研究課題/領域番号 |
21K01043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 食の世界の異質化 / ネットワーク / 自然物 / 技術 / 養殖 / インドネシア / 沖縄 / エビ / 異質化 / フードネットワーク / 食料生産システム / エビ養殖 / 食 / 非人間 |
研究開始時の研究の概要 |
食をめぐる様々な実践の出現を通じて,今日の食の世界はより一層多様な生産の空間から構成されるようになっている.このような食の世界における異質化の進展には,食料生産をめぐる人間と非人間(自然物,技術,政策等)との関係性が少なからず影響を及ぼしている.ここで注目したいのは,そのように人間,自然物,技術,政策等が相互に関係する状況において,食料生産に関わる人間の実践がいかに導き出され,具体的な生産空間の生成へと結びつくのか,という点である.本研究では,様々な食料生産の実践に関わるアクターのネットワークが安定化する過程に着目しながら,今日の食の領域における多様な生産空間の生成について明らかにしたい.
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研究実績の概要 |
2023年度は,(1)沖縄県におけるクルマエビ養殖業の展開と(2)生産現場におけるリスク管理に関するフィールドワークを重点的に実施した.具体的には,沖縄本島,久米島,与那国島,竹富島のクルマエビ養殖場,沖縄県車海老漁業協同組合,同種苗供給センター,沖縄県水産海洋技術センター,八重山農林水産振興センターにおいて関係者への対面のインタビューと資料の収集を行った. (1)については,沖縄県におけるクルマエビの生産量と養殖業者数の推移の統計資料の収集を行うと同時に,過去の養殖池の立地状況に関して業界歴の長い関係者にヒアリングを行った.その結果,以下の諸点が明らかとなった.①沖縄県のクルマエビの生産量は1995年から鹿児島県を抜いて全国1位となり,現在は全国の生産量の約3割を占める.②沖縄県におけるクルマエビ養殖は,もともと1970年代の本土復帰事業などを背景として,沖縄本島,久米島,宮古島で始まった.③その後,主に沖縄本島,久米島,石垣島において業者数が増加し,最盛期の1990~2000年代には20を超える業者が各地に立地した.④近年は,生産者の高齢化に伴う後継者不足が課題となり,休業・廃業する業者がみられる. (2)については,魚病,海水温上昇,鳥害の状況に関する対面インタビューを各養殖場で実施した.その中で明らかとなったのは以下の諸点である.①クルマエビ養殖は様々な疾病(WSD,フサリウム症,ツリガネムシ病など)によって影響を受けうるが,近年は原因が十分に明らかでない病気(「オレンジエビ/ピンクエビ」と呼ばれる)が一部地域で問題となっている.②気候変動の影響により海や池の水温が上昇し,歩留まりが低下するケースがみられる.①の「オレンジエビ」の発生も水温上昇と何らかの関係があると捉えられている.③カワウによる食害が急速に深刻化しており,養殖場や自治体の対策が求められている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本(沖縄県)でのインタビュー調査および観察を重ねることにより,国内のエビの生産システムの生成に関わる情報を収集することができたためである.具体的には,沖縄県内のクルマエビ養殖業者,沖縄県水産海洋技術センター(糸満市),沖縄県車海老漁業協同組合(那覇市),沖縄県車海老漁業協同組合種苗供給センター(久米島町),八重山農林水産振興センター(石垣市)において,①「1970年代以降の沖縄県におけるエビ養殖業の展開」,②「魚病(ホワイトスポット病)の流行とそれへの対策」,③「海洋深層水を用いたSPF種苗(ウイルスフリーの稚エビ)の生産技術の移転」,④「オレンジエビないしピンクエビ(病気)が養殖業に与える影響とそれへの対応」,⑤「気候変動に伴う海水温上昇への対応」,⑥「鳥害(カワウによる食害)の現状とそれへの対応」といった諸点に関する情報をインタビュー調査により収集することができた.このような産地形成の取り組みやリスク管理の経緯を継続的に調査することで,現在のエビ生産システムが生み出された仕組みを実証的に明らかにすることができる.
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今後の研究の推進方策 |
海外(とくにインドネシア)におけるフィールド調査へ本格的に着手する予定である.東ジャワ州シドアルジョ県の粗放型養殖とアチェ州バンダアチェ市およびアチェブサール県の集約型養殖に関する調査に取り組む.並行して,日本国内のエビ生産システムに関するフィールドワークを中心に研究を進めていくことを検討している.そのほかにも,インドネシアでのカウンターパートであるアグス・ヌグロホ講師(シアクアラ大学,バンダアチェ市)と沖縄県のエビ養殖に関する調査を実施する予定でいる.なお,本研究の枠組みとも関わる科学技術社会論やアクターネットワーク論に関連する文献のレビューは継続的に取り組む.
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