研究課題/領域番号 |
21K00981
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
小野塚 拓造 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90736167)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ゼロール / エジプト新王国 / アッシリア / 土器 / レヘシュ / 青銅器工房 / テル・ゼロール / 古代イスラエル / イスラエル王国 / キプロス / パレスチナ / ローマ帝国 / 辺縁 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、古代の覇権主義的な強国がパレスチナ沿岸地域の在地社会にどのような影響を及ぼしたのか、在地社会は外来勢力に対してどのように反応したのか、といった問いに通史的にせまることで、古代西アジアに形成された領域国家や帝国についての理解を深める。同地域の典型的な集落址であるゼロール遺跡の出土資料を手がかりに、地域の古代史を復元し、外来の覇権主義勢力の動向について実証的に検討する。2021年度は国内で調査記録の整理を進め、2022年度、2023年度には、イスラエル考古局で資料調査を実施し、テゼロール遺跡の出土物の整理と分析を実施する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、パレスチナの沿岸地域を事例に、古代西アジアに形成された領域国家や帝国についての理解を深めることである。覇権主義的な強国がパレスチナの在地社会にどのような影響を及ぼしたのか、在地社会は外来勢力に対してどのように反作用したのか、といった「問い」に通史的にせまり、古代西アジア史の新たな一面の叙述を試みる。 2023年度も昨年に引き続き、ゼロール遺跡の調査記録(図面、調査日誌、現場写真など)と出土資料の整理、デジタル化作業を進めた。その過程で、1)同遺跡に後期青銅器時代の居住地が建設された年代が従来考えられてきた時期よりもやや遅い前15世紀末葉であること、2)エジプト様式の土器が事前調査で把握していた以上に多く散見されることを、新たに確認することができた。同遺跡が所在するシャロン平野が前14~前13世紀にかけてエジプト新王国の影響下にあった可能性を指摘できる点で重要な成果となった。 また、別のプロジェクトで取り組んでいたレヘシュ遺跡の出土物の整理作業において、同遺跡で鉄器時代末期(前7世紀頃)に粗末な集落が営まれていたことを確認する機会があった。こうした考古資料は、アッシリア帝国支配下の一般的な村落の生活や物資の流通の一端を示すものとして貴重であるため、本研究課題の一部として検討を進めることとした。さらに、ローマ帝国の地中海東岸地域への影響について探る目的で、イスラエルのガリラヤ地方の諸遺跡や、ネヴェヴ地方のナバテアの都市遺跡などを巡検する関連調査を実施した。 今年度の調査研究によって得られた新知見は、いずれもエジプト新王国、アッシリア帝国、ローマ帝国の直接的、間接的影響に対する在地社会の動向を示す材料となるもので、古代西アジア史をより多面的に描くための意義のある研究につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、ゼロール遺跡の調査記録の整理とデジタル化、土器図面のトレース作業を、研究協力者の助力を得ることで継続的に進めることができた。その中で、同遺跡の後期青銅器時代の居住史の大枠を把握し、在地の物質文化にエジプト新王国の影響が予想よりも顕著に見られることを確認できた。そのほか、アッシリア帝国やローマ帝国のパレスチナへの進出に関連する事例研究にも着手することができた。したがって、本研究は概ね順調に進展していると捉えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も、ゼロール遺跡の調査記録の整理とデジタル化を継続し、同遺跡の居住史の復元に取り組む。同時に、これまでの資料整理から見えてきた興味深い事例、すなわちエジプト新王国のゼロール遺跡への進出、アッシリア帝国支配下の村落の実態、ローマ帝国の進出と在地社会の変化についてさらに研究を進め、古代パレスチナの在地社会がどのように覇権主義勢力に反応したのかというテーマについて通史的に検討するとともに、個々の研究成果を論考として発表できるようにまとめる。
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