研究課題/領域番号 |
21K01083
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
才津 祐美子 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40412613)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 潜伏キリシタン関連遺産 / 文化遺産 / 世界遺産 / 構成資産 / 生きている遺産(リビングヘリテージ) / 文化資源 |
研究開始時の研究の概要 |
文化遺産保護制度の拡充により「生きている遺産(リビングヘリテージ)」の文化遺産化が進んでいる。これは文化の多様性を示す/遺すことに貢献している一方で、実際の保護にはさまざまな困難が伴うことが指摘されている。 2018年に世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、12の構成資産のうち8つが「集落」という特異な文化遺産であり、まさに「生きている遺産」そのものである。本研究の目的は、この文化遺産を事例として、世界遺産登録後の構成資産保有地域における実践について明らかにすることである。それは「生きている遺産」が抱える世界共通の課題についてまた一つ重要な知見を提示するものになる。
|
研究実績の概要 |
2022年度の研究計画では、①長崎市外海地区(2021年度に一部実施)に加えて五島市(奈留島および久賀島)において聞き取り調査を行う。②先行研究に関する文献資料調査を行う。の2点を中心に研究を遂行することになっていた。 ①に関しては、昨年度に引き続き、現地調査を予定していた時期とCOVID-19の感染拡大が重なってしまったが、時期をずらして可能な範囲で実施した。その結果、いずれの地域でも世界遺産登録前後に観光施設等の整備が進みはしたものの、上手く活用しきれていないことが確認できた。その一番の要因は、過疎化や少子高齢化による担い手不足である。地域によっては従来のあり方を維持できないレベルまでそれが深刻化しているところもある。したがって、各構成資産保有地域は現在、構成資産の継承や活用よりも、まずは地域自体の再編(新たな地域づくり)という課題に直面しているといえる。そのため、各地域では行政主導による再編に向けた取り組みが現在進行形で行われていることが今回の調査から明らかになった。そして各構成資産の継承と活用をめぐる実践も、こうした地域再編の主体となる地域運営組織の活動の一環として行われていくことが目指されている(特に外海地区出津集落)。 また、構成資産の活用が上手くいっていないもう一つの要因としては、本世界遺産がもともと「教会群」の世界遺産登録を目指していたことの影響があげられる。たとえ世界遺産上は「集落」が構成資産になっていたとしても、現在も主たる構成資産=文化資源として認識されているのは「教会群」であるため、実際に本世界遺産の継承や活用に携わるのは集落内の一部の人たちだけになってしまっているのである。このことを先に述べた地域運営組織の活動によって克服していけるのかどうか、引き続き調査を続けていきたい。 なお、②に関しては、今年度は雑誌論文を中心に調査・収集を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べた通り、2022年度の研究計画では、①長崎市外海地区(主に出津集落)に加えて五島市(奈留島および久賀島)において聞き取り調査を行う。②先行研究に関する文献資料調査を行う。の2つを平行して実施する予定だった。 しかし、①の聞き取り調査に関しては、COVID-19感染拡大のために2021年度から当初の計画通りには実施できておらず、2022年度もまた限定的なものとなってしまった。したがって、研究の進捗状況としては「やや遅れている」といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き①長崎市外海地区(主に出津集落)と五島市(奈留島および久賀島)において聞き取り調査を行う。②各構成資産保有地域の過疎化・少子高齢化の現状、各構成資産の維持管理体制、観光客入り込み数の変化等に関する聞き取り調査を行政(長崎県、長崎市、五島市)の担当部署に行うとともに、文献資料を収集する。③図書館やインターネット等で先行研究に関する文献資料調査を行う。の3つを平行して実施する予定である。とりわけCOVID-19感染拡大のためにやや遅れている①の聞き取り調査については、2023年度は積極的に実施したいと考えている。 また、以上の調査で得られたデータおよび知見をもとに、2023年度に関連学会で発表するほか、報告書や論文等を執筆する。
|