研究課題/領域番号 |
21K01061
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
|
研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
早野 慎吾 都留文科大学, 文学部, 教授 (90381053)
|
研究分担者 |
董 然 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (80879891)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 人形浄瑠璃 / 西川古柳 / モーションキャプチャ / 序破急 / 円の動き / 感情表現 / 音声研究 / 八王子車人形 / デジタルアーカイブ / AI 解析 / 人形浄瑠璃八王子車人形 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸文楽を起源とする人形劇は、昭和に入り衰退の一途をたどっている。詳細な記録保持が必要である。本研究では、八王子車人形五代目西川古柳(西川古柳座)の人形所作をモーションキャプチャで測定し、そのデータをもとに動作解析およびデジタルアーカイブの作成を行う。デジタルアーカイブでは、3Dアニメーションも作成し、360度から動作を分析できるデータを提示する。 文字言語と映像(動画・画像)で記録が一般的だが、本研究では空間軸・時間軸における動作を詳細に記録する。動作記録と合わせて義太夫と三味線の音声データを採取して、その音声解析および所作との同調(合わせ)についても解析する。
|
研究実績の概要 |
当該年度は、五代目西川古柳(国重要無形民俗文化財西川古柳座家元)から採取したモーションキャプチャデータの解析を行った。特に首(かしら)を中心とした所作における角速度の測定を行い、感情表現に重要な「円の動き(Arc Motion) 」「序破急(Tempo Changes) 」の実態を明らかにした。西川古柳の所作は、義太夫および三味線のリズムと同期しており、特に低速のときに顕著にあらわれていた。高速の動きは、感情の高ぶりなどの不安定さを表すことが多いため、あえて同期させないことで不安定な感覚を表している場面もある。演目において義太夫と人形遣いがタイミングの「合わせ」を行うポイント箇所がある。特に義太夫の語りにおける句末の声(特に上げ音調)に人形遣いが「合わせ」を行っていた。 義太夫の語りの特徴も分析している。文楽協会所属で西川古柳座と共演することの多い竹本越孝に単独で実演してもらい、比和谷恭子(元アナウンサー)の発音と比較することで、その特徴を分析した。その結果、感情表現では、歌謡の技術を多用していた。また感情を強調するときには、1音節の長さが、通常の会話の2~3倍(つまり2~3拍)になり、アクセント型を崩して発音する傾向もあった。語尾に生字(語末音を繰り返す発音)を頻繁に使用する傾向も観察できた。オペラ同様に、感情表現には歌謡の技術(テクニック)が効果的であることが明らかとなった。 これらの基礎的なデータをデジタルアーカイブとして公開することが可能である。また、これらの結果を表現できる人型ロボットを作成しており、現時点では首と胴体までが完成している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、人形の関節が伸び縮みすることが判明したことで、AIによるアルゴリズムが作成できなかった。つまり、動作ごとに骨格の異なる人型のモデルを作成しなくてはならない状況になり、進行が遅れた経緯がある。秒ごとに骨格の変わるシステムの構築には、現在の経費では不可能なため(※業者の見積もりによる)骨格が変動する人型ロボットの作成に切り替えたことで経費内での進行が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
西川古柳の所作を再現できるAI人型ロボットを作成しているが、EXPO2025で西川古柳と共演(ロボットと人間の共演)するデモンストレーションを実施する方向で進めている。 また、モーションキャプチャによって採取したデータは、各演目毎にアーカイブとして整理して公表する予定である。分析成果は、可能な限り、国内でなく国際ジャーナルに投稿していく方針である。
|