研究課題/領域番号 |
21K01044
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
香川 貴志 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70214252)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 小学校社会科 / 副読本 / 市町村合併 / 地域研究 / 石炭産業 / 小学校社会科教科書 / 小学校社会科副読本 / 地域比較 / 調べ学習 / 地誌学 / 地理教育 / 裾野拡大 / ボトムアップ |
研究開始時の研究の概要 |
地理学研究の基盤となる小学校社会科に着目し、とくに第3学年と第4学年の地域学習で頻用される副読本に焦点を定め、主に京都府内自治体における内容の地域的差異や特色、改善点について経年的に分析考察を施す。地理的に大きな特色を持つ比較対象自治体では、当該地域の自然的特徴と人文的特徴が如何に副読本へ反映され取扱が変わってきたのかを精査する。こうした考究活動を通じて、小学校社会科副読本が地誌学専門書の原型であることが裏付けられ、副読本の内容を改善する契機が得られるだろう。また、地理・地理学教育の裾野拡大やボトムアップにも多大な貢献が期待できる。
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研究実績の概要 |
当初、令和4年度は離島を含む遠隔地における新旧副読本の収集と複写、京都府内の各自治体の副読本収集と複写を予定していた。ただ、COVID-19の状況が一進一退する中で、各教育委員会が多忙を極めている実情に鑑みて予定を一部変更した。変更点は3点ある。(1)「持ち込まない、持ち帰らない」を徹底して離島訪問を次年度以降に延期した。(2)各自治体で旧版副読本の散逸が散見されるため、府内自治体のうち町村合併で前後の副読本の内容が如何に変化したのかを精査することにした。(3)教科書の記述内容の変化(生産重視から消費への一層の着目)と副読本の記述内容との連動に着目し、対象自治体の絞り込みや変更により、網羅的な方針を精査的な方針へと改めた。 上記の見直しは、コロナ禍の状況に鑑みて仕方なく行った。しかし、精査的な研究を行う方が学校教育現場への社会的還元性、他自治体での応用性は高められると判断した。上記の(1)~(3)についてより具体的に記す。(1)離島訪問を控えたことや山間過疎地域の試行的調査(奥出雲町)により令和4年度の予算執行が当初より少なくなった。COVID-19が5類に移行したことを受け、離島調査は令和5年度以降に順次実施する予定である。(2)府内自治体では北端の合併自治体である京丹後市、同市と姉妹関係にある南端の木津川市を対象にすることとした。後者は研究代表者の居住地であるため旅費の大幅な節減、教育委員会との人脈活用が期待できる。(3)教科書図書館(東京)での各社教科書の精査により、石炭産業に注目した。6月の予備的調査を経て、町村合併で高島町(高島、端島)や外海町(池島)を併合した長崎市に対象を定めた。現在は最新の副読本の入手、高度経済成長期に最も石炭産業に頁を割いたO社教科書の写しを入手し分析中である。エネルギー革命前の日本の小学校社会科教育の実情が把握できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で既に記したように、COVID-19の状況の一進一退、各教育委員会との調整の結果、当初予定の一部見直し、及び網羅的なものから精査的なものへ方針のアジャストを図ったため、スタートラインが一時的に後退し、立て直しで追い上げを図っている最中にある。今後の見通しが立ち、現地との調整も順調に進んでいるため、やや甘めの自己評価とはなるが「(2)おおむね順調に進展している」とした。 研究対象を一層絞り込めたこと、府内対象地域については土地勘がある京丹後市と木津川市地域をクローズアップすることにしたため、今後の研究推進は難しくないと考えている。とはいえ、これまでの調査で公共交通機関を使わなければ各地域の状況を熟知できない(=子どもや高齢者の視点に立てない)ことが判明したため、現地調査では自家用車やレンタカーを一切利用せず、徹底して公共交通機関を利用することにした。そのため、調査に要する時間的負担、それに伴う経済的負担は若干増加する恐れがある。このことについては、対象地域を絞り込んだことで時間と金銭的な負担の双方を軽減できるので、そこで節約した時間と経費を現地滞在の宿泊費、現地で利用する公共交通機関の交通費に充当することで対応するつもりである。 従来の計画では、短距離ながら対象地域が意外に広く時間的な負担が危惧された山城教育局管内の自治体、南丹教育局管内の自治体や丹後教育局管内の自治体の多くを対象から割愛することにより、時間的負担と経済的負担の両方を大幅に節減できる。こうしたことから、研究方針を一部見直したことによる効用は小さくないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず府内自治体については、精査対象となる京丹後市と木津川市において、それぞれを管轄する丹後教育局と山城教育局で副読本作成状況を調査済みである。いずれも合併前の旧町から引き継いだ副読本の内容を調整・継承しながら合併後の副読本が編集されている。しかし、その調整内容と継承内容の詳細はいまだ明らかにされていない。そこで、両市の教育委員会と連携しつつ新旧の副読本の収集や分析を更に進め、今後の副読本整備の便益に資するよう努める。 他方、個性的な自治体として副読本の比較対象にしている代表者の勤務先からの遠隔地では、新たに研究対象とした長崎市での資料収集とその分析を進める。長崎は研究代表者が学生の野外実習系科目での引率や住宅調査で幾度も往来を重ねてきた自治体なので、現地での協力を得やすい。離島については副読本の改訂状況・旧版保存状況、近年の整備状況、さらに交通機関の運行頻度等から一部の見直しや割愛を行う可能性がある。 また、当初の研究計画では予定していなかったものの、研究を進めている過程で、日本の地理学界では、小学校社会科副読本の研究が相応になされてきた一方で、その体系化や整理がかなり遅れていることが判明した。つまり、各々の研究が特定地域の事例考究になりがちなので、研究成果が「ところ変われば品変わる」的な散発状況を呈していることを否定できない。このことから、こんにちに至るまでの研究系譜を整理し、日本の小学校社会科で副読本が果たしてきた役割や意義をまとめておく必要を強く感じている。その文献収集は相応に進めているが、この作業を今後も不断に継続しつつ文献の精読に励み、学会での口頭発表や学会誌への論文投稿ができるよう基盤の充実に努める。
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