研究課題/領域番号 |
21K01072
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
|
研究機関 | 京都外国語短期大学 |
研究代表者 |
志村 真幸 京都外国語短期大学, キャリア英語科, 非常勤講師 (00625204)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 南方熊楠 / ネイチャー / ノーツ・アンド・クエリーズ / 大英博物館 / 専門分化 / 査読制度 / ネイチャー誌 / プロフェッション / 科学史 / 人文科学と自然科学 |
研究開始時の研究の概要 |
南方熊楠が『ネイチャー』誌に投稿したものの掲載されなかった英文論文の分析を通して、自然科学と人文科学の分離過程の時期と、どのジャンルが自然科学に残された/排除されたかを明らかにする。 現在の科学というものは、どの雑誌に掲載されるかで、その論文(および著者)が所属するジャンル・分野が決定されている。『ネイチャー』は世界最高峰の科学誌であり、そこに掲載されない分野・ジャンルは、「それは自然科学ではない」と宣言されているに等しい。 このような自然科学の側からの動きが、なぜ起こったのかを明らかにすることが、本研究の目的である。
|
研究実績の概要 |
本研究は、博物学者・民俗学者として文理にまたがった活躍をした南方熊楠を主たる研究対象とする。南方熊楠は、イギリスの科学誌である『ネイチャー』と、人文科学誌の『ノーツ・アンド・クエリーズ』に大量の投稿をおこなった。その投稿を分析することで、20世紀前半に自然科学と人文科学が分離・対立していく過程を明らかにすることをめざす。具体的には、熊楠の投稿の年代的な変化と、リジェクトされた論文に注目し、論文の変化/掲載される学術誌の変化/学問分野の細分化に迫る。 イギリスでの調査を予定していたが、コロナ禍により、まったく実施することができなかった。しかし、以前から協力関係にある『ノーツ・アンド・クエリーズ』編集部、大英博物館の担当者と連絡をとり、一部資料の提供を受けることができた。国内では、南方熊楠顕彰館に所蔵されている草稿資料の翻刻と翻訳をおこなった。 研究成果としては、「『N&Q』への草稿の翻刻と分析-「アジアのオルフェウス」「悪魔学における鳥の鉤爪」」(『熊楠研究』17号、2023年3月)にて、熊楠の執筆/リライトの過程を分析した。「南方熊楠自筆資料 大英博物館所蔵フランクスおよびリード宛て書簡」(『熊楠研究』17号、田村義也、松居竜五、プラダン・ゴウランガ・チャランとの共著、2023年3月)にて、熊楠の大英博物館での研究活動の実態を明らかにした。 「『ノーツ・アンド・クエリーズ』と南方熊楠-アマチュア学者たちの国際投書空間」(『近代出版研究』2号、2023年3月)では、イギリスの質疑応答誌を舞台にくりひろげられた世界各地のアマチュア/プロによる議論を、現在のネットやSNSと比較しつつ論じた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まったく渡英できなかったことにより、現地に残る資料(投稿したもののリジェクトされ、投稿者のもとにも返却されなかった原稿)の調査が進んでいない。イギリスでも日本でもコロナ禍に対する警戒態勢が緩みつつあるため、2023年度には渡英できるかと期待されるが、いまのところ不明である。 また、南方熊楠顕彰館も、2022年秋頃までは、田辺市外からの訪問者の受け入れに消極的であったため、こちらでも調査が遅れている。 状況によっては研究期間の延長を検討すべきかもしれない。
|
今後の研究の推進方策 |
渡英ができるようになるのを待つだけではなく、別のアプローチができないか、考慮していくこととする。具体的には、扱う雑誌を『ネイチャー』と『N&Q』のみに限らず、広げていくことが考えられる。オランダの『フラヘン・エン・メデデーリンゲン』、アメリカの『ポピュラー・サイエンス・マンスリー』などが候補となり、日本国内で発行された雑誌についても視野に入れていく。 大英博物館からは資料データの提供が可能だと伝えられており、すでに一部資料を受け取って分析にとりかかっている。より多くの資料提供を依頼することにしたい。
|