研究課題/領域番号 |
21K01018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
野津 雅人 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特任研究員 (30510432)
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研究分担者 |
松本 淳 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (80165894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 降水 / 季節変動 / 島嶼気候学 / 地上気象観測 / 衛星観測データ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
伊豆諸島は 3 月の雨のピーク、小笠原諸島は盛夏期における少雨といった、日本の他の地域では見られない降水季節変化の特徴を示す。本研究ではこのような伊豆・小笠原諸島における降水の季節変化に着目する。 まず、長期観測データを用いて季節変化の特徴を明らかにする。また、気象庁観測点以外に測器を設置し、降水・気温・風などの気象要素の島内における詳しい分布を調べる。地上観測と合わせて、ドローンを用いて上空の気温・湿度・風を計測し、気象要素の島内分布を立体的に理解する。さらに、衛星観測データ等を用いて、日本の南海上で盛衰移動する対流降水システムの中で両諸島の雨とその季節変化を位置づけ、理解する。
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研究実績の概要 |
30 年間平均の気候値で,伊豆諸島は梅雨期と台風期に加えて3月に水害を起こすレベルの降水量を伴う3つめの降水ピークをもち,小笠原諸島は7月に渇水を起こしうる降水極小をもつ.本研究は,「これらの降水季節変化の特徴は何か? その特徴をもたらす要因は何か? それらは,日本の南海上の 1, 000 km スケールの降水システムの中でどう位置づけられるか? 小スケールの島の地形要素にどう左右されるか?」という学術的問いに答えるため,以下にあげる目的を達成するために行われている.その目的は(1)降水の季節変化の特徴を明らかにし,(2)この特徴をもたらすメカニズムを(a)周辺の広い海域を含めた降水対流活動の中での伊豆・小笠原諸島の位置づけという「大きなスケール」,(b)海域に孤立した島という険しい地形の効果という「小さなスケール」に着目して理解する,ことである.
2022 年度は,2021 年度に降水計を設置した伊豆諸島における独自の現地降水観測を継続した.また,伊豆諸島におけるドローンを用いた気象場の立体観測に向けて,模擬観測を行い,新規に導入したドローンの操作の習熟,地上観測との連携および運搬体制の確認を実施した.また,当初計画にはなかった既存観測データを使用することとなった.
このうち,気象庁による地上レーダ観測を元にした降水量データセットである解析雨量データを用いて,伊豆諸島周辺海上における降水の季節性を解析し,衛星降水観測データのパフォーマンス解析を行った.その結果,衛星降水観測データは本州の南岸沿いの海上では季節変化解析に堪える精度を持つことが分かった.気象庁解析雨量データは地上レーダの設置場所から遠い伊豆諸島南部では精度が落ちること,また,地上降水観測を用いた補正が十分に働かないことから,衛星降水観測データに一定の精度が確認されたことは本研究にとって望ましい結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」と評価した.その理由を以下に述べる.まず,解析課題においては,データ取得の都合上予定通りに進んでいない項目もあるが,2023 年度に挽回が可能と考えている.また,観測課題においては順調に現地における独自の降水観測を進めており,ドローンによる気象場の立体観測の準備が整っている 2023 年度に現地での観測が可能と考えている.他には,当初計画にはなかったが,本研究計画の目的を達成もしくは先取りに貢献しうる以下の研究および解析に着手している.
理化学研究所のラケシュ・テジャ・コンジュール氏による屋久島における降水と周辺の海水温および海流の季節変化に関する研究を共同研究として進め,本科研費研究の一部に組み入れることとした.また,東京都港湾局および古野電気株式会社が八丈島において独自に進めていた X バンドレーダ観測データの提供を受けた.このデータを用いた八丈島周辺での数キロメートルスケールでの降水の動態解析も進めていく予定である.
本研究課題で行われるドローン観測に関して,研究課題の前提として行った過去の日中 8 時間にわたる観測を紀要論文としてまとめ掲載された.本研究課題で当初予定にあげた解析項目についての結果もまとめた上で,学術誌へ投稿するための準備も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2021 年度は新型コロナウイルス状況による大きな制限を受けて,本研究では測器や観測機器の設置や入手の面で当初計画通りの進展ができず,解析および観測機器の入手計画に大きな変更を余儀なくされている.2022 年度も制限が完全になくなったわけではなく,2023 年度も不透明な状況が続くと考えられる.したがって,今後も,研究計画を全体として達成するために,フレキシブルに研究計画や内容を変更しながら進めていく予定である. 解析については,当初予定になかった気象庁解析雨量データを用いた衛星降水観測データの評価を行った.2022 年度中に予定されていた解析の一部が完成していないため,2023 年度は, 2022 年度にできなかった部分を中心に進めて行く. 新規に導入した耐水ドローンは,測器を搭載しての観測が十分に可能であることを確認した.しかし,姿勢制御情報による上空の風の推定が容易でない機種である.したがって,姿勢制御情報による上空の風の推定が可能なものを導入する予定である.ドローンに関する予算の見直しで生じた余裕資金を用いて,本研究計画以後を見据えた,追加的な地上測器設置を進める予定である. 伊豆諸島における観測地点の環境現地調査において,他の機関や企業が気象測器を設置していることが判明し,東京都港湾局による X バンドデータの提供を受けることができた.また,本研究計画に関連の深い研究プロジェクトである JAXA との共同研究が 2022 年度より開始した.その中でも新たな他機関による独自観測データを得た.ただし,このデータは共同研究プロジェクト外での使用が可能かは不明なので,この科研費課題で使用できるかどうかは今後の交渉次第である.引き続き,予定以上の研究成果が得られるよう進めていく予定である.
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