研究課題/領域番号 |
21K01102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
阿部 昌樹 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 教授 (10244625)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 紛争 / 人口減少 / 地域社会 / 公共施設 / 大規模小売店舗 / 責任 / 自治体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においてはまず、社会諸科学の各分野における紛争研究の成果を踏まえ、公共施設の廃止や大規模小売店舗の撤退に起因する紛争の実態を、具体的な紛争事例を対象として、その経緯を関係者への聞き取り調査等に基づいて詳細に分析する事例研究と、仮想的な事例についての人々の認識や評価とその規定要因とを統計的に分析するための調査票調査とを併用して解明する。 そのうえで、得られた知見に基づいて、それらの紛争に適合的な、紛争防止手法や紛争対応手法はどのようなものであるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、公共施設の廃止や大規模小売店舗の撤退が、当該公共施設や大規模小売店舗の周辺に居住する人々と、当該公共施設の設置者である自治体や大規模小売店舗の運営主体である企業、そしてさらには、大規模小売店舗の立地に関して規制権限を有する自治体との間に、どのような紛争をどのような頻度で引き起こし、発生した紛争はどのように終息していくのかを、法社会学の領域における紛争経験の蓄積を踏まえ、具体的事例の詳細な検討と調査票調査を通して解明しようとするものである。 今年度は主として、令和4度に実施したインターネット調査の結果の分析に取り組んだ。調査票に組み込んだシナリオ実験が、調査票を設計した際に予測していた結果とはやや異なる結果となったため、なぜそうした結果が生じたのかを、調査票に組み込んだシナリオ実験以外の様々な質問への回答の分布と照合しつつ、また、先行研究の含意を改めて吟味しつつ、検討した。 それとともに、令和4年度に実施したインターネット調査では、質問項目を絞り込む必要から、法や法制度についての人々の意識を解明するための質問の多くを、その重要性に気付きながらも、調査票に組み込むことができなかった。そこで、法や法制度についての人々の意識を解明することを主眼とする補充的なインターネット調査を実施した。この補充的調査からも、いくつかの興味深い知見が得られている。 さらに、本研究の一環として実施したインターネット調査とは別の調査票調査の結果の二次分析を行い、地域社会において発生する近隣トラブルへの人々の対応について興味深い知見を得ることができた。この知見は、本研究の課題と密接に関連しており、本研究の一環として実施したインターネット調査の結果の解釈に役立つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画どおり、一般の人々を対象とした調査票調査を、インターネット調査の形式で実施することができた。また、公共施設の廃止や大規模小売店舗の撤退をめぐる紛争の具体的事例を検討するなかで、そうした紛争の当事者となることもあれば、地域社会の変化に対応し、自治体や事業者に代わって、地域の人々が必要とするサービスの供給主体となることもある住民組織の重要性に気づき、当初の研究計画からはやや横道にそれることにはなるが、そうした住民組織についての考察を深めることもできた。その結果、地域社会における住民組織の動態や、それと法との関わりについて、研究計画を立てた際には想定していなかったような研究成果をあげることができた。さらに、地域社会を基盤とするトラブルの特性についても、知見を深めることができた。 その一方で、インターネット調査の結果が、調査票を設計した際に予測していたものとはやや異なるものであったため、なぜそうした結果が生じたのかについて、インターネット調査に組み込んだシナリオ実験以外の様々な質問への回答の分布と照合しつつ、また、先行研究の含意を改めて吟味しつつ、抜本的に再検討せざるを得ず、その作業にかなりの時間をとられることになった。 また、当初はインターネット調査は1回のみ実施することを予定していたが、回答者の負担を軽減する必要から、令和4年度と令和5年度の2回に分けて実施したため、2回のインターネット調査の結果について相互に整合的な解釈を行うことにも、かなりの時間をとられることになった。 その結果、本研究の最終年度としていた令和5年度中にインターネット調査の分析成果を研究論文の形式で公表することができず、補助事業期間の延長を申請せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きインターネット調査の結果の定量的分析に重点的に取り組むとともに、その結果と、本研究に着手した当初から継続的に収集してきた過疎地域におけるスーパーマーケットの閉店に関する地方新聞の記事の定性的分析との接合可能性について、もう少し時間をかけて検討するために、補助事業期間の延長を申請し、承認された。 定量的分析はほぼ完了しており、その成果は、令和6年度中に研究論文の形式で公表する予定である。また、それと地方新聞の記事の定性的分析とを接合させることによって得られた追加的な知見に関しても、令和6年度中に論文の形式でまとめ、遅くとも翌令和7年度の初めには公表することを目指したい。 あわせて、関連する最新の研究成果や現在進行中の公共施設の廃止や大規模小売店舗の撤退をめぐる紛争事例の収集にも努めたい。
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