研究課題
基盤研究(C)
本研究は、法システム自体が原理的に内包する排除性と、心理的障壁に代表される当事者が持つ法システムへのアクセス阻害要因との関連に着目し、その悪循環を克服しうる方策を探究するものである。特に当事者に関わる第三者の働きかけがいかにしてアクセス阻害要因を克服しうるのかに焦点を当て、司法アクセス促進要因を追究する。理論的検討に加え、国内外でのフィールドワークを通した実証的分析を踏まえ、脆弱性を持つ人々がいかにして司法アクセスを実質的に確保できるのかを解明する。
法システムの存在と当事者による法システムの活用との間には大きなギャップがある場合がある。司法アクセスの拡充のためには、既に様々な施策が展開されているものの、いまだ残されている課題がある。その一つが、本研究で焦点を当てる脆弱性を持つ人々の法認識と法活用との間にあるギャップである。とりわけ何かしらの脆弱性を抱えている場合には、脆弱性を抱えていない場合と比較して法システムへのアクセスにより多くの障壁が存在していると思われる。そもそも、法的トラブルに直面していること自体に気が付かない場合もあるし、気付いていても法的救済や「支援」を拒絶する場合もあり得る。このような研究関心のもと、本研究では法システム活用に際して重要となってくるであろう心理的側面に焦点を当て、システムが原理的に内包する排除性の克服がいかにして可能かについて、実証的・理論的に解明することを目指すものである。2023年度は、2022年度に引き続き、法システムが内包する排除性のジレンマの存在とその緩和に焦点をあて研究を実施した。具体的には、法システムへのアクセス障碍の克服にある程度成功していると思われる事例に赴き、聴き取り調査を実施した。その結果、法的トラブルへの気付き自体はあっても法システムへのアクセスを避けている場合(弱い法拒絶)には、法関連機関や行政機関、法専門職らに対する心理的障壁がある点が示唆された。加えて、本年度に実施した、法的ニーズの認識自体に困難が生じる場合の聴き取り調査からは、司法ソーシャルワーク等の先駆的取り組みが展開されている一方で、その継続性に対する課題も析出された。次年度は、この間に蓄積してきた研究視座の整理をするとともに、本研究課題の研究成果のまとめと成果公表に当てる予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定していた文献調査及び実証的調査が遂行できたため。
今後は本研究の計画に沿って文献調査及び実証的調査を遂行していく。コロナ禍により実施が困難であった調査先にも調査に赴く予定である。
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自由と正義(日本弁護士連合会編)
巻: 75(1) ページ: 33-40
Journal of Offender Rehabilitation
巻: 63(3) ページ: 171-187