研究課題/領域番号 |
21K01091
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
|
研究機関 | 甲子園大学 |
研究代表者 |
藤原 久仁子 (森田久仁子) 甲子園大学, 栄養学部, 准教授 (00464199)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 聖人崇敬 / モノ / 地中海マルタ / 聖遺物 / 加工 / 廃棄 / カトリシズム / 聖なるモノ / マテリアリティ / 民衆カトリシズム / 宗教人類学 / 生産、流通、消費 / 感性 |
研究開始時の研究の概要 |
カトリック社会では現在、プラスチックやLEDランプを用いた聖なるモノが大量に流通している。本研究の目的は、こうしたモノに対する新たな信仰や廃棄の仕方を検討することを通じて、民衆カトリシズムの現代的特徴を明らかにすることである。具体的には、地中海マルタにおいて調査を行い、教会の教えと地域・教区レベルでの取り組み、生産業者や廃棄業者の思惑と戦略、モノに対する信徒の聖性認識や廃棄時の葛藤との相互作用を検討する。環境への罪を犯さないために聖なるモノを破壊する際に信仰がリセットされる仕組みとそれを支える社会関係を明らかにし、民衆カトリシズム及びマテリアリティの人類学に新たな視角を提供することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度は、マルタにおいて主にふたつのテーマを念頭に調査を行った(①聖人・聖遺物信仰とモノの生産・流通・消費・廃棄の流れに関する調査)、②死者をめぐる民俗信仰と実践に関する調査)。また、クロアチアにおいて、聖ヨセフや聖アントニオ等の信仰実践に関する調査を短期間ではあるが実施し、聖人信仰と聖女信仰を比較する視点を得ることができた。また、国際学会(於・メジュゴリエ)や国際セミナー(於・一橋大学およびマルタ大学)で発表を行い、聖なる場所の単なるモノが聖化していく過程について報告を行った。さらに、『世界の冠婚葬祭事典』(丸善出版)では「南欧」の項目の執筆を担当し、出産・結婚・離婚・葬送について、現代社会に息づく伝統と樹木葬等の新たな展開について報告した。また、聖なるモノをめぐる信仰実践に関する英語論文を2本発表した。加えて、今年度はマルタ大学の島嶼研究所や地中海研究所に所属する現地研究者や調査協力者と交流を深めることができ、今後の国際共同研究や本の出版計画について進展させることができた。 このように、今年度は現地調査、文献研究、研究発表、論文執筆、国際共同研究の枠組みの構築を行ってきたが、調査に関して、モノの加工技術に関して見えてきた部分がある一方で、廃棄の実態を明らかにするまでには至らなかった(制度化された語り口と実態が異なると感じているが、実証するに至っていない)。この点についてさらなる調査を行うことが次年度の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、聖なるものの生産から消費、廃棄処分までの流れをマルタにおける現地調査によって明らかにし、①環境に対する罪意識や、②聖像や聖なるモノ・グッズの生産者だけでなく加工業者や廃棄業者の存在を踏まえた分析を行うことにより、従来の聖人・聖遺物研究に対して新たな視点を提供すること、及び、喜捨、贈与、廃棄をつなぐ「処分の人類学」という新たな研究領域を開拓することを目的としている。 この目的に照らして考えたとき、廃棄に関する調査が未だ不十分であり、マルサスカーラの処分場や聖なるモノの修復アーティストに対する調査等を行う必要があると考えている。また、聖なるモノを構成する素材のトレンドを踏まえた問題設定の必要性も感じているため、最終年度はこれらを念頭にマルタで追加調査を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
前期授業期間:4月から7月は文献レビューと論点の整理を行う。夏期:8月にマルタで聖なるモノの廃棄をめぐる調査を実施する。後期授業期間:9月から1月は調査データの分析と論文執筆を行い、学会誌に投稿する(日本語)。春期:地中海カトリシズムに関する国際学会でマルタを事例に発表する(英語)とともに、4年間の研究の総括を行う。
|