研究課題/領域番号 |
21K01079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西本 陽一 金沢大学, 人間科学系, 教授 (00362012)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 人類学 / 他者理解 / 語り / ラフ / 東南アジア / キリスト教 / 伝統宗教 / 日本社会 |
研究開始時の研究の概要 |
北タイ・ラフ族の間には「ラフ(人/民族)」という語を用い、自民族集団の不変の性質とされるものについて、否定的に述べるという語りのスタイルが存在する。ラフ住民による独特の語りのモチーフとスタイルについて本研究は、1.集団独特の語りの形式の形成には、その集団の歴史・社会的な経験が大きく関わる、2.キリスト教会の活動は総合的な開発政策であり、被改宗者に近代西洋的な価値観と規律をすりこみ、饒舌性、包括性や形式性という点で、語りの形式に影響する、3.生々しい原体験が、集団成員の精神の中に、構造と一貫性をもって基礎づけられないことが「困難な語り」という現象をもたらす、という3つの作業仮説をもって検討する。
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研究実績の概要 |
北タイ・ラフ族の間には「ラフ(人/民族)」という語を用い、自民族集団の不変の性質とされるものについて、否定的に語るという語りのスタイルが存在する。ラフ住民による独特の語りのモチーフとスタイルについて本研究は、1.集団独特の語りの形式には、その集団の歴史・社会的な経験が大きく関わる、2.キリスト教会の活動は総合的な開発政策であり、被改宗者に近代西洋的な価値観と規律をすり込み、饒舌性、包括性や形式性という点で、語りの形式に影響する、3.生々しい原体験が、集団成員の精神の中に、構造と一貫性をもって基礎づけられないことが「困難な語り」という現象をもたらす、という3つの作業仮説をもって検討する。 本研究は、東南アジア大陸部に暮らす山地少数民族ラフを対象として、彼(女)らの自民族についての種々の語りを記録し、歴史・社会コンテクストの中に置き、独自のアプローチを用いて内側からの理解を試みる。少数民族ラフによる自集団についての語りの研究を通して、(1)普段その人たち自身の「声」を聞くことの少ない終焉者集団の人々の「経験」(認識、感情、希望などの総体)を「住民の視点」にできるだけ近づいた形で理解すること、(2)語りを材料に他人を理解するという他者理解の問題について理論的な貢献をおこなうことを目的とする。特に、(a)キリスト教化とは「文明化」である、(b)キリスト教徒ラフと伝統派ラフの語りの状況の違いは宗教経験の違いから形成された、(c)原体験を経験にうまく基礎づけられないことが沈黙や語りがたさという現象をもたらす、という作業仮説を、フィールドワークと理論研究によって検証してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【調査研究】2022年度もコロナ禍が続いたため、海外現地調査は実施しなかった。ラフ族の語りに関して、これまでに収集しているデータの見直しと新たな理論文献研究をおこない、以下の通り、研究に関する口頭発表と論文発表をおこなった。 【成果発表:口頭発表】1.ラフ住民による「ビルマ(族)」についての語りについて(2022年4月、英語)、2.タイのラフにおけるリテラシー状況について(同7月、日本語)、3.ラフ神話を事例とした歴史性と語りに関する考察(同10月、英語)、4.ラフのキリスト教徒と伝統派集団における自身の過去の歴史についての記憶の違いについて、国内外の学会や研究会において研究発表をおこなった。 【成果発表:論文発表】本事業の研究テーマの1つは、国家及び宗教コンテクストの違いによる語りのスタイルの違いであるが、2023年3月発表の英文論文は、タイと中国のキリスト教徒ラフの置かれた政治社会状況について記述し、上述の研究テーマのコンテクストについて考察している。また昨年度に続き本科研事業の年次報告書(A4版、101ページ)を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
【調査研究】コロナウイルスの影響も収まりつつあるため、海外現地調査を実施し、ラフの語りに関する新たなデータを収集するとともに、既存データの見直しを継続する。 【成果発表:口頭発表】タイのラフ族を事例としたリテラシー研究論文を、6月5日と25日にそれぞれ、山形大学今村准教授主催の正書法研究会およびAASinAsia(Association for Asian Studies in Asia)研究大会にて英語で発表する。 【成果発表:論文発表】昨年度10月に米国デューク大学における国際シンポジウムで発表された論文の出版の話が進んでいる。私の発表論文も論文集掲載論文に選抜されたため、現在推敲中である。また昨年7月に日本タイ学会年次研究大会にて発表した、北タイ・ラフ族のリテラシー状況に関する研究を論文化して『年報タイ研究』誌に発表する計画である(日本語)。
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