研究課題
基盤研究(C)
地球温暖化で代表される地球環境問題は、人類が21世紀中に解決すべき喫急の課題であり、環境負荷が大きい都市において特に顕著である。この問題を解決するには、環境負荷が大きい既存の都市を持続可能な都市へ移行させる必要がある。本研究は、都市の持続可能な移行論に依拠し、温室効果ガスの大幅な排出削減が求められる運輸部門を対象として、環境保全関連の技術革新と社会の共進化の過程と、特定の都市での持続可能な移行の過程を明らかにする。
本研究では、都市の持続可能な移行(UST)論に依拠し、UST研究の分析枠組の1つであるマルチレベルの視点(MLP)を用いて、令和5年度には、令和4年度の成果を踏まえて、現地調査を通じて、イノベーションの実態を明らかにすることを目的とし、以下のような研究計画を立てた。まず予備調査で、前年度に収集した統計資料を精査する一方で、現地調査の調査項目を決定する。つぎに現地調査で、対象地域の自治体で収集する統計を用いて、運輸部門のGHG排削減率の高い地域を抽出する一方で、調査項目にそって現地調査を実施する。最後に、現地調査の結果を踏まえて、イノベーションの実態を明らかにする。上述した研究計画にそって調査をすすめた結果、予備調査の際に、主にOECDの統計データから、運輸部門での技術革新を表す地球温暖化防止対策と関連する各種の特許数の多い地方自治体が、都市圏に位置することが示唆された。この予備調査の結果をもとに、令和5年8・9月にスウェーデンとイギリスで現地調査を実施するとともに、運輸関連イノベーションと関連する資料を収集した。最後に調査後の予察的な分析では、両国の都市部でEV関連技術の蓄積がみられる一方で、2010年代初頭にスウェーデンで世界初の社会的なイノベーションであるMaaSアプリが開発・実用化され、自家用車以外の移動手段の利用促進や地域的なGHG排出削減への寄与が示唆され、これらの研究結果の一部を国内外の学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
文献調査や現地調査を通じて、研究対象地域で必要な資料を収集できたことと、これらの資料を用いた調査後の分析で、イノベーションの実態をある程度把握でき、このことが特定の都市部で生じていたことを明らかにできたことが評価理由である。
研究計画書にしたがい、令和6年度に、選定した都市自治体を研究対象地域として、イノベーションによるレジームへの影響に関する研究を進める。これはマルチレベルの視点(MLP)のメソスケールでの分析にあたる。具体的には、まずこれまでに収集した資料を参照しつつ、現地調査の調査項目を再検討する。ついで、これらの調査項目にもとづく現地調査を通じて、イノベーションによるレジームへの影響を把握したい。
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