研究課題/領域番号 |
21K01041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 酪農 / 災害レジリエンス / 社会関係資本 / 停電 / 高温少雨 / 飼料価格高騰 / 北海道 / ニュージーランド / 栃木県那須地域 |
研究開始時の研究の概要 |
酪農地域・経営の災害レジリエンスにみられる格差の発生理由を、社会関係資本に着目して明らかにする。深刻な停電災害をを契機として消滅してしまう酪農地域・経営がある一方で、競争力と災害耐性の強化に向けて邁進する酪農地域・経営も存在する。このような差異が生じた要因を、予防力・予測力・対応力という3つの観点から検討する。また、酪農経営の相互間、あるいは酪農経営と地域社会の間に構築された信頼・規範・ネットワークが、災害レジリエンスの強化において果たす役割を明らかにする。具体的な調査対象地域は、①栃木県那須地域、②北海道と千葉県の対比、③ニュージーランドの3地域とする。
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研究実績の概要 |
研究2年目にあたる令和4年度も、コロナ禍による影響が色濃く残存した。 前年に実施できなかったニュージーランド調査は、秋季(8~9月)・春季(2~3月)ともに実施できなかった。秋季においては、水際措置が緩和されておらず、日本~ニュージーランド間の航空便も運休したままだった。春季には実施可能な状況になったものの、コロナ禍中に実施予定だった他の渡航計画との調整がつかず、実施を見送らざるを得なかった。そのため、ニュージーランド関連の文献・資料の収集は、国内機関やオンラインによって可能な範囲でしか実施できなかった。とは言え、オンラインで得られる情報には限りがあり、聞き取り調査も実施できなかったため、計画通りに研究を遂行できたとは言いがたい状況である。 北海道における調査は、夏季(8月)と春季(3月)に実施した。2018年の停電災害、2021年の異常高温に続いて、今年度は人為的災害ともいえる状況に見舞われた。すなわち、コロナ禍とウクライナ戦争、金融緩和の影響による先物市場への資金流入が、飼料価格を著しく高騰させ、酪農経営の継続を困難な状況に陥らせている。特に、多額の投資をして機械を導入し、大規模化を進めた経営において、負債が重くのしかかっている状況である。これら一連の災害級の出来事に対して、集団的・個別的対応がどのようになされたのか、その結果がどのような形で表れているのかについて、聞き取り調査を実施した。 栃木県那須地域については、飼料高騰の影響がより深刻な形で表れている。文献・資料の収集のほか、聞き取り調査を実施した。 以上のように本年度は、現地調査に制約がある中で、国内の酪農地域における調査を優先的に実施した。次年度以降に予定するニュージーランド調査と合わせて、酪農地域・経営における災害レジリエンスの検討に資するべき重要な情報を収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所期の令和4年度計画では、災害を経験した酪農経営に対する聞き取り調査を実施する計画だった。しかし、ニュージーランド現地調査は中止(令和5年度以降に先延ばし)となり、実施できなかった。国内調査(北海道・栃木県那須地域)は、年度後半には比較的順調に実施できるようになったものの、当初計画よりは若干遅れ気味である。北海道の酪農について調査する場合、草地管理等の繁忙期には調査が困難になりやすいほか、冬季の移動にも若干の困難が伴うなど、明確な調査適期が存在する。その調査適期を逃したことが大きかった。令和4年度に実施できなかった調査等については、令和5年度に先送りして実施することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、コロナ禍による制約が順次解消されるもの見込まれる。 夏季(9月)にニュージーランド調査を実施予定である。まずは、現地での文献・資料の収集を通じて、被災状況の概括的把握に努めたい。また、計画より2年遅れとはなるが、令和6年度以降の調査に向けて、キーパーソンとのコネクション構築を模索したい。状況が許せば秋季(11月)にもう一度ニュージーランド調査を実施したいが、これが困難だった場合には、令和7年度までの事業期間延長による調査実施を検討している。 日本国内については、具体的な聞き取り調査を着実に実施したい。いずれの地域においても、電力に絡む災害、夏の高温少雨化、そして飼料価格の高騰が、酪農経営の持続性を揺さぶる事態となっている。こうした自然的・人為的災害にどのような対策を講じているのか、ハード面のみならずソフト面の対応についても調査を進める予定である。もちろん、行政による対応策は講じられており、そのことが状況の改善に一定程度の役割を果たしていることは明らかである。しかし、被害の現れ方は地域や経営によってまちまちであり、その理由として集団的・個別的な対応に差異があるためと推定される。また、資金力によって対応可能な災害もあれば、酪農技術体系の再構築を含む相当の困難を伴うような対応を迫られる場合もある。災害によって異なる特徴に留意しながら、引き続き調査を実施する計画である。
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