研究課題/領域番号 |
21K00968
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿子島 香 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (10142902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | プロセス考古学 / 考古学アーカイブス / ビンフォード / ミドルレンジセオリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、アメリカのプロセス考古学と、伝統的な日本考古学との間に存在してきた相違を、学史的に分析し、両者の融合を現実化する具体的な枠組みを探求する。理論と方法論の比較研究を通して、日本考古学を世界的に発信していくための方策を研究する。プロセス考古学の泰斗ビンフォードの著作の日本語訳を進める。アメリカ考古学の学会の現状を整理する。日本考古学の歴史的探求は、東北大学考古学研究室の学史的史料の研究を行う。東北大学考古学アーカイブスとして順次公開していく。
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研究実績の概要 |
本課題においては、アメリカを中心に発達したプロセス考古学と、伝統的な日本考古学との間になお存在する理論的方法論的な大きな差異を軽減し、国際的にも高水準にある日本考古学の発掘調査および資料分析法を、世界の歴史理論および人類学理論の中に的確に位置付けていくことを目指しており、今年度も継続研究として具体的分析を進めた。両国理論の差異の認識および総合の可能性が顕在化する領域を選択して、比較考古学の立場から学史的検討を行い、日本列島の資料を考察している。Modern Human Behavior の検討は、東北地方の後期旧石器時代の遺跡構造と技術組織論から、人間集団の適応戦略について考察した。ビンフォードによる民族考古学的なフォレイジャーとコレクターの概念、石器群の技術組織論などを、東北地方の先史考古学に応用した。Hunter/gatherer to Agriculture の検討は、宮城県北部の縄文晩期から弥生前期にかけての基幹集落、大崎市北小松遺跡の周辺を検討し、ボーリング調査により植物遺体分析を実施した。Social Stratification and Complex Society については、亀ヶ岡文化の内容、東北中南部の弥生から古墳時代を、理論的に検討している。アメリカ新進化主義人類学は理論的支柱である。東北大学に収蔵されている学史的資料から日本考古学の特性を考察する部分は、考古学アーカイブス化を念頭に、資料・史料の整理を進行させている。名誉教授伊東信雄氏による旧樺太の調査資料(1933年、34年)について、学会発表している。東北地方の考古学をプロセス考古学の脈絡で読み解くことで、多くの問題提起がある。その一部は、研究代表者の本務である東北歴史博物館の市民講座で論じることで、同館HPのオープンアクセスPDFにより社会的還元を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本務である東北歴史博物館館長の職務と、本研究課題の実施との時間的調整を図るため、週休日、年休等を活用して、本課題の方法論的理論的分析を進めることができた。本研究課題関連の機会確保に、学会出席、研究会参加を同様に行うことができた。日本考古学の理論的研究史と研究水準を示す図書を購入し検討に加えた。アメリカ考古学会の文献研究を進めた。両国考古学の理論的融合を目指して、焦点を絞り比較考古学的視点で進める過程にある。後期旧石器時代の人類集団の適応様式、狩猟採集社会の生産様式、農耕社会への変動、首長制社会から国家形成へのメカニズムなど、視点を明確化することで、両国考古学の総合化を目指している。その中で、実際の研究史をたとり、考古学の日本的特色を抽出するアーカイブス研究の部分は、時間的限定の中で進行を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
日本考古学史の特色を抽出するアーカイブス研究については、東北大学文学研究科考古学研究室の現職教員の全面的な協力を得ているので、引き続き標本収蔵施設にある第1次資料を用いた検討を進めていく方策である。プロセス考古学の理論的視点を東北地方の先史考古学に適用していくための具体的方策として、狩猟採集社会と初期農耕社会との両者が交差する文化的過程を対象として進める。そのため昨年度に引き続き、宮城県大崎市北小松遺跡周辺の遺跡群を広域的に検討し、東北歴史博物館企画部の小野章太郎氏を研究協力者に依頼し、同博物館考古学分野と連携してボーリング調査を実施する予定である。縄文文化と弥生文化の相互関係のプロセス考古学的理解を進めるため、長年の蓄積資料を総合的に考察する方策をとる。両国考古学の理論的視野の検討深化のため、引き続き必要文献資料を購入する方策とする。
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