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古墳に埋葬された鉄製文化財の腐食は予測可能か?-数値解析による現地保存評価の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21K00998
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分03060:文化財科学関連
研究機関独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所

研究代表者

柳田 明進  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究員 (30733795)

研究分担者 小椋 大輔  京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワード出土鉄製文化財 / 古墳 / 現地保存 / 腐食 / さび / 交流インピーダンス / 数値解析 / 文化財保存 / X線CT / 画像解析 / 鉄製文化財
研究開始時の研究の概要

本研究では、古墳を模擬した土中空間において実施した腐食実験の結果に基づき、石室での鉄製文化財の腐食をモデル化し、石室内の物理環境を外界条件として石室内の鉄製遺物の腐食を数値計算により予測する技術を開発する。また、実際の鉄製文化財に則したモデルに改良するために、出土鉄製文化財の腐食層の厚みや空隙率などの物性をX線CTにより収集し、腐食層の影響を取り入れた腐食モデルを確立する。本研究の成果により、従来、経験による推測の域を出なかった古墳副葬品の現地保存の可否の判断を、科学的なデータに基づいて推定することが可能になる。

研究実績の概要

令和5年度は、古墳石室内での鉄製文化財の腐食モデルを構築するため、1)乾湿繰り返し腐食実験、2)乾湿過程における腐食のモデル化、3)古墳出土さび層片の組成および構造解析、を実施した。1)乾湿繰り返し腐食実験では、砂質土を充填したカラムの下端に炭素鋼の電極を設置し、カラム内の砂質土を水分飽和から乾燥させていき、その後、水分を供給し飽和状態とすることで乾湿を繰り返した。この際、2電極法による交流インピーダンス測定から溶液抵抗および分極抵抗を算出することで、砂質土の乾湿を繰り返す過程での腐食速度をモニタリングした。その結果、湿潤時の腐食速度は乾湿の回数が増加するごとに上昇する傾向が認められた。腐食によって形成されたさびの還元反応が生じることで腐食速度が増加する可能性が示された。2)乾湿繰り返し過程の腐食のモデル化では、腐食実験の結果に基づき、腐食によって形成されたさびの還元を考慮したモデルとして、さびに含まれるγ-FeOOHの還元反応を考慮したモデルを構築した。3)古墳出土さび層片の組成および構造解析では、国内の異なる2基の古墳から出土した鉄製文化財のさび片を対象とし、μ-X線CT、窒素・水蒸気吸着法による構造の解析およびクロスセクションのXRF、μ-XRDにより組成の分析をおこなった。その結果、さび層内は内部に高密度のさびが層状に存在し、細孔は主にマイクロ孔から構成されていることから、物質移動の抵抗として作用すると考えられた。また、さび層は主にα-FeOOHおよびFe3O4から構成されており、さび層中のγ-FeOOHの還元による腐食促進の可能性は低いと考えられた。得られた成果については、学術雑誌および日本文化財科学会などで学会発表をおこない公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

古墳石室内での鉄製文化財の腐食のモデル化の過程で、土中での乾湿繰り返し環境下での腐食に関して新たな実験の実施が必要となった。そのため、令和5年度に乾湿繰り返し環境下での腐食実験を行い、そのデータを取得した。このため、当初の予定より研究の進捗はやや遅れている状況ではあるが、研究は着実に進展していおり、乾湿の繰り返し過程における腐食の挙動の把握、そのモデル化まで完了した。また、厚いさび層を有する鉄製文化財の埋蔵時の腐食をモデル化するためには、さび層の物性取得が不可欠であり、令和5年度には古墳出土さび層の組成、構造に関する一連のデータを取得することができた。室内実験から得られた腐食モデルとさび層の物性を考慮したモデルを構築することで、古墳石室内に埋葬された鉄製文化財の腐食を数値解析によって再現する技術を開発する本研究の目的が達成されると考えられる。

今後の研究の推進方策

令和6年度はこれまでに取得した腐食実験データ、および、古墳から出土した鉄製文化財のさび層の物性データを統合して、古墳石室内での鉄製文化財の腐食速度を数値解析によるシミュレーションにて再現する。既に構築したさび層を伴わない炭素鋼の腐食速度シミュレーションのプログラムを基本とし、新たにさび層による酸素、鉄(II)イオンの物質移動抑制の効果を考慮したものとする。シミュレーションの妥当性の検討は模擬実験の腐食実験の結果と比較することで実施する。これらの技術により、古墳石室内に埋蔵された鉄製文化財の腐食速度の予測技術を確立する。また、得られた成果については学会発表、学術論文への投稿を行い、広く公表する予定である。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 埋蔵時の腐食と発掘後の劣化特性 から検討する金属製遺物の保存2024

    • 著者名/発表者名
      柳田明進
    • 雑誌名

      文化財科学

      巻: 88 ページ: 50-64

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 遺跡出土鉄製品の保存と活用の最前線2024

    • 著者名/発表者名
      柳田明進
    • 学会等名
      2023年度北海道・東北保存科学研究会例会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 埋蔵環境が出土鉄製文化財の腐食状態に及ぼす影響 -平城宮跡および鷹島海底遺跡での調査を例に2024

    • 著者名/発表者名
      柳田明進
    • 学会等名
      ナチュラルアナログワークショップ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 平城宮跡出土鉄製文化財の腐食状態に及ぼす埋蔵環境の影響2023

    • 著者名/発表者名
      柳田明進, 脇谷草一郎, 和田一之輔
    • 学会等名
      第70回材料と環境討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 鉄製遺物の発掘後の劣化特性に及ぼす埋蔵環境の影響 -平城宮跡出土鉄製遺物の悉皆的調査と非破壊分析による検討2023

    • 著者名/発表者名
      柳田明進, 脇谷草一郎, 和田一之輔
    • 学会等名
      日本文化財科学会第40回記念大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Deterioration Tests Using Simulated Tumulus to Evaluate In Situ Preservation of Metal Artifacts in a Stone Chamber2022

    • 著者名/発表者名
      Akinobu Yanagida, Soichiro Wakiya, Huarong Xie, Daisuke Ogura, Nobumitsu Takatori, Hiroyuki Yasui, Shuichi Hokoi, Yohsei Kohdzuma
    • 学会等名
      ICOM-CC Metal2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 埋蔵時の鉄製文化財の腐食を支配する土中溶存酸素の挙動に関する検討 ―マイクロ酸素センサを用いた溶存酸素拡散層の実測2021

    • 著者名/発表者名
      柳田明進, 脇谷草一郎, 髙妻洋成
    • 学会等名
      材料と環境2021
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] Deterioration Tests Using Simulated Tumulus to Evaluate In Situ Preservation of Metal Artifacts in a Stone Chamber2022

    • 著者名/発表者名
      Akinobu Yanagida, Soichiro Wakiya, Huarong Xie, Daisuke Ogura, Nobumitsu Takatori, Hiroyuki Yasui, Shuichi Hokoi, Yohsei Kohdzuma
    • 総ページ数
      9
    • 出版者
      ICOM-CC
    • ISBN
      9782491997618
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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