研究課題/領域番号 |
21K01125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川端 康之 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (70224839)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 租税条約 / 米仏租税条約 / 独立企業原則 / 追掛け課税 / ルドルフ案 / プロイセン / 大英帝国 / 北ドイツ連邦 / 超過利益 / 所得分割 / 最低税率 / 資産又は営業 / 営業場 / 本店所在地主義 / 源泉 / 国家間の衡平 / 税源配賦 / 税源侵食 / ユーザ情報 |
研究開始時の研究の概要 |
G20/OECD加盟国ほか100カ国を超える多数の国々で進行する税源侵食・利益移転(base erosion and profit shifting)に対抗するための国内租税法令及び租税条約の改善・改正動向(とくに、積み残した課題)を、我が国が自国利益に適したかたちで行うにはいかなるアプローチを採るべきかを、法政策学的視点から分析研究する。BEPSは、実際上は、欧州と米国の対立構造の中で生じた極端な租税回避に対する両法域の鍔迫り合いの統制であるので、欧州のDST(ディジタル・サービス税)、State Aids(国家補助)、欧州DSTに対する米国の通商法301条適用、GILTIなどが論点である。
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研究実績の概要 |
本研究は、欧州地域、米州地域、アジア地域という3つの地域における国際課税のルールの発展と相互影響について法政策学的視点から分析しようとするものである。 2022年度は、新型コロナ感染症の影響で海外渡航を見合わせたため、外国研究所等の訪問調査や国際学会での同僚研究者との情報交換などに制限を受けたが、外国の国立図書館、国際機関や日本の国会図書館などで急速に進みつつある、資料のデジタル化の恩恵を受け、過去200年あまりの英国、北ドイツ連邦(プロイセン、ザクセン)、フランス、米国、国際連盟(国際連合欧州本部寄託)、日本大蔵省・外務省などの資料収集が進捗した。 それらを時系列に従って整理分析すると、従来我が国でいわれてきた、国際租税法の土台にかかわる基本的概念の生成過程が、これらの史料(資料)の上ではかなり違ったかたちで生成されてきたことが判明した。 それは、日本についても同じような状況である。帝国議会・国会の議事録データベースや官報データベースを丹念に検索調査すると、従来我が国では言及されることのなかった、明治初期から第2次世界大戦前の我が国における外国人・外国企業課税の展開を跡づけることが可能であると思われるような史料が多数存在することがわかった。それらを整理し、2023年度早々には都内租税実務家研究会で研究報告を行う。 また、これらの分析結果は細切れに論文にするよりは全体を一つの論文あるいは研究書として公表したほうが読者により正確な研究成果を伝えることができると考える。そのため、2022年度も前年度に引き続いて、研究活動の具体的内容は、原稿執筆ではなく、一次資料をできるだけ渉猟し史料に支えられた分析を行うことであった。それによって、欧米の論文でも一次資料とは大きく矛盾する誤認や調査不足のものが多数存在することがわかり、やはり一次資料の把握が極めて重要であることを痛感した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも説明したように、2020年初頭から始まった新型コロナ感染症の影響が次第に大きくなり、感染予防の観点から2022年度も外国出張はできなかった。そのため、外国研究機関で直接資料を検索収集したり、国際学会で同僚研究者と知見の交換を行うことも著しく停滞した。 しかし、上述のように、古い史料のデジタル化が各国で急速に進んでいるため、それらを検索することで、古い史料であれば本務校の研究室からでも収集閲覧することが、想像以上に可能になっていることが判明した。そのため、18世紀末ごろからの欧米の所得税制の生成過程の文脈で外国人・外国企業がどのように位置づけられ、現在の制度的土台が生成されてきたかを時系列で整理することが可能になった。この点は、むしろ、国内外に出張して資料集を行うことができないために生じた時間を活用することと相まって、想定外の史料収集整理が実現したといえる。そのため、全体の評価としては表記のとおりと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に収集した史料の整理分析を進め、年度当初に実務家研究会で研究発表を行い、実務家の知見をさらに重ねて正確な分析を期する予定である。 また、欧米では出入国の制限がほぼ緩和され、またパンデミックも収束しつつあるようであるので、現地の感染症に関する最新情報を収集しつつ、できれば、2023年6月の欧州学会(ルクセンブルク)と10月の国際学会(メキシコ)には出席し、近時の動向についての情報収集と意見交換を行うようにしたい。
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