実施している。しかし、これまでその発見が皆無であったその現状が示すとおり、火山災害遺跡の発見は一筋縄ではいかない状況にある。国際都市軽井沢で別荘地などの居住民に配慮した野外活動の困難さを伴う部分もあった。「やや遅れている」としたのは、火山災害遺跡の究明が踏みとどまっている状況を示している。 一方、これまで火山災害絵図や古文書の研究、フォーラム開催などによるアウトリーチ活動など、野外遺跡調査とは異なる切り口で、その災害相を究明し、世に問うてきたてきた経過があって、こちらは一定の進展をみせている、というのが現在までの進捗状況である
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関しては、積極的に火山災害遺跡の発見や災害考古学的議論およびアウトリーチを展開したく、以下の4点を主軸に据えて推進を図りたい。 01:火山災害遺跡や同時代遺跡の確認に向けての調査の推進:軽井沢地域を中心に佐久市北部域なども含め、野外調査を加速させ、難題ではあるものの火山災害遺跡の発見に務めたい。その際は地元住民への配慮を保ちながら調査を進める。発見の際は、その遺跡の地域史的位置付けへと前進させる。 あわせて火山災害期と同時代の遺跡調査を進め、南麓の地域社会の生活や経済のあり方を究明する。 02:火山災害絵図・古文書の研究とデジタルアーカイブ化の推進:前年度に引き続き浅間山の火山災害絵図・古文書の読み解きと高解像度デジタル撮影によるアーカイブ化を推進し、貴重な古記録の保存に努める。あわせて、その所蔵者の了承を得た上で、古記録を展示する企画展示を計画し、論文化・資料化(図書化)も図りたい。 03:古記録(文献)と遺跡様相との比較検討:古記録の記載を精査し、検出遺跡との様相の比較研究を行う。古記録(文献)はとかく主観的だったり、誇張や誤記などのバイアスが生じるため、この点について考古学的記録(遺跡様相)との比較研究を行う。 04:広く列島を縦断した火山災害に関する研究集会の開催を予定し、その成果を考古学研究者と共有するとともに、市民一般へと還元するアウトリーチ活動(普及講演会等)を展開する。
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