研究課題/領域番号 |
21K01086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大澤 由実 青山学院大学, 地球社会共生学部, 助教 (40822630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | MSG / グルタミン酸ナトリウム / タイ / イタリア / 食文化 / 消費 / 味 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀にグローバルに消費が拡大したグルタミン酸ナトリウム(MSG)の 受容と拒絶というローカルな態度とその地域差に着目し、特定の食、特に工業化された食への価値付けや行動がいかに存在し変容するのかを考察することを目的とする。MSGは、世界で最も消費されている添加物の1つだが、その消費形態には明確な地域差が存在する。本研究では、MSGを調味料として受容したタイと、拒絶したイタリアを比較することで、MSG消費の地域差について、食文化、個人の味嗜好や食への認識、食の社会システム・制度、企業戦略などの側面から包括的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、20世紀にグローバルに消費が拡大したグルタミン酸ナトリウム(MSG)について、受容や拒絶といった異なるローカルな態度とがなぜ、どのように存在するのかを検討することを目的としている。特に、アジアのタイ、ヨーロッパのイタリアという対照的な事例に着目し、食習慣や嗜好などの文化的要因や、食品添加物の規制などの社会的要因を含めて包括的な比較と考察を進めている。 2023年度は、4-5月、8月、12-1月に合計3回、タイにおける現地調査を実施した。都市バンコクと山岳地帯、農村地域のタイ北部という異なる地域で調査を実施したことにより、タイ国内におけるMSGへの態度差の違いを検討することができた。 MSG受容の過程について、タイ北部山間地で実施した年配者への聞き取り調査では、MSGと旧日本軍の関連性という語りが収集された。具体的にはMSGは日本軍が持ってきた、MSGは日本軍の骨からできているといった過去に存在していた情報や噂の確認である。加えて、8月に訪問したタイ北部メーホンソーン県のクンユアム タイ・日本友好記念ホール博物館では、日本軍の遺品としてMSGが展示されていることも確認された。これまでの研究では、タイ国内におけるMSGの広がりについては、バンコクや都市から地方への流通チャンネルに乗ったものが主であったことがわかっているが、今年度の調査で得た情報は、MSG生産企業の主な流通チャンネル以外にもMSGの広がりと受容があったこと示す事例であり、今後の検討に値するデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、タイの2地域において合計3回の現地調査を実施し、歴史的なMSGの受容に関する新たな視点や、現代のMSGの拒絶行動に関する十分なデータを得ることができた。イタリアのデータについては、航空券運賃の高騰や円安により今年度の現地調査を見送ったが、昨年度までに収集した資料や文献およびオンラインでのデータを基に調査分析を進めることができたため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
タイにおけるデータは概ね揃っているが、イタリアに関するデータが不十分であるため、次年度はヨーロッパ(イタリアとEU)に関するデータの収集を進めていく。可能であれば現地調査を行いたいが、予算的な面から実施可否の判断を行う予定である。 2024年度は最終年度であるため、これまでのデータや発表内容をもとに、論文執筆など研究成果を取りまとめていく。また、食に関する英語のハンドブックのプロジェクトが立ち上がっており、本研究で得た事例を含めた章の執筆を行う予定である。
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