研究課題/領域番号 |
21K01109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
横濱 竜也 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90552266)
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研究分担者 |
谷口 功一 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (00404947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 移民正義論 / 多文化共生 / 社会的排除・社会的包摂 / 宗教調和 / 政教分離 / 国家の中立性 / 脱世俗化 / ナショナリズム / 入国管理 / 社会統合 / 宗教法制 / 社会的包摂 / ネーション / 公私区分 / 宗教規制 / 世俗化 / ネーション論 / 移民包摂・社会統合 |
研究開始時の研究の概要 |
移民の社会統合において、移民と受入社会住民、移民相互の宗教的多様性が最大の困難のひとつとなっていることについては、すでにきわめて多くの指摘がある。立憲主義やリベラリズムでは、政治と宗教の棲み分けと信教の自由の保障が社会統合の鍵だとしばしば説かれるが、欧州におけるイスラム系移民への反応などに見られるように、それが成功しているか否かは議論の余地が多くある。他方で、東南アジア諸国などにおいては、宗教調和を目的として一定の自由の制限を課す制度が試みられてきている。本研究は、このような状況下で、移民の社会統合のためにいかなる宗教制度が望ましいかを明らかにする規範理論の構築を図ろうとするものである。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、令和4年度までの研究状況をふまえて、次の研究成果をあげた。 (1)研究代表者は、令和5年11月12日に開催された第86回宗教法学会にて、「シンガポールの宗教調和維持レジームと社会統合」と題した報告を行った。シンガポールにおける宗教調和維持法・国内治安法などによる宗教的自由の制約は、欧米等におけるリベラル立憲主義とは相容れない側面があるが、同国の多人種主義と社会統合において欠かせないものという評価もある。本報告では、移民が宗教を要因として社会的に排除されたり「包領化enclave」されたりすることを防ぐ試みとして一定の意義を認めるべきとしつつも、いわゆる「共同体論」的社会風土をもたない国では友好な処方箋となりにくいことを指摘した。本報告をベースとした論文を、令和6年9月刊行予定の『宗教法』にて掲載予定である。 (2)研究代表者は、令和4年11月13日に日本法哲学会学術大会にて行った招待報告をベースとした論文「理論的不合意を真面目に考える――規範的法実証主義の再検討」を『法哲学年報』2022に投稿した。 (3)研究分担者は、2000年代前半以降の論考をまとめた『立法者・性・文明』(白水社)を公刊した。本書は、ヨーロッパにおいて宗教をめぐって主流社会と移民・難民とのあいだに生じている衝突に対し、立憲主義を擁護すべき理由を示す論文や、日本の郊外において外国人が隔離や社会的排除の状況にあることを出発点にして、多文化主義に対する疑問を呈する論文を含むものであり、本研究の基本動機を確かめるうえでも重要な業績である。 他方、シンガポール等における実地調査は、研究代表者・研究分担者の本務校での学内行政負担などから、一部を除き行うことがかなわなかった。そのため本研究を令和6年度まで1年間延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年度に予定していたシンガポール・韓国における宗教政策実施状況実地視察は、上記のように研究代表者・分担者の学内行政負担の激増、また令和6年度にIVR(法哲学社会哲学国際学会連合)世界大会が韓国で開催され、研究代表者が大会での英語報告とあわせて実地調査を行う機会が得られることにより、令和6年度に延期となった。 また、研究成果のアウトリーチについて、移民正義論を宗教を要因とした社会的排除への対応を含める形で再構築する研究代表者の理論的試みについては、いまだ公刊されていない。その理由は、移民正義論とそれが関わる諸問題への応答を広範に論じる単行本を刊行する計画が立ち上がり、当該テーマについてもそのなかで扱うこととなったためである。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、以下の課題に取り組み本研究を完成させることとする。 (1)シンガポール宗教調和維持レジーム実地調査:シンガポール国立大学におけるシンガポール宗教政策研究者との面談や人種・宗教間信頼サークル視察などを、8月~9月に実施する。 (2)韓国宗教政策実地調査:韓国は著しい人口減少に対し外国人受入れを推進しようとしているが、宗教を一背景とした外国人へのヘイト表現などの問題が起こっている地域もある。地域自治体の対応を含めた実施視察を、国際学会が開催される7月に実施する。 (3)本研究の総括とアウトリーチ:本研究の成果を含んだ単行本を今年度中に刊行する予定である。また連動して、国際学会での英語報告、国内学会での報告を予定している。さらに、近年中に所属学会において、宗教制度と移民の社会統合の望ましいありようを含め、移民正義論をテーマとしてシンポジウムを開催することも目指したい。
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