研究課題
基盤研究(C)
本研究では歯石ゲノムを対象とした新規の古ゲノム分析手法を開発し日本列島人の穀物利用の歴史、その遺伝的背景の変遷を詳細に明らかにする。縄文から江戸時代にかけての歯石のDNA分析により、主要な穀物と考えられているイネ、アワ、キビ、ヒエの利用の有無およびその遺伝的多様性を調べ、各時代における日本列島人の穀物利用を考察する。利用されていた品種群や食味、色、収量や植物の背丈、出穂期、耐病性等の栽培において重要な形質について、現代のゲノム多様性情報および農業形質関連遺伝子の情報に立脚した古ゲノム解析を行うことにより詳細に解明し、古代の人々が利用した穀物の種類、特性、その変遷や農耕生活の理解を目指す。
本研究は、歯石ゲノムを対象とした新規分析法を開発することにより、日本列島人の穀物利用の歴史の解明に取り組んだ。まず人骨試料からのサンプリングによる広範な古代歯石コレクションの構築を行った。これら試料からのDNAを抽出と次世代シーケンサーをもちいたゲノム解析のための技術開発をおこなった。DNAメタバーコーディング法による網羅的な食性の解明のための、精緻な情報解析手法を開発し、歯石試料への適用により古代の人びとの食性情報の取得に成功した。また、これまで困難であったイネ科の穀類を分類可能なマーカーを独自開発しイネ科雑穀の同定に成功するなど、歯石DNAの分析による食性研究を大きく前進させた。
古代の人びとの生活を知ることは、人類学や考古学の根幹をなす興味であり、さまざまな手法がもちいられてきた。我々は近年注目されはじめた歯石DNAの解析手法を開発し、日本列島の古代の人びとの食性の歴史を明らかにするための基盤を構築した。特に考古遺物として残りにくい植物性の摂食物に着目し新しい知見を得た。作物や野生植物の利用は環境条件や農工技術と共に時代とともに変化してきたはずであり、これらを知ることはこれからの我々の環境変動への適応やレジリエントな社会とは何かを考える上でも役立つことが期待される。
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PloS one
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