研究課題/領域番号 |
21K01035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 (2023) 京都産業大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
出田 和久 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (40128335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 開墾助成法 / 開墾助成地区 / 開墾地移住奨励金 / 耕地整理組合 / 耕地整理 / 耕地拡張 / 昭和前期 / 大正後期 / 耕地整理法 / 開墾地移住 / 食糧増産 |
研究開始時の研究の概要 |
日本近代における開拓の地理学的研究は、北海道における屯田兵による開発とその後の開拓・移民に関する研究が中心で、明治後期から昭和前期における北海道以外の耕地拡張事業については関心が向けられていない。 本研究ではこの時期の北海道以外での耕地拡張に関して、これまでほとんど研究がない当該期の開墾助成法や開墾地移住奨励制度および改正後の耕地整理法等による耕地拡張諸事業について、その実態および成果を明らかにし、その意義や課題を検討する。その際、事例農場を取り上げ、できるだけ一次資料に近い資料によって具体的に開墾地の実態を描出する。 また、これら諸事業と植民地での食糧生産政策との関連の有無等も検討したい。
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研究実績の概要 |
今年度はcovid-19感染症が5類感染症になったことに伴い、閲覧制限等により遅れていた各地の史・資料館や図書館等における史・資料の閲覧が相当に緩和されたことから、史・資料調査を中心に調査を実施した。 具体的には、資料が比較的多く残る地区を対象に、九州においては大分県の柏原荻耕地整理組合、鹿児島県の笠之原移住招致組合、本州では長野県の南安曇郡小倉村外六ヶ村開墾組合、北安曇郡常磐村中部耕地整理組合を対象に、開墾助成や開墾地移住奨励金にかかわる申請書や領収書等の関連資料の博捜、閲覧、写真撮影、関係地方史誌の収集等を行った。この中では、これまでに見い出せなかった開墾助成地区にかかわる助成金請求関連の資料が長野県の2事例で見いだされたことは大きな成果であった。 また、各地において開墾助成法の施行や開墾助成、開墾地移住等に関してどのように受け止められていたかをみるべく、新聞記事(特に地方紙)、県議会議事速記録や議決録などを閲覧したが、関連史・資料は少なかった。 なお、昨年度調査を行った福島県では、収集した若干の地図資料を除いては地元での開墾助成や耕地整理組合関係の資料の残存状況に鑑み、本調査は実施しなかった。 上記調査で得られた資料のうち必要部分の文字起こし、データの整理等を進めた。その結果、長野県の南安曇郡小倉村外六ヶ村開墾組合関係ではデータ整理が終わった100名ほどについてみると、移住者の出身地は地元の南安曇郡の村々が多いが、隣接する東筑摩郡8名、北阿曇郡4名のほか諏訪郡2名、小縣郡1名、長野県1名、富山県1名と地元以外が10数パーセントを占めており、県外者が若干みられた柏原荻耕地整理組合の場合よりも地元以外の出身者が多いことが分かった。今後、これら地元以外の移住者がどのような情報を得て移住してくることになったのかについても調査を進めることが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大分県公文書館や鹿児島県立図書館において、県の段階で開墾助成法の施行等に対応してどのような規則類が制定されたり、指示が出されたりしたかについて県の公報類を中心とする資料を若干収集するとともに、各地において開墾助成法の施行や開墾助成、開墾地移住等がどのように受け止められていたか、また、県議会でどのような議論がなされたかについて、新聞記事(特に地方紙)や県議会議事速記録や議決録などの閲覧を行ったが、関連資料は意外と少なかった。ただ、予算関係の資料が若干得られたので、今後県のレベルでの事業の予算上の位置づけについての検討を試みたい。 長野県では、北安曇郡常磐村中部耕地整理組合と南安曇郡小倉村外六ヶ村開墾組合を主たる対象地として資料調査を行うことができた。前者に関わっては耕地整理組合の開墾助成金交付申請書類や開墾助成金請求書等があることが分かり、写真撮影を行った。後者に関しては県立歴史館にはほとんど資料がなく、関連資料が安曇野市公文書館に所蔵されていることが分かり資料調査を行い、多数の資料の撮影を行い、関連する『三郷村誌』を購入するとともにし、収集資料の整理を進めている。 今年度は上記のような地域での調査とともに、これまで収集した資料の整理も進め、柏原荻耕地整理組合と南安曇郡小倉村外六ヶ村開墾組合に関連しては移住者に関連する資料が見いだせた。現在、関連資料のデータ整理を進めており、移住者の出身地に関する検討がある程度行えると期待される。 また、これまでの調査ではほとんど見ることができなかった開墾助成地区にかかわる助成金請求関連の資料が長野県の2事例で見いだされたことは大きな成果であった。 以上のように比較的資料の豊富な地域については順調に調査が進展し、初年度からの調査の遅れをほぼカバーできたことから、今年度の進捗状況としては「(2)おおむね順調に進展している。」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はcovid-19感染症が5類感染症になったことから閲覧制限が大幅に緩和され予定以上に資料調査を進めることができ、収集、撮影した資料の分量が非常に多くなったので、前年度後半から雇用した資料整理や文字起こしのためのアルバイトを引き続き雇用して資料の分析、検討を加速させる。また、前年度において資料収集および調査が完了していない地区についてはできる限り時間を確保して、年度前半を目途に可及的速やかに調査を実施し、年度後半は資料整理と分析、検討を進め、研究のまとめを行う。 なお、開墾助成事業に関しては100年以上が経過し、現地調査、とりわけ聞き取りを中心にした調査は対象者を見出すことも困難であるが、収集した資料から移住者の氏名や元の居住地が判明する地区があるので、これらの地区を中心にこれを手掛かりにできるだけ調査を進める。 来年度が最終年度となるので、上記調査のほか、まずこれまでに収集した耕地拡大に関わる事業について、開墾助成法や開墾地移住奨励制度および改正後の耕地整理法等による統計データを中心にまとめ、耕地拡大の状況について明らかにする。また、これと並行して耕地拡張と米の生産動向ならびに米の輸移入先や量の推移等をまとめ、それらを通じて朝鮮半島における食糧増産政策との関連についても検討し、日本近代史において見過ごされてきた国内における食糧生産と植民地政策との関連の有無や意義についても考察する。さらに合わせて、収集し整理した資料の検討から、耕地整理法および開墾助成法と移住家屋の建築補助や移住のための交通費補助等の一連の施策にも注目し、開墾助成の成果や課題と開墾地の実態を明らかにすることを通じて、耕地整理法および開墾助成法による耕地拡大事業が日本の近代史において有した意義を明らかにし、研究全体の成果をまとめる。
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